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CHOICES FOR GIFTS/GALLERY SPEAK FOR
レポート
2009.12.18
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CHOICES FOR GIFTS/GALLERY SPEAK FOR

“アートをギフトに”アートギャラリーの新しい提案

右奥に見えるのは本展のために建築家の
橋本尚氏(リビングタイプ)が手がけた
インスタレーション的な什器。
パリ在住のグラフィックデザイナー
マーク・ニュートンの作品(1点29,400円)。
ユニクロのTシャツデザインに参加するなど
日本でも活躍しているデザイナーだ。
同ギャラリーでの個展も好評だった
イラストレーター白根ゆたんぽさん。
どちらもアクリル絵の具によるイラストで
左:37,380円、右:26,775円。
京都をベースに世界に活動の幅を広げる
内田文武さんの「山肌」シリーズ
(1点29,000円)。ストイックでモダンだが
どこか暖かみのある作品。
「アートのある生活」を提案する
amabro(アマブロ)の携帯ストラップ
「peque(ペケ)」は全て手作りの1点もの。
小:819円、大:1155円。
フォトグラファー木寺紀雄さんは発売中の
「リサ・ラーソン作品集」(ピエブックス)
から作品を提供。廃材を再利用した額装付
大:17,850円、小:8,925円!
画家・福津宣人さんの作品は今回の展覧会
のための新作。描いたモチーフを一度白く
塗りつぶし彫ることでそれを浮き上がらせる
という繊細な手法だ。(1点38,000円)
納品に訪れたアーティストの福津さん(右)
と、ディレクターの吉田さん(左)。
旧山手通り沿いビルの地下1階が
同ギャラリー。隣は代官山の老舗、
ハリウッドランチマーケット。
 ギフトという切り口でセレクトされたアート作品や関連雑貨を集めた展覧会“CHOICES FOR GIFTS”が、アパレル大手(株)アバハウスインターナショナルが運営する、代官山GALLERY SPEAK FOR(ギャラリー スピーク フォー)で開催されている。会場内に展示された作品は約50点。いずれも3万円台以内まで、という手頃な価格帯で作品を絞り込む、というユニークな試みだ。アウトレット的にアートを身近に楽しめるだけでなく、これまで同ギャラリーが開催してきた展覧会のベストチョイスと言えるアーティストを選抜したスペシャル展でもある。

 出品作家は14人。松尾たいこ、内田文武、白根ゆたんぽ、マーク・ニュートンなど。展示・販売される作品はイラストレーション、写真などのアートピースだけでなく、ポストカードや絵本、アパレルまで、“アートをギフトに”という主旨のもとで品揃えをしている。安いものであれば数百円という商品もある。

 この“CHOICES FOR GIFTS”は、GALLERY SPEAK FORでは初めての自主企画である。基本的に同ギャラリーは入居する商業施設SpeakForの集客装置であり、展覧会を行う作家からは使用料を徴収するという貸し会場として運営されてきた。
 2008年9月に現在の地下1階へとフロアを移して全面リニューアルしてからは、作品を販売することを重視。単なるハコ貸しではなく、作家とのコミュニケーションを行いながら“作品を売ること”をアーティスト側にも提案し、工夫を重ねているという。
 
「2008年のリニューアル時に立てた目標は、できるだけ作品の売買を活発にすることでした。まず大切なのは、作品が売れて、回っていくことです。お金が動くことで作家さんにも利益が生まれ、展覧会で得た利益は次の作品制作という投資に回すことができます。
 もちろん作家さんには自由に表現をしてもらいたい気持ちもあります。と同時に、アートを購入したいというお客さんの視点も、考えてもらいたい。こうした問題意識を共有してもらえるようお願いしています」というのは、同ギャラリーのディレクターの吉田広二さん。

 価格を4万円未満に限定したのは、気軽に買えそうな金額=クレジットカード2回払いぐらいをイメージした設定からだという。ちょっと高価な輸入ものの画集や写真集なら1万円を超えることを考えれば、ギフト向けとしても充分検討に値する価格帯だといえるだろう。

また、今回の企画について吉田さんはこう語る。
「うちで展覧会を開催したことのある作家さんの中から、特にギフトとして作品が動きそうな方にお声掛けしました。こちらから作品を指定させていただいた作家さんもいますし、価格に合わせて作品を描き下ろしてくださった方もいます。
 今回の企画にあたっては、サイズの小さいものを中心にしたり、エディションをつけずオープンにするとか、安くするだけの理由をつけるようにしています。決してダンピングをするのではなく、作家の価値を下げないように留意し、これまで作品を買ってくださったお客様にも失礼にならないように配慮しました」。
 
 展示作品はすべて購入するとその場ですぐ持ち帰れる、というのもこの企画の新しい試みだ。希望者にはその場でギフト向けにラッピングもしてくれる。
 この展覧会で吉田さんは、「その場でお客さんに作品を渡せるような形を試してみたかった」という。通常、展覧会では、作品を購入しても作品が手もとに届くのは会期終了後がほとんど。より一般の商品と同じようにアート作品を手に入れてもらいたい、という意識から生まれたアイデアだ。
 
  “アート作品をギフトに”という本企画の提案は、吉田さんの個人的な経験も大きかったそうだ。
「ある海外作家の展覧会を開催した時のことです。作家のところに作品を送り返すとコストがとても高くついてしまうということで、お世話になった人たちにプレゼントしてほしいと作家から頼まれたんです。そこで作品にメッセージを添えて贈ったところ、こんなに喜んでくれるのか、と驚くくらい、皆さんの反応が高かったんです」(吉田さん)。

 また、クリスマスシーズンのギフト好適品としてアート作品を提案するに至ったのには、同ギャラリーがこれまでアート作品を“商品”として考え、買い手の気持ちを掴もうと試行錯誤を重ねてきた経験が生きている。

 まず、同ギャラリーでは、作品の内容についても図柄や価格設定など細かいところまで、購入者目線でのアドバイスも行っている。一つひとつの作品のキャプションに価格を明記しているのも、他のギャラリーではあまり見られない工夫だ。これは“作品は商品でもある”とお客さんに意識づけをするのが目的だ。
 額装についてもうるさく口を出すというが、額装まで含めて商品として完結していることが重要だと考えるからだ。

 そういう試行錯誤の結果もあって、同ギャラリーは作家のリピーターが多いそうだ。販売実績がリピート利用、ひいては新たな利用者の獲得につながっているのである。アート作品の展示/販売をユーザー目線で積み重ねてきた工夫が、作家の側にも浸透しているという手応えを感じているという。

 手頃な価格設定から、アートを買う楽しさに目覚めた人が、顧客へと育っていくケースもあるだろう。ギフトで作品を贈られた人がアートを部屋に飾る楽しさに気付き、新たなアートの購買層となるかもしれない。それはギャラリーの顧客層を拡大するだけではなく、マーケットの活性化へとつながるはずだ。

「アートを贈り物に、という提案は、来年度以降も継続して行っていきたいと思っています。この価格帯でどのような作品が動くのかというリサーチや、ラッピングの対応など、この企画をテストケースとして工夫を重ねていきたい」(吉田さん)。

今後は、ウェブショップ経由で作品の地方発送に対応したり、衝動買いをしても許されるような、例えば1万円以下で買えるような価格帯の作品ラインアップも充実させていきたいという。

 アート作品がギフトとして成立するのではないか、と考えられる背景にはもう一つ、インテリア/家具のマーケットがアートに接近してきたという側面もある。近年、デザイナーに作家性を見出し、家具やインテリアを作品として考えるという共通認識が広がっている。同時に、アート作品も言い換えればインテリアのひとつとして考えることができる。前述のように、同ギャラリーが作品の額装について細かく注文を出すのも、アート作品にインテリアとしての洗練を求める気持ちの現れだ。
 
そのような背景をふまえると、クリエイティブ消費を求める層の購買意欲が今後さらにアート作品へと流れ、日常の生活に寄り添うようなアート作品へのニーズが広がる可能性は充分にあるといえるだろう。


[本橋康治(フリーライター)+『ACROSS』編集]

GALLERY SPEAK FOR(ギャラリー スピーク フォー)
〒150-0033 東京都渋谷区猿楽町28-2 SPEAK FOR B1F
開廊時間 : 11AM-8PM 展示最終日のみ6PMまで
T.03-5459-6385 F.03-5459-6386


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