ACROSS Street Fashion Marketing

コンテンツメニュー
BOME展『Psyche(プシューケー)』
レポート
2010.01.27
この記事のカテゴリー |  イベント |   カルチャー | 

BOME展『Psyche(プシューケー)』

美少女フィギュアが現代アート作品として成立する理由

展覧会エントランスの裏側に展示された
1/1スケールの『鬼娘』 
(C)うたたねひろゆき/コミックハウス。
『鬼娘』を正面から。テクスチャーの表現
など、通常の小さいサイズのフィギュア
(左)とは異なる表現が求められる。
80年代半ばからガレージキットファンの
間で人気を集めていたボーメ。 
単価3万円のフィギュア1000体が2時間
で完売することもあったという。
オリジナルのアクリルケースに収められた
展示作品。全てボーメ自身の手によって
作り出されたオリジナルばかりだ。
『鬼娘by藤島康介、2009』
最新モードの作品身体と金属の表現の
豊かさは来場者の溜め息を誘っていた。
藤島康介による「鬼娘」のデザイン画。
立体と合わせて鑑賞するとひときわ
造形力の凄さが伝わってくる。
トークイベントでのボーメ(左)。
小清水亜美(中)は実力派として評価を
集める若手声優。池澤春菜(右)は自ら
フィギュアも作るというマニアックな
知識を披露していた。
BOME(ボーメ) 1961年生まれ、大阪府出身。
美少女フィギュア造型師のトップランナー。
海洋堂が模型ショップだった頃の常連時代
いつも“帽子にメガネ”だったことが
名前の由来。
展覧会パンフレットには村上隆が寄稿。
コンテンポラリー・アートの視点から
ボーメとその作品を解説している。
 模型メーカー「株式会社 海洋堂」に所属する造形師であり、かつ世界のアートシーンでも高い評価を集める美少女フィギュア・アーティスト、 BOME(ボーメ)の個展“Psyche(プシューケー)”がカイカイキキ・ギャラリー(東京都港区)で開催された。本展の展示作品は全て ボーメ自らが造型し、彩色したオリジナル造型の作品ばかり。これをアーティスト・村上隆がキュレーティングしている。

  ボーメ村上隆のフィギュア作品「Project Ko2(プロジェクト・ココ)」に造形作家として参加したことから一挙にアートシーンでその名を知られるようになった。その後1998年1月3日〜2月13日に NYのギャラリー Feauture Inc.で初の個展を開催。さらに2001年6月21日〜11月4日にはカルティエ現代美術財団(パリ/フランス)主催のグループ展『un art populaire(ポピュラアート)』に招聘され作品が紹介された。2008年にはアーティストデビュー10周年を記念した集大成的な展覧会『ボーメ』を渋谷パルコファクトリーで開催で開催している。
 
  ボーメにとって今回開催された“プシューケー”は、アートギャラリーでの個展としてはNYでのデビューから3度目、国内では今回が初めてとなる。展示されたフィギュア作品はオリジナルのアート作品として販売されるので、販売価格の単位も通常の完成品フィギュアとは桁違い。販売の対象もアートコレクターだ。これまでも ボーメ村上隆キュレーションの展覧会などに参加してきたが、今回の個展では一人のアーティストとして国内アートマーケットに踏み出したことになる。

 海洋堂の宮脇修一専務は、今回の個展を次のように語ってくれた。
 「アートギャラリーでの個展といってもアートにすり寄った造型にしているわけではなく、展示している作品は、これまで ボーメくんが作ってきたスタンダードな美少女フィギュアばかりです。これまで我々は、食玩などいろいろな戦略でフィギュアを世の中に広めてきました。例えばチョコエッグでは、松村しのぶくんという造型師の作品を、1億個という単位で世の中に配りました。今回は逆に、ギャラリーで1点もののオリジナルだけをアート作品として売るという初めての試みです。フィギュア・アーティストとして、これまでにない新しい戦場に踏み出したんです」

  ボーメはこれまで自分自身を職人として位置づけてきたというが、今回の展覧会に向けた作品制作の中で変化もあったという。

「僕は自分がアーティストだという意識はないんです。『プロジェクトKO2』の時も職人として村上さんのお手伝いをするという気持ちでしたから。欧米ではマンガのキャラクターを立体にしたこと自体が斬新だったわけですが、日本ではすでに美少女フィギュアという分野が当たり前になっています。今度の展覧会がどう受け止めてもらえるのかは僕自身にもわかりません。ただ、これまではマスプロダクツとして成立するように、製造工程やコストを意識しながら作ってきましたが、今回そうした制約がなくなることで、こういうやり方もあるな、と改めて判ってきたところです」( ボーメ

 本展のハイライトとなる作品は、人気漫画家とのコラボレーション作。『サクラ大戦』などのゲームキャラクターのデザイナーとしても人気の高い藤島康介(『逮捕しちゃうぞ』『ああっ女神さまっ』)が「鬼娘」をテーマに書き下ろした原画をボーメが立体化した新作である。会場には完成品の立体作品に並んで藤島によるイラストが展示され、そこから立体を生み出すボーメの造型力の凄みがわかるようにプレゼンテーションされている。この「鬼娘」とは、ボーメが何度もバージョンを変えて作り続けてきたオリジナルのキャラクター。高橋留美子『うる星やつら』の“ラムちゃん”にルーツを持っているものだという。

 本展では「鬼娘」をテーマとした作品が実はもう1体、展示を予定されていた。やはり人気漫画家の大暮維人(おおぐれいと)(『天上天下』『エア・ギア』)とのコラボレーション作品である。しかし、立体として再現するためには造形上のハードルが高く、完成が間に合わなかったが、完成すればフィギュアの新しい表現を切り開く作品となる期待感は十分。現在製作中とのとこなので、公開を楽しみに待ちたい。

 会期中の12月12日(土)には 展覧会場でトークライブも開催された。MCはインターネットラジオのパーソナリティーとして活躍する"やまけん"こと山本健司氏、ゲストは人気声優の池澤春菜(アニメ『ふたりはプリキュア』『ケロロ軍曹』など)(http://haluna7.chu.jp/)と小清水亜美(『コードギアス 反逆のルルーシュ』『交響詩篇エウレカセブン』など)(http://columbia.jp/koshimizuami/)の2人である。当日会場に集まったのはオタク濃度の高そうなコアなファンたち。ゲストの2人もマニアックな一面を披露し、オタクジャンルの成熟ぶりがうかがえるトークとなっていた。

 会場に集まったファンからは、 ボーメに対するマニア層の高いリスペクトが感じられた。 ボーメは美少女フィギュア造型師として、オタク文化の創成期から活動してきたパイオニアなのである。海洋堂は、80年代からすでに社員造形師の名前を商品にクレジットし、作家として前面に出してきた特異なメーカーだ。すでに85〜86年頃には、造型師ボーメの名前はフィギュアの世界で広く認知され、「ワンダーフェスティバル」(海洋堂主催のガレージキットの即売イベント)でも圧倒的な販売力を誇ってきた。こうした作家の個の力を前面に出してきた海洋堂の姿勢が作家個人への憧れを生み出してきたのであり、さらにはアートの世界からも認められ、ジャンルの枠を越えた通行を可能にしてきたといえるだろう。

 宮脇専務は、フィギュア造型の現在と今後に向けてこう語る。
「恐竜とか動物とか、アカデミックなフィギュアは放っておいても皆が素晴らしいと言ってくれます。『国宝 阿修羅展』阿修羅像フィギュアなんかもそうです。
しかし ボーメくんが作るのは美少女フィギュアという、まだまだ世間では蔑まれているようなジャンルです。その素晴らしさがもっと一般の方にも伝わって、 ボーメくんがアーティストとして認知されることで、美少女フィギュア造形に携わる人たちが20年後もこの仕事を堂々とやっていけるようにしたいなと。模型屋から始めた僕にとっては、優れた造型師が作ったフィギュアを高い値段で売ることは当たり前という感覚なんです。たとえば、60代の社長がお気に入りのキャラクターのフィギュアをオフィスに飾るような時代がくれば面白いじゃないですか。そういう時代に少しでも近づいてほしいなと思いますね」

 確かに、間近に見るボーメ作品の“モノとしての力”は、予備知識のない一見さんにも伝わりうるほど強いものだ。“オタクの作った美少女フィギュアはアート作品になるのか?”という疑問があるのならば、まず ボーメ作品を生で見ることをお薦めする。オタクカルチャーの文脈に対する理解がある/なしに関わらず、ジャンルを超えた造形の凄味を感じることができるはずだ。


(文中敬称略) 

≪本橋康治(フリーライター)≫

展覧会情報

BOME展『Psyche(プシューケー)』 ※終了しました
詳細はこちら

■会期:12月11日(金)〜12月23日(水)
■時間:Open: 火-土 11:00-19:00 / Closed: 日、月
■会場:Kaikai Kiki Gallery
     東京都港区元麻布2-3-30 元麻布クレストビルB1F ※外階段からお入り下さい
■カイカイキキHP:http://www.kaikaikiki.co.jp/


Kaikai Kiki Gallery

大きな地図で見る


同じカテゴリの記事
同じキーワードの記事