LIM CODE(リムコード)
レポート
2009.11.11
ファッション|FASHION

LIM CODE(リムコード)

“ヘアスタイルは気分で遊ぶ!” 関西大手のヘアサロングループが
原宿にオープンした新コンセプトサロン

「LIM CODE(リムコード)」スタイリストに
よるスタイルサンプル。外国人の子どもの
ようなパーマスタイルが新鮮。
同店オリジナルのヘア剤。
他では見られないPOPな発色がユニークだ。
レセプションスペースには
搬送用コンテナを利用。
大阪・東京・シンガポールを飛び回る
総括ディレクターのカンタロウさん。
幣サイトの定点観測でも、彼が担当する
お客様をキャッチ!→こちらから
同店は原宿GAP前の交差点から3分ほど。
表参道沿いのローソン角を曲がった左手、
レンガ造りのビルの2階にある。
こちらは東京1号店となる
「LIM hair clinie(リムヘアー クリニエ)」
同店の成功により確固たる地位を築いた。
大阪で人気のヘアサロン「LIM hair(リムヘアー)」グループの9店舗目となるサロン、「LIM CODE(リムコード)」が09年6月、裏原宿にオープンした。同店を運営するのは、有限会社 レスイズモア。今年2月にシンガポールに進出し、海外1号店となる「KIZUKI + LIM(キズキ・プラス・リム)」をオープンしたことでも話題を集める同社は、現在、大阪・南船場/南堀江に6店舗を展開する関西大手のサロングループ。東京では06年10月、中目黒に「LIM hair clinie(リムヘアー クリニエ)」を出店しており、「LIM CODE(リムコード)」は2店舗目の東京出店となる。

「今回のターゲットは20代前半のいわゆる”木村カエラ世代”。クールやモードとは関係のない、ポップな雰囲気で、若い子達が見て面白いと感じる店を目指しました。ヘアスタイルは、その人らしさやライフスタイルまでをも表すもの・・・5年ほど前まではそんな風潮が強かったのですが、最近は、自分も含め美容師がヘアスタイルの価値や思いを高めすぎたと感じるようになったんです。そのため、リムコードでは、“もっとライトにオモチャのように、気分でヘアスタイルを遊んで新しい自分を発見しよう”という提案をしています」と話すのは、雑誌やテレビなどの仕事でも活躍する、リムヘアー総括ディレクターの鈴木貫太郎さん(34歳/以下、カンタロウさん)。

南船場「リムヘアー」で長年スタイリストの経験を積んだカンタロウさんは現在、1週間ごとに大阪、東京、シンガポールを行き来しながら、サロンワークと店舗のディレクションまでを一手に担う多忙な人物だ。

「実験室や秘密基地をイメージした」(カンタロウさん)という約30坪の店内は、コンクリート打ちっぱなしの空間、むき出しの照明コードやペンキが塗りかけの壁、搬送用コンテナを切断して作られたレセプションスペースなど、アトリエのような未完成なデザインが特徴。空間デザインは、「クリニエ」から引き続き内装デザイナーの柳原照弘さんが担当した。また同店では、ピンクやイエローの蛍光色の液体がユニークなオリジナルシャンプーや、オイル、エッセンスなどオリジナルのヘアケア製品も開発し、使用・販売を行っている。「あえて現在のオーガニックブームと反するテイストにした」(カンタロウさん)という遊び心が新鮮だ。

「リムコード」の客層は20代前半が中心で、女性が8割。服飾系や美容の専門学校生も多いということで、狙い通り20代後半〜30代の女性が中心となる中目黒「クリニエ」とはまた異なる層を獲得している。

同社が大阪・南船場に現在の「LIM hair(リムヘアー)」をオープンしたのは96年。ヘアサロンの1階にカフェを併設したユニークな内装、専属アートディレクターが手がけるスタイリッシュなイメージ作りが話題となり、当時盛り上がりつつあった南船場の核として、またその後のカフェブームの先駆として、ファッション業界人やクリエイターの集まるサロン的な存在となったことで注目を集めた(※現在はカフェスペースをギャラリーへと改装)。

99年には、「loji(ロジ)」をオープン。デビューしたての若いスタイリストのみがサービスを行う店舗として低価格化を実現した斬新な試みで、幅広い層から支持を集めた。その後03年に「LIM hair second(リムヘアー セカンド)」(※07年、現在の「douceur+LIM(ドゥスール リム)」へと改装)、06年には東京へ進出し、中目黒に「クリニエ」をオープン。“クリニック”と“クリエーション”の造語という店名が表すように、診療所をイメージした店内では、顧客を1時間1人に限定し、ドクターのように髪を徹底的にカウンセリングして施術を行うという独自性を持ったサロンスタイルで活動を開始した。07年には各スタイリストが自分専用の部屋を持ち個室で施術を行う「apartment+LIM(アパートメント リム)」、女性スタッフのみで構成される「douceur+LIM(ドゥスール リム)」、ワンランク上のサービスを提供する「sifuku LIM(シフク リム)」とその後次々と店舗を拡大。全サロンが斬新な発想に溢れ、それぞれに異なる個性を持つのが同グループの特徴だ。

「心がけているのは、グループ内で同じコンセプトの店をふたつと作らないこと。お客様を飽きさせず、他店への流出を防ぐ狙いもあります」(カンタロウさん)。

「LIM hair(リムヘアー)」で、専属アートディレクターのもとでブランディングを徹底的に学んだというカンタロウさんだが、同グループがここまで成長した理由のひとつが、彼がこれまで行ってきた人材育成の工夫にある。

「リムヘアーの経営理念は“美しいものをつくることの出来る人をつくり、世界を変える”。そんな人材を育て、そしてその能力を継続して活かせる環境やシステム作りが大切だと考えてきました。美容師は、アシスタント〜スタイリストの約10年間でトップスタイリストになり、30歳には独立して顧客ごと移動してしまうケースが多い。ですから会社の財産であるスタッフには、常に意思をヒアリングし、技術や状況に応じて店舗を移籍したり、必要に応じては新店を作り経営にも携われるようにしています。女性スタッフだけの『ドゥスール』を作ったのも、結婚や子育ての時期を迎えた女性が働きやすい店を作る必要を感じたから。さらに、若いスタイリストのみのサロン『ロジ』によって、実力ある人材を育てることができる環境を整えました」(カンタロウさん)。

もちろん、これらの発想はお客様の需要ともマッチしているのがポイントで、「女性だけのスタッフだとリラックスできて気軽」「若いスタッフの感性と低価格設定が魅力」など好評を得ている。

さらに今年、初の海外進出を果たした同グループ。きっかけは、シンガポールでヘアサロンを経営する日本人起業家と出会い、技術を教えに来てほしいと依頼されたこと。また、これにはカンタロウさんのアジアでの体験が基にあるという。

「アジアの中でも特にタイがずっと好きで、毎年2〜3回訪れていますが、現地で恵まれない子供達に出逢い、自分も何か貢献できないかと考えるようになった。そこで、数年前に現地のNGOと協力して、美容師育成のプロジェクトを立ち上げようとしたんですが、タイでは法律上の問題から思うように進まなかった。そんなタイミングでシンガポールへの誘いを受けたんです」(カンタロウさん)。

そして月に1週間、シンガポールへ通う生活を半年間続けるうち、現地での反響を獲得。手ごたえを感じたカンタロウさんはグループでのシンガポール進出を決意し、現地法人を設立して「キズキ・プラス・リム」をオープンした。顧客は現地在住の日本人が約半数を占めるが、現地のお客様にはエディターやライターなどのクリエイティブクラスも多いそうで、最近ではシンガポールでのCHANEL(シャネル)のコレクションのヘアーやBOTTEGA VENETA(ボッテガベネタ)などのファッション雑誌のタイアップページのヘアメイクを手がけるなど、その技術やセンスは高い評価を得ている。

そして、9店舗目として誕生したのが今回取り上げた「LIM CODE(リムコード)」。大阪の店舗から抜擢された6名のスタイリストが在籍する。

「中目黒に進出した時から、いずれはファッションの中心エリアである原宿や青山で挑戦したいと考えていた」(カンタロウさん)。

さらに、幅広いクリエイティブ活動も同グループの魅力のひとつ。過去には旬のクリエイターやアーティストなどのインタビューなどを掲載したオリジナルフリーペーパーを発行しており、今年8月にはセレクトショップ「UNITED ARROWS(ユナイテッドアローズ)」とコラボレーションしたコンセプトブック『LIM CONCEPT BOOK "A day A Girl』(2,625円)を発売。

「広告宣伝費は一切かけず、代わりにクリエイティブな活動に資金を使うことにしています。良いものを作ることで自分達も刺激を受けるし、話題になれば結果的に宣伝効果が得られる」(カンタロウさん)。

制作はスタッフ達とアイデア出しや意見交換をしながら行っているという。

「今後はリムブランドの認知度をさらに高めていきたい。大阪に点在する6店をひとつのビルにまとめてブランド力を高めることも視野に入れつつ、東京にもう1店舗と、アジア他国への展開も考えています。また、後輩達に美容師にはいろんなことができるんだという可能性を実際に見せてあげることで、モチベーションを高め、スタイリストとしての希望を与えていきたい」(カンタロウさん)。

表現者であり続けようとするモチベーションの高さ、そして変化を続け、常にチャレンジする姿勢こそが同グループの最大の武器。今回の出店は、脱フェミニン化、カジュアル化が進む東京の若者のストリート感覚をいち早く捉えた店舗だといえるが、それには東京、大阪、シンガポールを行き来しながら現場に立ち続けて次の時代を見据える、カンタロウさんの現場発想の感覚が活かされたものだろう。従来のサロンにはない新しい提案にチャレンジし続ける、リムグループの躍進に注目したい。

[取材・文/渡辺満樹子(フリーライター/エディター)+『ACROSS』編集]

LIM CODE(リムコード)

東京都渋谷区神宮前4-28-11 クレールミキ1F
TEL:03-6440-0831
営業時間:10:00〜23:00(木曜のみ〜17:00)
定休日:火曜日
HP:http://www.lessismore.co.jp/#/limcode/


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