PACO展〜スモール・セカンドハウス
レポート
2009.02.02
カルチャー|CULTURE

PACO展〜スモール・セカンドハウス

3メートルの立方体が、自分だけの住居デザインを実現する

わずか9平方メートルの空間に、キッチン、
テーブル、寝室・収納・シャワー、トイレ
などが設置されている。
床とキッチンにはエポキシ樹脂が敷かれ、
透明感のあるモダンな雰囲気になっている。
オーガンジーに特殊加工が施された
完全防水のシャーワーカーテン。
屋根は油圧シリンダーによって開閉。
ハンモックを屋根にぶら下げ、寝ながら
外の風景を楽しむことができる。
将来的には独立性を高め、置くだけで
完結するインフラフリーのPACOを
目指しているそうだ。
ストリートファッション マーケティング across アクロス
建築家・デザイナーの長坂常さん。
一辺がたった3メートルの立方体でできた小さな木造住宅「PACO(パコ)」を展示・販売する「PACO展〜スモール・セカンドハウス」が、2009年1月17日〜2月9日まで、目黒区上目黒の駒沢通り沿いにあるギャラリー・happaで開催されている。PACOはどこにでも設置できるため、庭に置いて趣味の部屋にする、活用していない土地に置いて簡易別荘にする、といったセカンドハウスとしてのニーズに応えられる、新しい住居モデル。わずか1辺3メートルの小さな空間に、トイレやキッチン等も設置できる、類を見ない建築である。

デザイン・設計は、有限会社スキーマ建築計画の代表・長坂常さん。長坂さんは建築からインテリアまで幅広いデザインを手がけており、これまで、アパレルショップPlantation青山店、江戸川台教会新聖堂、東京都昭島市のデザイン賃貸住宅「harumo cuprum」、埼玉県狭山市の築30年の集合住宅「SAYAMA FLAT」のリノベーション等を手掛けてきた。施工・販売を行うのは、不動産リノベーション事業を展開する株式会社ルーヴィスだ。

(株)ルーヴィスが長坂さんに新しい投資物件の企画を依頼したことをきっかけに、PACOの開発プロジェクトがスタート。長坂さんが、新しいことで、会場でもあるスキーマ建築計画のギャラリーに置いて広められるものにするため、1960年代に盛り上がり、今では廃れてしまったプレハブをヒントに企画。生活に最低限必要なスペースである3メートル、シンプルでわかりやすいキューブ形、屋根が開閉できること、という3点を柱に設計が進められた。

「60年代に、みんながプレハブに抱いていたロマンをもう一度実現できないか、というところからスタートしました。住宅という言葉が持つイメージに縛られず、PACOを何に使おうかというワクワクする気持ちを持ってもらえるように、用途を押し付けない、想像を掻き立てるようなデザインを心がけたんです。個人の方はもちろん、複数を並べてホテルにする等の事業にも活用できると思います」(長坂さん)。

今回は実寸のPACOが展示され、室内で各設備に触れることもできる。構造は2×4(ツーバイフォー)で、床下にもスペースがある。照明は高輝度LEDのほか、天井の一部がアクリルハニカムパネルになっているので、屋外の光を室内に取り入れることが可能。トイレとシャワーは床下に配置し、シャワー使用時はオーガンジーの生地に超撥水加工を施したシャワーカーテンを天井から吊るせる。ほかにも、エアコンフィルター等にも用いられる低密度高反発の素材で作られたハンモック、床の一部を持ち上げるとテーブルになる等、さまざまな工夫が施されている。これらは、家具メーカーのE&Y、ファッションデザイナーの森美穂子さん、特殊塗装職人のなかむらしゅうへいさん、ライティングデザイナーの岡安泉さんといった、クリエイター達との共同開発によるものだ。

PACOの価格は630万円(税込)。展示されているは、キッチン、シャワー、シャワーカーテン、トイレ、天井照明、エポキシ塗装仕上げの床が完備されたフルスペック仕様になっている。実際の販売では完全受注生産のため、室内のカスタマイズが可能だ。

PACOには、上下水道や電線等のインフラに頼らずに生活できる、循環型設備の開発の必要性を訴えるメッセージも込められている。長坂さんは企画を進めるうえで、こんなに小さなPACOでも、一般住宅並みのインフラ設備が必要だという事実に直面。例えばソーラーパネルや雨水の再利用、バイオトイレ等の技術は開発されているが、規模が大掛かりだったり、コストが莫大にかかったりと、さまざまな問題が浮き彫りになった。

「建築でもエコを意識する時代ですが、PACOの制作では特に強く感じました。循環型設備がもっと一般化されるような技術開発を、国や大手企業に進めてもらいたい。そういった問題の投げかけにもなれば、と思います」(長坂さん)。

デザインや機能、そしてサスティナブル空間の可能性を集約する事で、プレハブの概念を刷新したPACO。なるべく景観を壊さず、環境を配慮したプロダクト作りは、リノベーション事業を手がけてきた同社と、長坂さんならではの発想といえるだろう。

「将来的には、ソーラーパネルの設置や、雨水などの利用により、インフラフリーのPACOを考えています。地球上のどこにでも設置できる、想像をかき立てられるものにしたいですね」(長坂さん)。


[取材・文/緒方 麻希子(フリーライター)]

happa(ハッパ)

住所:東京都目黒区上目黒2-30-6
TEL:03-6657-8857


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