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食堂「KIRARA」
レポート
2009.02.09
この記事のカテゴリー |  飲食・フーディング | 

食堂「KIRARA」

“自分定食”を楽しめる、固定メニューを持たない個性派食堂

おかず選びの際には自然と、スタッフと
客との間に会話が生まれていた。
おかずは選べないが、テイクアウト用の
お弁当も注文可能(880円)。
採光豊かで明るい店内。シンプルだが
暖かみのあるインテリアは、まさに
現代版の“食堂”だ。
メインの「豚肉とキャベツの塩炒め」+
「きのこの卵炒め、里芋コロッケオレガノ
風味、れんこんのおかか煮、いんげんの
くるみ味噌和え」+「五穀米」+
「にんじんのポタージュ」。一見量が
少なそうだが、歯応えある野菜の食感や
素材・品数の多さを楽しめて
実は食べ応え十分。
食堂「KIRARA」は、他にも飲食店が
入居するビルの4階にある。
紫色の立て看板が目印。
ランチタイムは同僚と連れ立って来店する
会社員が多かった。女性だけでなく、
男性客が多かったのが印象的。
2008年11月11日、訪れた人が好きなおかずとご飯等を組み合わせた“自分定食”を楽しめる食堂「KIRARA(キララ)」が、中目黒駅そばにオープンした。場所は、山手通り沿いのりそな銀行手前を左折してすぐの細い路地を入ったビルの4階。花かごがモチーフになった鮮やかな紫色の看板が目印だ。

同店の特徴は、自由におかずなどを選んで自分好みの定食を作れること。ランチは「メイン(肉または魚のどちらか1品)+おかず(8種類のうち4種類を選択)+ごはん(白米または五穀米)+スープ」といった具合だ。なんと同店には固定メニューがなく、すべて日替わり。オープンしてからほぼ毎日違うおかずを並べており、昼と夜でもメニューを変えているというから驚く。今年1月から始まったディナーは、メインにボリュームを出し、おかずは5種類、または4種類+デザートを選択でき、お酒も楽しめる。料金は先払いで、ランチ1,000円、ディナー1,500円と別途ドリンク代。店舗面積は14坪、席数は22席。

「栄養のバランス良く、体にやさしいものを召し上がってもらいたいので、旬の野菜を使うこと、30品目を目標になるべく多くの食材を使うことを心がけています。」と話すのは同店責任者であり、管理栄養士の資格も持つ高橋麻里さん。

食材は国産のものを選び、有機も取り入れている。三浦半島の業者から取り寄せている、あやめ雪蕪や黒長大根等の珍しい野菜に出会えるのも特長の1つだ。取材当日のメニューは、メインが「鶏団子の野菜あんかけ」「鯖のレモン焼」、おかずが「さつま芋のバターソテー」「ひよこ豆といんげんのキッシュ」「水名の梅おかか和え」等。メニューは家庭的でありながらもひと工夫があり、和洋中の枠に捉われていない自由さが魅力。味付けはなるべく薄味、ハーブやスパイスを取り入れ、素材を活かしつつも新しい味を提案している。メニューは高橋さんが中心となり考案しているが、柔軟な発想が求められるメニュー開発をとても楽しんでいるのだそうだ。

運営元は、1973年より広尾で野菜を中心とした炭火焼店「my room 雲母(きらら)」を運営する株式会社雲母。看板を出さず予約客のみで営業を続けており、リピーターや出版関係等、業界人も多く訪れる隠れ家的な店である。その2代目のオーナー小林朝日里さんが、07年11月に新たにスタートしたのがケータリング事業である。「my room 雲母」の顧客がランチミーティングや撮影スタジオでケータリングを利用したことなどをきっかけに、口コミで利用客が増加。そしてそのリアル店舗としてオープンしたのが食堂「KIRARA」というわけだ。

「ケータリング同様、お客さま一人ひとりのその日の体調や気分に応じられるような定食屋をつくりたいというオーナーの発想からスタートしました。」(高橋さん)。

ケータリングとリアル店舗の両方を運営することで、食材の運用や調理を効率化し、よりお客様に満足頂ける料理を提供したいという目的もあるという。立地は、社員食堂のように利用してもらえるように学生よりも社会人が多く、広尾の「my room 雲母」とも連携しやすい中目黒を選んだ。

清潔感のある白を基調とした店内は、テラス側が全面ガラス戸でとても開放的。天井から吊り下げた裸電球や、木製のイスやテーブルが温かみを感じさせる。主な客層は、近隣のアパレルショップや事務所等で働く社会人。ランチではすでに週2〜3日通うリピーターもおり、40〜50代の男性の一人客や、20〜30代の女性が2〜3人で来店することも多いそうだ。

「女性は選ぶことが楽しいという声が多く、ランチ後もおしゃべりをして寛いでくれています。仕事が忙しい男性にも、バランスの良い食事が摂れると好評。一人暮らしや不規則な生活の方のお役に立てているようで嬉しいですね」(高橋さん)。

カウンターの上に設置された稼動式の大きな黒板には、今日のメニューの他、旬の野菜の効能を紹介する“旬のお野菜メモ”もある。カウンターキッチンに並ぶおかずを客の前で盛り付けてくれるのだが、「作り手の顔が見える方がお客様も安心されますし、私たちがお客様との会話を楽しみたいとも思っています。何気ない会話から、体調や気分に合ったものをお勧めできるような、コミュニケーションを図れる店にしていきたい」と高橋さんは言う。

ヘルシー志向や食の安全を求める意識は、ブームを超えこれからもさらに高まると思われる。同店もそんなオーナーの思いから生まれた店舗といえるだろう。しかし、同店の魅力は「食堂」や「定食屋」といった言葉にみられるように、肩肘張らず“フツー”のスタンスで身体にやさしく安全な食事を提供しようとする点にある。固定メニューがない楽しさや、「食堂」ならではの客と近い距離感も、日常的に利用したくなる要素となり得るのでは。“不況がトレンド”とでも言ってしまいたくなる今、同店のように実用性の高い飲食店がますます求められるのではないだろうか。


<取材・文/緒方麻希子(フリーライター)+『ACROSS』編集部>


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