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noitisnart(ノイティスナート)
レポート
2008.05.30
この記事のカテゴリー |  ファッション | 

noitisnart(ノイティスナート)

日本初上陸のブランドを扱う、隠れ家的セレクトショップ

1940〜50年代のヨーロッパの
アンティーク古着も販売。状態の
よいものが揃う。
オーストラリアブランドTina Kalivas
(ティナ・カリバス)
のワンピース。
パリのアクセサリーブランドHilla(イーラ)
は日本では同店のみでの取り扱い。
バスルームや洗面所をそのまま残した
店内は、NYの住居兼店舗のような
雰囲気。
場所はユナイテッドアローズ原宿本店の
さらに奥。マンションの2階の黒い
フラッグが目印。
原宿の駅から千駄ヶ谷方面に向かい、歩くこと約10分。ユナイテッドアローズ原宿本店からさらに奥のマンションの1室に、セレクトショップ「noitisnart(ノイティスナート)」がある。オープンしたのは08年3月10日。

同店のオーナーは、矢作理絵さん(30)。矢作さんは20歳で「BEAMS(ビームス)」に入社。販売やオリジナル商品の生産企画などを経て、アシスタントバイヤーとして海外や国内の買い付けを担当。06年8月、30歳を目前に退社した後、知人が手がけるショップのバイイングを行ったり、ベルリンで開催されているファッションの合同展示会「IDEAL(イデアル)」に通訳スタッフとして関わった。

バイヤーやスタッフとして海外の展示会に携わるうちに、日本では知られていなくてもクオリティの高いブランドがたくさんあることを実感。それらを日本に紹介したいという思いから、今回、日本未入荷のブランドを扱うショップをオープンした。バイイングから販売まですべてを自分で手がけることで、自分で選んだ商品の魅力をお客さん直接伝えたかった、というのも大きな理由だという。

「国内のセレクトショップは、どこも同じブランドで似たような商品構成になってしまっています。マーケットの流れを追いかけて、トレンドのアイテムを揃えるならすべて日本国内の代理店で買い付けできますが、それではつまらないですよね。どうせやるなら自分らしさを表現できるような空間を作りたかったんです」(矢作さん)。

矢作さんは海外サイトと洋書を閲覧して、日本未入荷のブランドをリサーチ。気になるブランドに直接コンタクトを取り、交渉してバイイングを行っているそうだ。取り扱いブランドはすべてインポートで、オーストラリアのTina Kalivas(ティナ・カリバス)「Leonard St.(レオナルドストリート)」やLAの「Bailey 44(ベイリー44)」「Karen ZAMBOS(カレン・ザンボス)」「And Cake(アンドケイク)」、フランスのアクセサリーブランド「Hilla(イーラ)」など。また、1940〜50年代のヨーロッパのアンティーク古着も取り扱っている。さらに今後はメキシコやバンコクのブランドの展開や、卸の展開も視野に入れているという。

商品はすべてレディースで、セレクトの基準は「自分が着たいもの」「気負いなく着られるもの」。フォーマルなものからデイリーに使えるカジュアルウェアまで幅広く揃えており、大人の女性がかわいらしく着られるデザインであることもセレクトのポイントだ。

店舗面積は10坪で、内装は「隠れ家」をイメージ。以前は住居だった空間を活かし、バスルームやトイレなどをあえてそのままに残し、NYにある住居兼店舗のように仕上げた。ディスプレイ用のショーケースやカウンターも内装業を手がける友人の手作り。まるで友だちの家に遊びに来たかのような落ち着きを感じさせる。

ターゲットは20代後半〜30代の女性で、なかでも美容師やアパレル関係者など、ファッションに対してアグレッシブな層。同店の周辺はアパレルの事務所や卸の倉庫が多いエリアで、ここ数年で飲食店や小規模なアパレルのショップが徐々に増えているものの、ショッピングで訪れる来街者はまだまだ少ない場所である。しかし矢作さんは「わざわざ探して来店してもらいたい」という思いから、あえてこのエリアに出店したという。

東京では00年以降、欧米のビッグメゾンがコレクションで発表したアイテムやスタイルがそのまま流行るというトレンドのトップダウンの流れが続いているが、それを受けて、SPAブランドやドメスティックブランドからも、ビッグメゾンのアイテムと似たようなデザインの商品が続々と発売。セレクトショップは単にブランド集積するだけでは差別化をはかりにくくなっているのである。

そんな背景から、ブラジルやベルリン、インド、オーストラリアなど、ファッションにおいてこれまで日本で馴染みがなかった国々のブランドを取り扱うセレクトショップが急増。ユーロ高の影響でヨーロッパ商品が買いにくくなったこともあるが、手の込んだクラフト感や独特のパターン、色使いなど、洋服のデザイン自体の魅力に、ファッション感度の高い若者たちが共感している。これらファッション第三世界のブランドは没個性化するセレクトショップの打開策になり得るだろう。世界中からセレクトしたインポートブランドに加え、古着も取り扱う同店はオーナー兼バイヤーの趣向を反映した、本来の意味での「セレクトショップ」といえそうだ。

ちなみに店名の「noitisnart(ノイティスナート)」は、折り返し地点を意味する「transition(トランジション)」を反対に表記したもの。仕事での転機(=ターニングポイント)であるということと、60歳まで仕事を続けると考えた場合、ちょうど半分の折り返し点の30歳であるという2つの意味が込められているのだそうだ。

[取材・文/高橋まきこ(フリーライター/エディター)+『ACROSS』編集部]


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