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droog(ドローグ)
レポート
2008.09.21
この記事のカテゴリー |  インテリア・雑貨 | 

droog(ドローグ)

生活を彩る自由な発想のデザイン集団
『droog』の国内初ショップがオープン

テニスボールのような食器洗い用スポンジ。
「Dish mob」(2,100円)。
ワイングラスの乾杯音を用いたドアベル。
「Bottoms up doorbell」(3万5,700円)。
どこでも絵画にできる額縁シール。
「Do frame」(2,520円)。
材木倉庫をリノベーションして
オープン。
ストリートファッション マーケティング across
福井県鯖江市で行われている
展覧会『MOOK』の様子。
08年9月13日-9月23日まで。
世界から注目を集めるオランダのコンテンポラリー・プロダクトデザインを代表するレーベル「droog(ドローグ)」のショールームが08年6月、渋谷区恵比寿にオープンした。材木倉庫をリノベーションしたショールームは、白を基調としたカラーに天井の高さが印象的なスペースで、70〜80アイテムの取り扱い商品からセレクトされたインテリアや雑貨が展示されている。これまでもドローグ・デザインのプロダクトはインテリア誌やカルチャー誌、イデーやコンラン・ショップなどのショップで目にすることができたが、このショールームは全てのプロダクトをまとめて目にすることができる貴重なショウイング・スペースだ。

日本でドローグを展開する窓口となるのは、コンテンポラリー・ジュエリーのギャラリー「gallery deux poisons」を運営する有限会社ドゥポワソン。ドローグ創始者のひとりであるハイス・バッカーのジュエリーを日本に紹介してきたことから今回、日本での活動を展開するパートナーとなった。
 
ドローグとは、オランダを本拠にデザイナーやキュレーターが連携して形成されるデザインの“プラットフォーム”だ。ここでは、パソコンにおける“OSを作動させるための環境、設定”といった意味合いだろう。

ドローグには決まったメンバーシップはなく、その時々でメンバーが連携してプロジェクトを起こし、プロダクト・デザインや展覧会などのイベント、パーティなどを手掛けるのが特徴だ。その活動は単なるブランドやレーベルという概念では捉えられない、多岐にわたるものだ。

オランダでは90年代初期からデザインに対する新しい考え方を持つアーティストが急速に増え、ドローグはその流れの中心的存在。前述のハイス・バッカー(ジュエリー/プロダクトデザイナー)とレニー・ラーマーカス(デザイン評論家)が中心となって“画一化されたデザイン概念を打ち破る”というテーマのもとにスタートしたものである。彼らが1993年のミラノ・サローネに出品したデザインが高く評価されたことで、広くその名を知られるようになった。

それ以降、彼らはオランダのみならず世界のデザイン界で注目を集め続けている。ドローグに参画したアーティストの中でも、特にリチャード・ハッテン(Richard Hutten)やユルゲン・ベイ(jurgen_bey)はそれぞれ独自の作風を確立し、世界的に重要なプロダクトデザイナーの一人となっている。

日本にドローグが紹介されたのは00年に新宿「OZON」で開催された「Droog&Dutch Design展〜現代オランダデザインの今−プロダクトからファッションまで」が記憶される。以降、カフェやファッションなどのショップ内装や、インテリア・ショップに扱われる商品を通じて、ドローグから生まれた作品が見られるようになった。例えばローディ・グローマンス(Rody Graumans)による電球を束ねたシャンデリア“85 Lamps Chandelier”などはカフェやショップの内装としてご覧になった方も多いはずだ。

そして06年の“100%DESIGN TOKYO”での展示では、 ドローグというムーブメントそのものに脚光が当たった。そこで展示されたプロダクトは多くのメディアやユーザーの注目を集めた。

ドローグに携わるデザイナー達をつなぐキーワードとなる「droog」という単語は、「1 乾いた, 乾燥した; 水気のない; ひからびた /2 (パンなどに)何もつけていない /3 (話題などが)そっけない /4 (飲み物が)辛口の」という意味をもつ。 英語のDry=日本語で“ドライ”として使っている言葉に近い。そんな飾り気のないユーモアとウィットがドローグの特徴だが、その土台にはオランダの社会構造や生活風土があるという。

「ドローグのデザインは、ユーザーの手が加わることで作品として完成するようなところがありますね。もともとオランダには陶器やファブリックなど手工業の伝統が残っていて、優れた職人が多いんですよ。ドローグのデザインにも、そういうオランダの伝統的な工芸技術が生かされています。オランダの伝統に知性を刺激するような皮肉やユーモアが加わっているので、オランダのデザインには他のヨーロッパのデザインよりも人間くさい魅力がありますね」(有限会社ドゥポワソン 服部 航さん)。

オランダは領土が狭く人口密度の高い国であり、インテリアやプロダクトデザインには、少ない資源や空間を上手に使う知恵が求められる。自動車や航空・宇宙、ITといった常に最先端の技術に対応することがデザインに求められる国とは異なり、デザインそのものを進化させることが求められることで知的に洗練されてきたのである。ダッチ・デザインのユニークさは、コンセプチュアルなデザインが、オランダの伝統的な素材や技術を介して生活とリアルに結びついているという点にある。

ユルゲン・ベイの、丸太の上に真鍮の背もたれを刺した “Tree Trunk Bench”(1999年)など、ドローグからはアート作品としても成立するような、コンセプチュアルな完成度の高いデザインが生まれている。こうした1点1点の価値が際立つ作品は、ドローグの中でも“ユニーク・ピース”として扱われ、中には椅子1脚が100万円を越える金額で売買されるものもある。ドローグに代表されるダッチ・デザインが90年代という市場経済のグローバル化、そしてアートバブルが進行した時期と同じような時期に生まれ、世界で認められるようになったのは必然だったと言えるかもしれない。

08年8月には、日本におけるドローグ・デザインの巡回展示「droog loves Japan」が開催された。金沢を皮切りに福井、奈良と巡回。また、他業種とのコラボレーションによるプロジェクトも現在準備中のようだ。
 
「09年にかけては、作品の紹介や販売だけではなく、活動の幅を広げていきます。将来的にはコンペティションを開催して、日本のアーティストを発掘する活動もやってみたいですね」(服部さん)

このドローグ、「ちょっと面白い新感覚のプロダクト・デザイン」という程度の理解で終わってしまうのはもったいない。まずは展覧会やショップでモノに触れてみて、そこに込められた批評精神やウィットを空間の中で感じてみたい。エコという免罪符のもとでさらなる消費を促すのではなく、限られた環境の中で知恵を使って生活を彩るための自由な発想がここにはある。日本の私たちがドローグ/ダッチ・デザインから学べることは多いはずだ。

[取材・文/本橋康治(フリーライター)+『ACROSS』編集部]


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