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レポート
2003.07.05
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木下紗也珂/KINOSHITA SAYAKA インタビュー

PROFILE:1974年6月6日埼玉県生まれ。血液型:O型。立教女学院短大英語科に在学中、秋田敬明氏らと出会い、同氏と村上隆氏によるマンションの一室を改装したギャラリー「P-House」の立ち上げを手伝う。その後、95年に恵比寿にオープンしたカフェ「GUEST」とその2階に移転したギャラリー「P-House」の立ち上げにも参加。受付から、カフェの仕切り、プレスなど全般を行なう。
97年よりギャラリーの企画を担当。五木田智央や斎藤公平、松本力などの共同展「ニョロ展〜・」をはじめ、「野村浩二展」、「N55展」他を手がける。2000年夏、5年の契約満了で「P-House」と「Cafe guest」はクローズするが、翌01年、横浜トリエンナーレの企画プロデュースや赤レンガ倉庫展示会会場内に「アカレンガカフェ」を出店。
一方、2001年、人とコンパニオンアニマルが快適に共存できる環境・システムづくりの実現に向けて、有限会社「GAS(GOOD ANIMAL SUPPORT)」を設立。代表に就任。また、「GASS(GOOD ANIMAL SUPPORT SOCIETY)」というプロジェクトを結成。03年6月、NPO法人として認定される。また、7月26、27日に開催を予定している「第2回WAN WAN PARK」のイベントを主催する、お台場潮風公園ふれあい実行委員会代表も勤める。動物取扱主任者(東京都)、愛玩動物飼養管理士(2級)。

2頭飼っているうちの「1人」。
モモカちゃん。

「P-House」との出会い

もともと、アートに特に興味があったわけでもなく、カルチャーにも興味はなく、ごくごくフツーの女子大生だったんです。雑誌も『JJ』とか『Cancam』とか、女子大生の王道のものを読んでましたし、ファッションも、当時は「ジュリアナ」全盛。白い金ボタンのスーツとか着てましたね(笑)。

それが、ある日、たまたま西麻布で秋田敬明さんと知り合ったんです。こっちもグループ、あっちもグループでした。当時、「P-House」の前身というか、秋田さんが住んでいた渋谷のマンションにはいろんな人が出入りしていたんですね。それこそ村上隆さんとか、谷和レオ君とか、もういろいろです。「遊びにおいでよ」というような感じで誘われて、何回か遊びに行くようになったのが1994年のお正月ごろだったでしょうか。「P-House」の立ち上げ直前のことです。

「P-House」は実験的というか、とりあえずやっちゃえ!というような勢いがありましたね。もともとは秋田さんと村上さんが言い出したプロジェクト。いわゆる美術業界とかギャラリー制度というか、そういう既存のシステムのようなものに対する投げかけみたいな気持ちが、2人を動かしたんだと思います。もちろん、当時の私はそんなことなど全然考えていませんでしたけど(笑)。

そんな勢いに引っ張られるように、「ちょっと手伝わない?」「おもしろそうだからいいよ」みたいな感じで、気がついたら「P-House」の立ち上げに参加していました。アルバイトではなく、みんなボランティア。というか、ボランティアという意識もないままに、単純に引き込まれていったという感じでしょうか。学生はヒマじゃないですか。なんか楽しいから「はい、はい」と手伝っているうちに、学校に行くのを忘れちゃう。で、実は留年してしまいまして(笑)。わりとお嬢様系の学校だったので、みんなふつうに卒業していくんですね。私のように4年もかかってやっと卒業したなんていうのは、学校始まって以来だと言われましたね(苦笑)。

何でもやりましたよ。いわゆるデスクワークから電話番など雑務全般まで。作家の工藤キキさんも当時は一緒にやってました。あとは、横山豊蘭(ルー君)さんとか、まだ他にもいたかな。大人の人は村上さんとか、福嶋さんとか、とにかくいろんな人がいた。「サロン」なんてかっこいいものじゃありませんでしたね。誰かが集合をかけたわけでもないのに、いろんな人が集まってくる。それぞれが友達を連れてきて、また出会う。行けば必ず誰かがいる、そんな「場」でした。

そして、ごく自然の流れのまま、翌95年に恵比寿「cafe guest」というカフェのオープニングにも携わっていました。その頃になると、私以外にもなんとなくレギュラーメンバーが決まってきて、若い子も増えてきました。とはいえ、基本的にはみんなフリー。フリーランスの集団です。
90年代後半、恵比寿にあった
「Cafe guest」と「P-House」。

「cafe guest」の仕事とギャラリー「P-House」の仕事と犬の世話。

「cafe guest」は、築40年くらいの一軒家。5年という期限付き物件だったので、自分たちで全面的に改装しました。今でこそ珍しくなくなりましたが、ペットOKというカフェは当時としては画期的なこと。でも、もともと、犬が飼えるような場所をつくろうよ、ということで始めたわけですから当然のことなんですけどね(笑)。

カフェでは、最初の頃は運んだりもしてたし、カウンターにも入ってました。料理もやりましたよ。そのうち、メニューをどうするとかシステムの方に携わるようになり、最終的には仕切る方をやっていました。もちろん、人が足りない時には現場に出ていましたけど…。

半年ほど遅れて、2階にギャラリー「P-House」が完成。オープニングは「Jake&Dinos Chapman」展。作品自体がショッキングだったということもあり、かなり話題になりました。でも、当初展示を予定していた4体中1体しか日本に持って来れず、立ち上げというプレッシャーとお客さんからの「500円払ってこれだけなの?」というクレームに、けっこうショックを覚えましたね。なんとか会期中に克服しましたが…。そういえば、当時『アクロス』さんにも秋田を取材して頂いたんですよね。

カフェの仕事もそうですが、実はプレスの仕事もちゃんと教えてもらったわけではありません。わからないことが出てきた時は、その場にいる人に聞く、という感じで臨機応変に対応してました。

その後97年からはギャラリーの企画も担当することになったのですが、これもまた自己流(笑)。今何がおもしろいとか、どういう人がいるのかなど、いろんな人にいろいろな意見を聞いたり見たりする中で、「この人をやりたい」って思った人がいれば直接お願いしたり、紹介してもらったり。

意識したのは、「新しさ」。新人に限らず、巨匠クラスでも新しい試みを行っているものにも積極的に取り組みました。そうやって回を重ねていくうちに、徐々に持ち込みや紹介の話も増えていきました。

ちなみに、ぜんぜん関係ない話なんですが、ギャラリーの企画をやり始めた頃からでしょうか。だんだん化粧をしなくなっていったんです。それどころじゃなかった、っていう話もありますが(笑)。なんだか化粧をするのが面倒くさくなっちゃったという感じでしょうか。気がつくと、服装もだんだんギャルっぽくはなくなってましたね(笑)。
ワンワンパークまるごと
ガイドブック。キャッチ
フレーズは「もっとステ
キな人と犬の生活、考え
よう」。桐島ローランド
さんや在日仏大使館広報
部長のカルモナさんなど
インタビューも充実。人
気ブランドのK3などの広
告も!

「P-House」から「GAS」へ。

2000年の夏、契約満了で「P-House」というハコはクローズ。それをきっかけに、レトリバーの3匹のうちの1匹をうちで飼うことになり、その後しばらくは犬の世話に勤しんでいました。

すると、都会の中で犬と生活していくにあたってすごく不便な事とが多いということに気づいたんです。一番最初に思ったのは、なぜ犬を飼ってる事が悪い事のような肩身の狭い気分になってしまうんだろうっていうこと。たとえば散歩の時。レトリバーはけっこう大きいので、歩道とかで正面から歩いて来た人に道を譲るじゃないですか。その時に、犬が嫌いな人だと、眉間にシワを寄せられて大回りをされたりする。まあ、嫌いな人は仕方がないのかもしれませんが、思わず「はあ、すみません」と猫背になっちゃう(苦笑)。犬のウンチが放置されている側をたまたま通り過ぎたりすると、自分じゃないのに、なんとなくバツが悪い。もちろん飼ってない人に対して気を使うというのは当たり前の事なんですが、そこまで卑下するにはヘンだと思ったんです。

たとえばウンチの話。もともと公園では、自分の犬のウンチを拾わなきゃいけないのはもちろんの事、それを公園のゴミ箱に捨てちゃいけないんですよ。お家に持って帰ってから捨てなくちゃいけない。それを知った時、最初に思ったのは、犬を飼ってる側からすると、例えば月500円でも1000円でも支払ったとしても、犬専用のゴミ箱があり、そこにルール通りに捨てることができたら、どんなに便利かな、と。「犬税」とかいって、きちんとした回収システムが出来れば、飼い主はみんなそっちの方がうれしいと思うんです。

そこから始まって、日本の犬業界はもちろんのこと、海外の犬事情なども調べるじゃないですか。そうするといろんな事が見えてきて、やっぱりおかしい。というか、ちょっとした改善で、もっと良くなる部分がたくさんあることに気づいたんです。そこで、まずは動物の基本的なことを勉強しなくちゃ、と資格を取得しました。動物取扱主任者。これは、動物取扱業とかを開業する時に必要な資格で、各都道府県別に発行されているものです。それから、愛玩動物飼養管理士(2級)も取得しました。大きな話になっちゃうんですけど、日本で年間何匹くらいの犬が処分されていると思いますか? 60万匹なんですよ!! 60万! そういう捨て犬をめぐる社会問題をはじめ、ブリーダーの事とか、繁殖屋の事とか、もうダークな問題もいっぱいある。

もちろん昔からそういう事に対して里親を探したり、シェルター作って保護したりという活動をしている人達はいっぱいいます。たとえば、今度イベントを一緒にやるマルコ・ブルーノさんていう外国人の男性がいるんですが、彼ももう十何年前から山梨でそういう活動をやっている。

でも、いわゆる動物愛護系の人たちと一般の飼い主の人たちとの間には温度差があるんです。愛護系の人たちの主張は正論なのですが、それが一般の飼い主に伝わるかというとまた別の話。そこまでは下りていってない。ふつうの飼い主ももちろん犬かわいい、捨て犬とかなくしたい、そうは思っていても、実際にそういう活動に参加できるかというと、それはまた別なんですね。もともと日本はボランティアとかが根付いていない国だし、基本的な意識もすごく低いじゃないですか。そんな状況で、高い所から「動物愛護」と主張しても、逆にみんな引いちゃうんだと思うんです。それでは、真の目的はいつまでたっても達成しないじゃないですか。

そんなことがいろいろとわかってきた今、なんのしがらみのない私たちが、それらの間を取り持てばいいんだ、ということに気づいたんです。存在意義のようなもの、使命感を感じましたね。もちろん、私1人で出来る事じゃないし、それこそ今やっているP HOUSEの何人かのメンバーで出来る事でももちろんない。かといって、でっかい組織を作ればいいのかっていうとそれも違う。既にいろんな団体があり、その人たちと手を組んでやればいいだけの話だと思うんです。

いつものように、みんなで雑談めいた話をしていた時に、まずはみんなに声をかけるきっかけをつくろう。それにはイベントがいちばんだ、ということになった。ちょうど昨年は、東京都ではドッグランがある種のテーマになっていて、12月から駒沢公園と神代植物公園の2カ所でドッグランをスタートする予定になっていたんです。じゃあ、私たちは、もっとリアルな市民レベルでのドッグランのイベントを開催しよう、ということになったんです。一応、この件の言い出しっぺは私でした。

やってしまえば、話は早いですからね(笑)。会場できちんとアンケートを取り、飼い主たちの実態をデータにまとめよう。ということで、昨年11月17日、「第1回 WAN WAN PARK」というドッグランのイベントを開催したんです。場所は中目黒公園の資材置き場。目黒区の担当者の方を巻き込んでの半ばゲリラ的な開催(笑)。ですから、告知は口コミだけだったのですが、なんと548人、463頭も集まったんです。アンケートの回答数は184件! みんな「もっと広い会場で開催して欲しい」「こういうイベントをもっと開催して欲しい」といった回答もたくさん聞かれました。大成功でした。

その後、駒沢公園のドッグランのことで都の公園課の方とお会いしたときに、偶然、お台場の潮風公園の規制が緩和されて一般の人もイベントができるようになったという話を聞き、潮風公園は気持ちよくて犬に最高だと思っていたので、ぜひ第2弾は潮風公園でやりたいと思い、公園事務所に申請しました。当初は、犬のリードを外すのはダメ!ということだったのですが、都の公園課お方々と話し合い、いろいろな方々のご協力をいただいて、「第2回 WAN WAN PARK」が開催できることになったんです。日程は、当初5月31日と6月1日の土日だったのですが、台風の関係で延期。7月26日と27日の土日に開催の予定です。
「横浜トリエンナーレ」の会場と
なった横浜赤レンガ倉庫に「アカ
レンガカフェ」もプロデュースした。

動物愛護の新しい形

つい先日、「GASS」というNPO法人の登記が完了しました。実は、「GASS」と「GAS」と2つあって、「GASS」はNPO法人で「GOOD ANIMAL SUPPORT SOCIETY」の略。「GAS」は有限会社で、「GOOD ANIMAL SUPPORT」の略。基本的には「P-House」「guest」からのネットワークで「GAS」を立ち上げたんですが、こっちは一応私が代表になっています。メインメンバーは6人。なんだかいろいろ名前があってわかりにくいかもしれませんが、ようはボランティアだけだと続かないので、ちゃんとしたシステムを考えよう、と今模索しているところです。

できれば公園でのドッグランは常設にまで持っていきたいと思っていますし、いわゆる都会でのペット環境やシステムの改善を目的に、ゆくゆくは法律関係の事、条例を変えるとか作るとか、そういう所までいきたいなと思っています。同時にGASの方ではもっとペットとの生活を楽しむ部分、いわゆるグッズとかサービス的な面での提案をやっていきたいですね。

実は、7月7日に「GAS」のホームページを立ち上げる予定なんです。間に合うかな(笑)。最初はリードとか、首輪、Tシャツ、雑貨などを取扱う予定。今まであったような犬のグッズとはひと味もふた味も違う犬グッズシリーズになると思います。

面白いことには貪欲なんです。そういう意味では、「P-House」というマインドは、脈々と活き続けているのかもしれません。実際に、ハコがなくなってからは、企画=ソフト面での仕事を請け負っており、スパイラルで「クロスポイント」という展覧会を立花ハジメさんと共同でプロデュースしたり、横浜の「トリエンナーレ」の横浜赤レンガ倉庫に「アカレンガカフェ」をオープンしたり。あと最近では、某地方都市の再開発の話などもあります。大型商業施設の中のカルチャー的なスペースのプロデュースというような内容です。また、今自分たちが夢中になっているのは、犬のウンチを使った発電システムの研究です。まだ実験段階なんですが、きちんと整備されたらもの凄い社会へのインパクトになると思いますね。

振り返ってみると、私はずっと「P-House」を基盤に、そこからの繋がり、広がりでやってきたと思います。何が魅力なのかというと、結局「人」なんだと思います。「魅力的な人」は「魅力的な場(=社会)」をつくる。その時々でその「魅力的な場」自体が動いているから自分も動く、みたいな感覚でしょうか。そこには、「自分の意志」と「場(社会)が求める役割」の両方があって、より一層ものごとを前に進める原動力へと繋がっていたように思いますね。

最近、またみんなが集まれるようなスペースが欲しいねっていう話をしてるんです。それがギャラリーなのか飲食なのか、ショップなのか、はたまたホテルなのか何なのかはまだわかりませんが。ひょっとしたら、原点に戻るという意味で、あえてワンルームマンションの一室にしたりして(笑)。


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