ACROSS Street Fashion Marketing

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Amen(アーメン)
レポート
2009.10.03
この記事のカテゴリー |  ファッション | 

Amen(アーメン)

自己表現としてのファッションを提案。80年代生まれによる個性派古着店

地球儀や動物の剥製を使った
エキセントリックな内装も魅力。
売れ筋は和柄の羽織りやガウン。他店
では見られない個性的なデザインの
アイテムが多数。
店内奥のレディスコーナー。ワンピース
やスカート、ヘッドドレスなどフェミニン
なアイテムも扱う。
商品は全て天井から吊るしてディスプレイ。
全ての商品をまんべんなく見られるような
工夫がなされている。
今シーズンは外国人から見たデフォルメ
された日本像を表現。和柄や漢字モチーフ
のアイテムが充実している。
ディレクターの宮下俊之さん(左)と、
オーナーの点と線さん(右)。
場所は明治通りのb6の隣のビル。
スプレーで店名が書かれたドアが目印。
 原宿・明治通り沿いにある雑居ビルの地下に、2009年5月2日、古着ショップ「Amen(アーメン)」がオープンした。オーナー兼バイヤーを点と線さん(25歳)、ディレクターを宮下俊之さん(23歳)が務めている。

 点と線さんは大学在学中から、クラブイベント「DENPA!!」を主宰。「DENPA!!」は、クラブシーンでは取扱われにくいアニメソングを他ジャンルと同様にクラブミュージックとして扱うことで、カルチャー・ファッション・音楽のバリアフリーを提案しているクラブイベントである。また並行して、新宿の大型古着店と高円寺の個人オーナーによる古着店で販売を経験。イベント運営では、楽しい内容であることを最重要視し、動員数を伸ばしていた点と線さんにとって、利益に捉われたビジネス優先の古着店の在り方は魅力を感じられなかった。大学在学中から店舗を構えたいという思いがあったため、もともと好きだった洋服のアプローチで、自分たちにも顧客にも楽しいことを成し得る店を構えようと出店を決意。「DENPA!!」を通して出会った宮下さんと意気投合し、約1年の準備期間を経て出店に至った。

 同店のコンセプトは2つ。1つは、洋服への精神性を大切にすること。過去に着ていた人の思いが込められている古着の精神性の続きを新たに着る人に紡いでもらいたいという。もう1つは、着る人に自分の感覚で洋服を選んでもらうこと。点と線さんは、ファッション雑誌やスナップサイトの影響で、若い世代のファッションがマニュアル化、パターン化していることを懸念しており、誰かのコピーではなく自分の意思で洋服を選ぶことが自己表現や美しさにつながるということを啓蒙していきたいそうだ。

 「僕が小学生の頃に憧れていた90年代の原宿のストリートファッションはエキセントリックで自由ですごく面白かった。自己表現とファッションが直結していたんだと思います。ところが今は、表参道のビッグメゾンが提案するモードファッションや、大量生産・大量消費のファストファッションが台頭し、洋服を着る人、1人ひとりの精神性が欠けてきていると思います。そこそこオシャレだけれど、みんなおりこうな平均点のファッションでつまらない。そういった状況に嫌気がさし、もっと自由に洋服で自己表現して欲しいという思いを伝えるべく、店を出すことにしました」(オーナー兼バイヤー/点と線さん)。

 商品はアメリカで買い付けた古着が中心で、1890年代の古いものから1980、90年代の比較的新しいものまで扱う。メンズとレディースの比率は6:4。点と線さんのその時々の好みで自由にセレクト。「こういうものを着こなしている人がいたらおもしろい」と思う、癖のある個性的なデザインのものを意識して揃えているそうだ。今シーズンは、外国人から見た、デフォルメされた日本像を表現した、和柄の羽織りやガウン、漢字柄のシャツ等が充実。また、「ka na ta(カナタ)」等、一部ドメスティックブランドの商品も扱う。価格帯は、Tシャツ3,000円〜、ワンピース7,000円〜、ボトム4,800円〜、和モチーフの羽織7,000円〜、バッグ3,900円〜。

 クセがある商品を手に取ってもらうには、モチベーションが高いお客さんに来てもらうことが不可欠と考え、あえてふらりと入りにくい地下の物件を選んだ。内装は、配管がむき出しの天井や、手塗りの凹凸のある内壁、少しペンキが剥がれかかった床など、どこか退廃的な雰囲気。全ての商品がまんべんなく見られるよう、すべての商品を畳まずに天井から吊るしてディスプレイしている。

 客層は10代後半〜20代前半で、男女比は5:5。傾向を大きく2つに分けると、一方は90年代の原宿のストリートファッションを知らない10代で、新しいファッションに挑戦したいという層。他方は、点と線さんと同様、90年代の原宿をなぞり、街の変貌と共に行きたくなるショップを失った20代だそうだ。地方からの来店も多く、『DROP』内で行っている点と線さんのブログや同店のブログ、クラブイベントや口コミで知り来店するそうだ。

 「最近、スカートを履く男性が増えていることからも分かるように、先天的に与えられる性別から脱却して、男らしさ、女らしさを自分たちのシャレで遊べる時代になりつつあります。しかし、シーズン概念からは脱却できない。例えば多くのショップでは8月中旬にはどこも秋冬商品を陳列しますが、純粋に、真夏にどうして秋物を買うのでしょう。コレクションブランドならまだ理解できますが、古着屋までそれに倣っている。ジェンダーを飛び越えることができて、なぜシーズンを飛び越えられないのか。当店では、季節感に束縛されずに遊んでいきたいですし、自由に自己表現をする、アイデンティティーとしてのファッションを提案したいと思います」(点と線さん)。

 ここ数年、渋谷〜原宿エリアでは、弊誌で取り上げた「XANADU(ザナドゥ)」「ミキリハッシン」のように、80年代前半生まれの個人オーナーがショップを出店し、90年代生まれの次代の若者に向けてボーダーレスなファッションを提案するケースが増えている。彼らは、10代の頃に、90年代半ばのインディーズブランドや古着ブームを経験。そしてその後、成人しマーケットの主役となる00年頃には、ユニクロなどのSPA ブランドが台頭し、現在のファストファッションブームを知る世代である。憧れと現実の狭間で、現在のストリートファッションに疑問を投げかけるアラウンド25の〈ウチら〉世代は、今後のストリートファッションの新しい潮流を生むカギとなるのではないだろうか。

 同店では今後、ショップ発の音楽の作成や、ギャラリースペースとしてアーティストの作品展示を行うほか、がらりとテイストを変えて2店舗目を構えたい、という野望もあるようだ。

取材・文/緒方麻希子(フリーライター/エディター)+『ACROSS』編集部
Amen(アーメン)
渋谷区神宮前6-28-4 senick関根ビルB1F
TEL:03-6383-0493
営業時間:13:00〜21:00


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