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リアル脱出ゲーム
レポート
2010.02.02
この記事のカテゴリー |  カルチャー | 

リアル脱出ゲーム

オンラインで人気の「脱出ゲーム」をリアル体験できるイベント

受付でプレートが配布され、同じマーク
の4名が1チームとなる。
ゲーム考案者である加藤隆生さんの、
「皆さんはこの部屋に閉じこめられました」
というアナウンスでゲームがスタート!
会場内の至るところにちりばめられた
謎のメッセージ。
スタートの合図とともにいっせいに
散らばり、隠されたメッセージを
集めていく。
集められたアイテムをつなぎ合わせ、
暗号を解読。ヒントを導き出す。
A部屋、B部屋間のやり取りは手紙のみ。
ポストマンを介してヒントをやり取りする。
各々が自分の役割を見つけ自然に協力
しあっている様子が興味深い。
床に書かれた謎の文字を解読する参加者たち。
イベント終了後はカフェパーティーが
行われ、参加者はゲームのトリックを
再現するなどコミュニケーションを
深めていた。
閉ざされた空間のなかで暗号を解く等して、その密室からの脱出を図る、オンラインゲーム「脱出ゲーム」。これを現実に体験できる「リアル脱出ゲーム」が注目されている。「リアル脱出ゲーム」は、見知らぬ人同士3名程がチームを組み、閉じ込められた部屋のなかで、協力しながら暗号を探したり解いたりして、1時間程度の制限時間内に脱出を図る、というもの。今回は、横浜のBankART Studio NYK(バンカートスタジオエヌワイケー)で行われた『リアル脱出ゲーム 廃倉庫からの脱出』(2010年1月7日〜11日まで開催)を取材した。

「リアル脱出ゲーム」の企画制作を手掛けるのは、京都でフリーペーパー「SCRAP(スクラップ)」の発行やイベント制作を行う(株)SCRAP。主催は、音楽配信サイト「ototoy(オトトイ)」を運営する、(株)レコミュニ。両社は、音楽フェスティバル「ボロフェスタ」等も共同で手掛けており、もともと謎解きが好きなSCRAP代表・加藤隆生さんの「脱出ゲームをリアルに体験できたら面白いのではないか」という発想から「リアル脱出ゲーム」を立ち上げた。2007年に京都で参加者約150人という規模で立ち上げられ、大阪、そして東京に進出したこのゲームは、今回が東京開催4回目となる。

東京では、2009年2月に芸能花伝舎、2009年6月と11月にはIID世田谷ものづくり学校で開催された。例えば、2009年11月開催の『リアル脱出ゲーム 終わらない学級会からの脱出』では、1回定員30名×25公演だったが、今回はさらに規模を拡大して1回定員100名×26公演。場所も、BankART Studio NYK内の約1,100平米のフロアを使い、過去最大のスケールで開催された。

「毎回、参加者の9割をリピーターが占めていて、その方たちだけでチケットが売り切れる状態でした。初めての方にも解放したかったので、とにかくたくさんの方が来られるように、今回は規模を拡大しました。開催場所は、広くて無機質で場所自体にエネルギーがある空間を探しました」(株式会社レコミュニ チーフプロデューサー/飯田仁一郎さん)。

参加者層は、男女比が4:6、年齢層の幅は広いが特に20代半ばが多いそうだ。ゲーム好きだけではなく、音楽好き、サブカル好き、いろいろなものにアンテナを張っている早いもの好き等、さまざまな人が参加している。参加者がイベントを知るきっかけは、mixi(ミクシィ)Twitter(ツィッター)、口コミが中心。脱出成功率は毎回2〜3割で、脱出に失敗した人ほどリピート率が高いという。

開催期間中1月10・11日には、同会場内の別フロアでカフェパーティーが実施された。これはすでにイベントを終えた参加者が、ドリンクや軽食を囲みながらコミュニケーションを図れる場所。場内は「リアル脱出ゲーム」が生中継されたり、新たな謎が隠されていたりと、工夫が凝らされている。

「見知らぬ人とチームを組んで脱出するのですが、すごく仲良くなれる。それをイベントの1時間だけで終わらせるのは勿体ないし、ここから飲みに行ったり付き合ったりできるような仲になってもらいたいので、カフェパーティーの場を設けました。私たちが制作するイベントはどれも、スタッフもお客様も、カルチャーのなかで仲良くなれるものでありたいと思っています」(飯田さん)。

今回の『廃倉庫からの脱出』は、脱出するために、まだ誰も見たことがない扉を目指して、さまざまな暗号・謎を解いていく。参加者はAとBの2部屋に分けられ、1チームは3〜4名で、A部屋のチームと、B部屋のチームがペアになる仕組みだ。A部屋の謎を解くヒントはB部屋に、B部屋の謎を解くヒントはA部屋にあるので、それぞれの部屋にある暗号等を書面に書いて袋に入れ、郵便をポストマンに運んでもらって情報をやりとりする。協力をし合わなければ謎は解けないのだ。回答用紙に答えを書き、判別室で正答だと認められると、謎を解くためのアイテムが手渡される。55分の制限時間後に全員が別室に集められ、ここで初めて郵便交換をしたA部屋とB部屋の各チームが合流。力を合わせて、制限時間10分以内に最後の謎を解き、脱出を図るのだ。

実際に参加してみると、受付でチーム分けのマークが書かれた札を渡された時点から、未知の出来事に立ち向かうことに気分が高揚し、「仲間はどんな人か、どこにいるのか」という緊張を感じた。いざBの部屋に入り同じマークのメンバー2人と合流すると、初対面なのに、同じ目的に向かって頑張ろうという意思の疎通が図れたのも、日常にはない体験だった。会場内の柱や壁には、「b. ○△□☆はすべて一桁の数字」「h. ことばは全部で9つある」等の暗号が書かれている。これらをかき集め、A部屋に郵便を送ったり、暗号をもとに頭をひねったりするうちに、脱出を目指すことにどんどん没頭してしまう。また、たった数分前に出会った人と「脱出」という目的だけで会話が弾み、いっしょに悩んだり喜んだり、同じ気持ちを共有できる充実感が、「リアル脱出ゲーム」の醍醐味だと感じた。

参加者にインタビューを行ったところ、「謎を解く発想への感動と、全く知らない人と協力して何かに取組むというのが、普段にはないことなのでおもしろい」(36歳・男性/フリーター)、「今日は友達4人で来たがチームは別々。見知らぬ人と協力してゲームをしていくのが楽しかった」(25歳・女性/セラピスト)といった感想が聞けた。

見知らぬ人とチームを組んで、困難な課題をクリアするには、意思を伝えるにもより丁寧なコミュニケーションが必要となる。バーチャルなコミュニケーションが発展したり、職場でもチームより個人成果が重要視されたり、丁寧なコミュニケーションを重ねて同じ目的に向かって協力する場所が少なくなっている現代。異質にも見える「リアル脱出ゲーム」は、現代人が求める“人と繋がっている実感”を満たしてくれる数少ない場所の1つなのかもしれない。

次回は、2010年4月28日〜5月2日まで、お台場の東京カルチャーカルチャーで開催されるそうだ。

[取材・文/緒方麻希子(フリーライター/エディター)+ACROSS編集]


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