表参道彩園
レポート
2010.01.20
ライフスタイル|LIFESTYLE

表参道彩園

アクセス抜群!都会の真ん中に登場した都市型レンタル菜園

フィルパーク表参道ビルは白を基調にした
爽やかなデザイン。
葉野菜や花、果実類など、好きな植物を
育てることができる。
じょうろやスコップなどの簡易な菜園道具
が用意されているため、手ぶらで気軽に
通うことができる。
レンタルボックスも用意され、必要な道具は
こちらに収納できる。
周辺には高層ビルがないため、陽当たりは
抜群!!
農業への関心が高まるなか、都心のビルの屋上で野菜や花を育てられる屋上レンタル菜園「表参道彩園」が、09年9月1日に、表参道駅から徒歩5分程の場所にオープンした。

運営は、農業ベンチャーの銀座農園株式会社。代表を務める飯村一樹さんは、一級建築士として建築プランニングや不動産活用の提案をする企業で培ったノウハウを活かして、商店街や地域環境の活性化事業を行うアイナレッジ株式会社を06年に設立。翌年には農業や漁業等の第一次産業の活性化に重点を置いた銀座農園株式会社を07年に設立した。

09年5月には全国のこだわり米農家100人を集めて「銀座でコメづくり2009」プロジェクトをスタート。銀座一丁目交差点近くに、約30平米の田んぼ(敷地面積は100平米)をつくって田植えから稲刈りまでを実施。同プロジェクトは10月に終了し、こだわり米農家の美味しい米をセレクト購入できる「銀座農園オンラインショップ」を立ち上げた。銀座の田んぼでは地元の小学生に田植え経験を積ませたり、提携農家による物産イベントを行ったりすることで、農業や環境問題を考えるきっかけづくりと都市と地方の産業交流を図った。そんななか、都市住民に野菜づくりを体験してもらうことを目的に「表参道彩園」を設立した。

きっかけは、「大量にモノが溢れ、ネット上で価格比較しながら買物ができる現代は、モノの価値よりも“コトの価値”に軸が移っています。そういう時代のなかで、野菜づくりという未体験のこと、楽しいことができる場所を提供したいと思いました」(銀座農園株式会社 代表取締役/飯村一樹さん)。

ターゲットは都心部の在勤者に定め、平日の通勤前後に訪れることができる通いやすい立地にこだわって探した。菜園があるのは、青山通りの青山5丁目信号近くの路地を入った奥手にある「フィルパーク表参道」の屋上。周囲にはカフェ&ダイニング「LAS CHICAS(ラスチカス)」「Paul Smith SPACE(ポールスミススペース)」等が並ぶ洗練された商業エリアである。屋上面積は100平米で、うち30平米を共用スペースに、3平米/区画の菜園を16区画配置している。360度日当たり良好で、床面には天然木板が敷き詰められていたり菜園道具の収納庫等も木製だったりと、できるだけ自然に近い空間がつくられている。

施設・土・堆肥・菜園道具の利用料含む月額料金は、個人会員(2名まで利用可)で1万5,750円、法人会員(3名まで利用可)で2万3,100円、利用1名追加につき2,000円(小学生以下は含まず)。別途、入会金と保証金(各1カ月分)が必要だ。利用者には屋上へのカギ番号が知らされ、24時間365日の利用が可能。常設の水道やジョウロ、スコップ等も使用できる。期間は、第1期が2009年9月〜10年2月末までの半年間だが、第2期は10年3月〜11年2月末までの1年間。管理員の常駐はないが、同社スタッフが定期巡回をしている。基本的には利用者が栽培のすべてを行うが、水やり等の一部代行サービス(有料)等など、様々なニーズに柔軟に対応し、野菜つくりを実践学習できるサービスの拡充を図っていくそうだ。

雑誌等で事前告知を行い、利用希望者への内覧会も実施。応募者数が区画数より上回ったため抽選で決定した。現在も、キャンセル待ちの応募が多数あるという。第1期の利用者の年齢は20〜60代まで広いが、特に多いのは30代。男女比は3:7、個人会員が7割を占め、園芸初心者が大半だ。法人会員では福利厚生のほか、自社開発植物の栽培試験場として利用しているケースもあるそうだ。会員の多くが近隣企業に勤める人なので出勤前に立ち寄るケースが目立つほか、週末は時間をかけて手入れできるとあって賑わう。契約個人の趣味による利用や、友だちや同僚と共同で所有するなど、いろいろだ。

土は保水性が高く軽量な土に肥沃な黒土と、天然の牛糞堆肥を混ぜていて、深さは20〜25センチ程度なのでゴボウ等の長いものには適さないが、各区画では、ハーブや花、トマト等の野菜といったさまざまなものが植えられ華やかだ。なかには自動水やり機を設置する本格的なブースもある。書籍等を見て栽培知識を得ても、実際に植えてみるとうまく育たないことや、虫に食われたりしてしまうなど難題も多いが、この対策として同社契約農家による利用者への勉強会を毎月1回実施しているそうだ。また、収穫後の土壌に同じものを植え続けるとうまく育たないことがある等するため、利用者から申告された苗の種類記録し、できるだけ良い条件で栽培してもらえるようにアドバイスをしているという。

「現在は『空いている屋上があるので屋上菜園をやってほしい』というビル等からのオファーをたくさん頂いている状況です。建物環境に関する調査依頼も増えています。日照や荷重等の条件を満たす都市の遊休地に、今後も貸し菜園を展開していきます」(飯村さん)

空いている屋上を有効活用したい建物所有者のニーズと、「都会で菜園をする、おしゃれな都市型ライフスタイル」といった消費者ニーズの、いずれも叶えることができる屋上菜園。屋上の緑化は環境にも優しく、また建物のイメージアップにも効果的である。同社のビジネスモデルが、都市で暮らす消費者の農業への興味喚起をますます後押ししそうだ。

[取材・文/緒方麻希子(フリーライター/エディター)+『ACROSS』編集]
表参道彩園

住所:東京都渋谷区神宮前5-46-15





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