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緑の東京募金
レポート
2008.04.14
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緑の東京募金

東京都が都民と協働して、
東京に緑を植え育てる事業選択型募金

「海の森の整備」は、東京湾にあるごみと
残土の埋め立て地に苗木を植えるプロジェクト。
都心への風の起点になるとともに、CO2を
吸収する。
「校庭芝生化」は都内の小中学校の校庭を
芝生化するプロジェクト。
「街路樹の整備」では現在48万本の街路樹を
100万本に増やす予定。
「花粉の少ない森づくり」では多摩地域の
スギ林を伐採し、花粉の少ないスギ等を
植樹する。
08年2月2日に街頭キャンペーンを実施。
「緑の東京募金」への寄付と、2016年の
夏季五輪招致をPRするため、職員1,000人が
上野公園や主要駅前でパンフレットを配布した。
環境問題への関心が高まり、環境税や炭素税、あるいは排出権取引、カーボンオフセットなどのキーワードが話題を集めている。つまり、環境とお金の問題だ。環境への配慮がされている商品なら金額が高くても購入したいと考えるロハス層の幅が広がり、「地球を守るためならお金を出してもいい」と考える人にとっての一歩進んだ選択肢が増えつつある。

東京都が07年10月22日に創設した「緑の東京募金」は、石原都政の「十年後の東京」施策に基づき、水と緑の都市・東京を復活させることを目的に活動を行なっている。実行委員には、表参道ヒルズなどの設計で有名な建築家の安藤忠雄氏や、東京オリンピック招致大使を務める有森裕子氏、アルピニストの野口健氏などが名を連ね、テレビや新聞、雑誌などで知った人も多いだろう。募金の目標額は3年間で8億円。募金対象となるのは「海の森の整備」、「街路樹の整備」、「校庭芝生化」、「花粉の少ない森づくり」の4つ。どれも都民の関心を集める内容だ。しかしなぜ、税金で行なうはずのこれらの事業のために、東京都が募金活動を行なうのだろか?

「多くの人が都市に緑を増やすことに賛成しますが、個人レベルでは緑を増やす方法が限られてしまうので、どうしても行政主導になってしまいます。これからは行政だけでなく、皆様に参加意識を持っていただき、街路樹など目に見えるかたちで募金を活かすことで、緑づくりへの意識改革をすることが目的です」(東京都環境局自然環境部 倉田さん)

今回の募金は、4つの緑化事業から寄付先を自分で選ぶことができる。例えば、約88ヘクタールのごみの島を森に生まれ変わらせる「海の森の整備」を選べば、寄付金の全額が苗木の購入に使われる(1000円で苗木1本に相当)。事業のすべてを募金でまかなうのではなく、緑を増やすための費用に募金を活用し、自分の寄付金がどこでどのように緑に変わるのが文字通り目に見える。寄付は郵便振込で気軽に行なうことができ、ウェブサイトでは事業の進行状況や、募金総額、協力者の氏名の公表も随時行なっている。

「さらに最大の特徴は、税制上の優遇措置です。募金の際には、東京都名義の領収書が発行され、法人であれば全額損金算入、個人も5000円以上から所得税などの控除対象になります。収益が上がって納税額が増えたとき、そのまま税金を納める代わりに目的を持ってこちらの募金に寄付していただくこともできます。新しい環境政策を世界に向けて発信していくことも東京都の重要な役割。他の自治体からの問い合わせも多く、行政による環境事業のひとつのロールモデルになることも考えられます」(倉田さん)

寄付は件数では個人のものが多いが、これまでにない税制上の優遇措置が注目を集めたのか、企業のCSR担当者や民間事業者からの電話での問い合わせも多く、200件以上あったという。CSR活動を自主的に行なう企業はもちろんのこと、自社だけでは取り組みが行き届かなかった中小企業の環境対策に予算面でも内容面でもフィットし、連携を図ることでお互いのメリットになっているという。

募金総額は2008年4月11日現在で121,166,274円。わかりやすい事業内容と、取り組みやすい募金のシステム、さらに税の優遇措置のある新しい募金のかたちは、短期間で多くの注目を集めるのに成功したといえるだろう。しかし、皮肉にも一番PR力があったのは、2月のある報道だったとみる向きもある。緑の東京募金のために街頭募金活動をしていた約1000人の都職員に休日出張手当が支給され、石原都知事は即座にこの支給をやめさせたという話だ…。

「東京都による募金は私たちにとっても前代未聞の試み。まずは都庁職員にその重要性を説明するところから始めました。職員が休日に自分たちで街頭募金活動を行なうというのは初めてなんです。あの報道の後、職員に再度意思確認しましたが、全員がボランティアを希望しました。そこには報道されなかったのですが…」(倉田さん)。

北極でも熱帯雨林でもなく、より身近な身の回りの環境問題に気づかせてくれる、東京都による新しい募金活動。募金するその気持ちが本物ならば、「十年後の東京」の施策内容や寄付以外の予算にも目を向け、一人ひとりが積極的に都政に関わっていくことが重要だろう。


〔取材・文:佐久間成美(エコライター)〕


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