第347回定点観測・速報
レポート
2009.11.14
ファッション|FASHION

第347回定点観測・速報

安心&無難な黒ブームと、森ガール&森ボーイの二極化?!

黒,赤,ストリートファッション,ストリートスナップ,OL,2009秋冬,黒×赤
黒の差し色で人気のブルーに加え、
+赤いバッグがOLさんを中心に浮上。
柄のパンプスも来春注目のアイテム
ロゴスで洋雑誌を熱心にチェックしていた
姿がおしゃれだった彼女。着用していたのは
ほぼ全身ファストファッションブランド。

「黒」のブームは思考・指向が保守的になっている証拠?! 

 ようやく朝晩冷え込み、「肌感覚」としての秋がやってきた。2009年11月、ストリートで支持されているリアルなトレンドは? とプレサーベイを行ったところ、恐らく読者の方々も感じているように(残念ながら)、去年と似ている、去年と同じ、変わらない・・・という印象。

コレクションや展示会でも、来春夏は今秋冬の継続という提案が多く、さらに有識者向けの来秋冬の予測調査(某社と共同で実施中)でもほぼ継続・・・。新しいトレンドを積極的に取り入れるような冒険は、今はタブー、という声が多く寄せられた。つまり、今流行っているトレンド、今実際に着用されているアイテム、という安心感や納得感の延長にあるものしかつくらない(つくれない)と、開発サイド自体が保守的なスパイラルの中に入ってしまっているようだ。

 そんな保守的な指向&思考になると増えるのが「黒」。実は今秋冬の全世界的なカラートレンドは、「いろいろな質感による黒のレンジ(幅)」と、約1年半前に予測されたカラートレンドとストリートが合致した状況といえる。

 ただ東京のストリートでは、ひとあし早く盛夏の8月の時点で、ギャル系やアパレル業界系を中心に、全身黒コーディネートが浮上し、定点観測でも、「女性レギンス着用、うちモノトーンコーディネート」という名称でカウントアイテムとして取り上げた。当時の様子はこちらのバックナンバーをご確認ください。

http://www.web-across.com/observe/cnsa9a000003y51s.html


 さて、その後9月、10月と、定点観測では、カットソーのワンピースやロング丈トップス、チェック柄、ヒョウ柄、ミドル丈ブーツなどを取り上げてきたが、これらは肌感覚での季節感(まだ暑さの厳しい晩夏)ということからの揺り戻し。次の季節のトレンドは小物でプラスするスタイルへとなった結果といえそうだ。

 そして11月に入った途端、再び黒が急増。ということから、今回のカウントアイテムとなった。タイトルは、「女性の黒トップス、うち+黒ボトムスの全身黒いコーディネート」である(実査日は11月7日土曜日/第347回目)である。


 実査を終えてまず感じたのは、ブーツやバッグ、セーターやジャケット、スカート、パンツと、デザイン的には昨年と変わっていないのに、すべてのアイテムが色違いになった、しかもみんな黒になっちゃった! ということ。アイテムでは、05年以来定番も定番となったワンピースがふつうのOLさんにも浸透しており、またシンプルな黒ジャケットや元々持っていたと思われる黒のニット、大定番のレギンスなど、モードでエッジーだった8月の黒に比べ、着回し&コーディネートしやすい黒へと変化していた。

 詳しくは1週間後にUPするデプスインタビューでご覧いただきたいが、「なぜ黒を?」という問いに対して、「スタイリッシュに見える」、「流行っているから」、「スリムに見える(ような気がする)から」という回答の他、「(気持ちが)落ち着く」や「汚れが目立たない」、「何にでも合わせやすい」、「学校だから(気を抜いた)」といった合理的&安心感&無難といった声も多かった。なかには、「父や母がギャルソンやヨウジが好きなので、子どもの頃から黒が多い」という若者も! 

 実際に着用されていた黒アイテムの一部を紹介しておこう。
リエンダ(109)で1ヵ月前に買ったニットのワンピース(9,000円)、10月に池袋の丸井のユニクロで買ったというパーカー(3,000円)+9月に渋谷パルコのgoocy(グーシー)で買ったスカート(5、6,000円)、10月に渋谷スペイン坂上のユニクロで買ったカットソー(1,000円)+去年の春に60,000円で買ったワイズレッドレーベルのスカート、昨年の今ごろ新宿ミロードのRNAで買ったワンピース(7,000円)、7月頃に静岡のナーレンシフで買ったガラ・スーベントというブランドのレザージャケット(100,000円)+9月に買ったドレストアンダレストのパンツ(35,000円)、昨年の冬にラフォーレ原宿のアースミュウージック&エコロジーのニットワンピース(5,000円)、ルミネの2階で買ったロング丈トップス+吉祥寺のZARAで買ったパンツ(4,000円)など。

 こうみると、トップスとボトムスは完全にブランドがバラバラ、購入している場所もショップも別々だったりすることが珍しくないことがわかる。これは00年代以降の大きな傾向のひとつ。改めて、服が「ブランドを着る」ことから、「コーディネート(組み合わせ)するもの」へとその意味性が変化していることも確認された。

 また、8月の時に比べると、ヘアの色も全体的に黒っぽくなっていたり、実はよく見ると、ずっと流行っている黒いレギンズも、素材がヌメヌメ&テカテカとしており、これまでのタイツっぽい素材から、織り柄やデザイン(クラッキングしているなど)、質感などが進化していることも確認された。

 さらに、差し色としてブルーが浮上しており、「黒×青」によるクールなコーディネートが増加しているなど、「黒を中心とした着こなし」が多様化しているようすも伺えた。キーワードでは、「クール」「かっこいい」「モード」といった感じだろうか。


 いつもの通り、渋谷、原宿、新宿の3地点で13:30〜14:30の1時間、同時に通行人中に全身黒コーディネートファッションだった人の占める割合をカウントしたところ、渋谷13.6%(167人)、原宿7.9%(163人)、新宿8.3%(137人)という結果になった。これは、8月の「モノトーンコーディネート」率と比較すると、渋谷は7.8%増の大幅増。原宿(3.3%増)と新宿(3.7%増)も増加していたが、平日のプレサーベイ時はもっと多かった印象を受ける。

 おそらく、「黒」はお仕事着の定番で、定点観測を行ったのは土曜日だったというズレもあるが、実は、ストリートでは、今回「ズームアップアイテム2」として取り上げた、「森ガール」や「森ボーイ(!)」が予想以上に増加。彼・彼女らは、黒ではなく、ベージュ系コーディネートが好きということのズレもあるようだ。元『PS』で『sweet』に流れなかった元祖ストリート系の子たちである。森ガール、森ボーイに関しては、来週UPする「速報・第2弾:森ガール編」をお楽しみに。

ブルー,差し色,クール,黒×ブルー,ストリートファッション,ストリートスナップ,エンジニアブーツ,黒,レザーブルゾン,アクロス,across
黒にミニ丈のスカートを差し色にした
コーディネートも目立った。なかでも
ブルーはクールでギャルに人気。
森ガール,ベージュ,白,ロングスカート,茶系コーディネート,ロングニット,ロングスカート,森ガ,ストリートファッション,ストリートスナップacross,アクロス
体のラインが隠れる生成りのアイテム
のコーディネートが大好きな森ガール。
ニットやスエードなど優しい素材もお
お好み。
レギンス男,短パン男,ハイカットスニーカー,ショートパンツ,フェノメノン,across,ストリートファッション,スナップ,アクロス

マス化しているアイテムやスタイル/次に注目したいアイテムやスタイル

■渋谷 ・・・日増しに外国人観光客が増えている印象の渋谷。中国韓国だけでなく、ヨーロッパ系が目立った。また、日本語がペラペラの外国人顔(おそらくハーフ?)の女子高生や、ご主人が外国人というバギーのファミリーも目立った。

◎マス化しているアイテムやスタイル
・ライダースジャケット(黒と茶色の中間ぐらいのレザーブルゾンが30代以上の『BAILA』系OLに人気。OLさんもレザーブルゾンでちょっとクールなスタイルへと移行中)
・ドクターマーチンのブーツ、大判ストール、ポンチョ、アシンメトリーヘア、カーディガン男子、森ボーイ浮上中(詳しくは次回のレポートで)

◎次に注目したいアイテムやスタイル
・トレンチコートが再び浮上(メンズのプレッピーブーム〜大人の女性に飛び火。Pコートやナポレオンジャケット風のショート丈ジャケットも増えそう。定点観測のスタッフも「スリムなトレンチコートが欲しい」という声が聞かれた)
・アウトドアスタイル(厚手のソックスやセーター、レッドウィングのブーツなど。グレゴリーやパタゴニアなどアウトドアブランドの人気が浮上中。91年ごろの渋カジスタイルが進化した「渋カジ・ワイルダー」なスタイルが再び人気になりそう)
・男性の刈り上げヘア(サイドをすっきりカットオフし、トップにボリュームで80sスタイルに)
・ファーベスト、ファーの帽子
・ギャルのストレートヘア
・厚底靴
・メンズのおしゃれ靴下


■原宿 ・・・フォーエバー21やH&Mのショッパーを持つ人がかなり減っていた。また、NRジャパンという団体が「67億人、みんなが幸せになれるオールWINは可能だと思いますか?」という街頭アンケートを実施。80年代後半または90年代の「自己啓発系の活動団体」が街に出てきているようすも確認された。

◎マス化しているアイテムやスタイル
・サルエルパンツ(変形パンツ)
・ブーツは、エンジニアブーツ、ムートンブーツ、ウエスタンブーツがマス化
・ギャルのストレートヘア
・リュック
・ニットガウン
・ゴツめのバックパック

◎次に注目したいアイテムやスタイル
・でか襟アイテム
・メンズのフォークロアスタイル
・変わりレギンス(柄タイツも)


■新宿 ・・・ショッパーを持つ人が少ない。待ち合わせ中のDSやプレステなど街中/街頭でゲームをする人が目立った。i phoneでエアタグをいじる人も。(懐かしい)ローラーブレードの一段が通過。外国人の参政権に反対する自民党保守系の議員が演説する姿も。新宿らしい、21世紀少年風の路上おやじミュージシャンも見かけた。

◎マス化しているアイテムやスタイル
・ニットワンピース(カットソー、Tシャツ素材のワンピースがそのままニット素材に)
・レギンス(大定番に)
・レザーブルゾンが30代、40代にまで浸透
・ショートブーツ
・ウエッジソール
・OLさんにツイード素材が浸透中
・冬のショートパンツ(男女ともに)
・男の子の大柄チェック(黒×赤、黒×緑などアメカジ)
・まとめ髪(再びロングに延ばし中か?)
・小さなエコバッグを重ね持ちするスタイル(milk fed、cherなど)

◎次に注目したいアイテムやスタイル
・男性のスタジャン、カーディガン
・ナポレオンジャケット
・フリンジモチーフのアクセサリー
・変形パンツ(サルエルパンツがさらにバラエティ化し増加)
・男の子のおだんごヘア
・ヒョウ柄パンプス
・男性のレギンス
・着物、和服

定点観測スタッフが次に欲しいもの/最近買ったもの

◎次に欲しいもの
・インテリっぽい眼鏡
・ごついゴールドのアクセ、重たそうで存在感のあるもの。特にイヤリング
・きれい目のアウター(トレンチコート、紺色など)
・真っ黒でタイツやレギンス代わりになるスキニーデニム(+Jのを狙っていた)
・黒の短靴
・ネックウォーマー
・ALDIESかBOHEMIANSのリュックか斜めがけバッグ
・グラデーションのタイツ(アナザエディションの5,000円くらいのもの)
・サイハイブーツ(太めなのでなくまっすぐストーンとなっているもの)
・高尾山的なボアフリースのパーカー(Gymphelxのもの)
・茶、グレー、濃い緑とかのアウター。見た目がそんなに重たくないもの
・山に登れそうなのに防寒性の低い、暖かくないブーツ、でレザー以外のもの(暑がりなため)
・厚底のコンバース、ドクターマーチンの8ホールのブーツ
・ユニクロでいろいろ欲しい。安いから
・ギャルソンのジャケット。2枚のジャケットを縫い合わせて1枚のジャケットにしたもの(85,000円)
・自転車にも乗れて、会社にも使えるショート丈コート
・ファーの大きい鞄(fur furの鞄が気になる)
・真っ白なロング丈のワンピース。黒ブームに反発して。
・黒のニット
・今再び、コスチュームナショナルのスリムでミニマムなパンツ
・上質でスリムなロングコート

◎最近買ったもの
・黒の肩で着る胸元が広く開いたヒザ丈のAラインのコート(リサイクルショップで5,900円)
・「+J」で黒のスキニーパンツ(5,000円)
・Tシャツ(文化屋雑貨店で2,990円)
・「+J」のロングコート(9,800円)
・グラデーションのワンピース(KUで8,000円)
・ニットジャケット
・黒の革靴(少しだけヒールがあるレースアップ)

・beautiful peopleでVネックニットと星条旗をパロッたストール(展示会で付けた)
・ANREALAGEでジャケットとトップス(展示会で付けた)


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