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東京にしがわ大学
レポート
2010.09.01
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東京にしがわ大学

東京・多摩地域30市町村をフィールドに、生涯学習を通じたコミュニティづくりを促進

オリエンテーションには多摩地区
在住者を中心に48名が参加した。
学長の酒村なをさん(27)。
「地元が心地良い町であってほしい、
人が集まって信頼関係が築ける場所を
作りたいという思いから、にしがわ
大学を開校しました」。
東京都の西側にある30市町村を
かたどったパンフレット。
にしがわ30市町村に点在する場所を
“教室”にしたらどんな授業ができ
るのかをテーマに、フィールドワーク
を行った。
三鷹を担当したチームは、太宰治と
森鴎外の墓がある禅林寺を訪問。
偶然に、お参りしていた太宰治の
ご子孫にインタビューを行った。
フィールドワーク終了後は、街から
持ち帰った成果を共有する報告会を
開催。
なごやかなムードでプレゼンがスタート。
参加者が思い思いに企画したユニークな
授業が提案された。
報告会終了後はビールで乾杯!
参加者同士の交流会を行った。
 弊誌で以前取上げた、一般向けに地域密着型の新しい教育・コミュニティづくりを提案する特定非営利活動法人「シブヤ大学」(東京都渋谷区)。2006年9月に開校して以来、「札幌オオドオリ大学」や「京都カラスマ大学」「大ナゴヤ大学」など、全国各地に姉妹校が設立されている。そのネットワークの1つである「東京にしがわ大学」(東京都多摩地域)が、2010年10月の開校式イベントに向けて準備中だ。都内2校目としてどのような活動をしていくのかを取材した。

 東京にしがわ大学(特定非営利活動法人申請準備中)は、シブヤ大学同様に学び舎となる建物は持たない。八王子市、あきる野市、立川市、武蔵野市などの“東京の西側”である多摩地域30市町村をキャンパスに見立て、誰もが参加できるユニークな生涯学習を通じた、新しいコミュニティづくりと文化の醸成・発信の促進をサポートしていく。

 学長を務めるのは、弱冠27歳の酒村なをさん。酒村さんは立川市内の元米軍ハウスが立ち並ぶ地域で生まれ育ち、小学校から短大まですべて多摩地域の学校に通ったそうだ。元米軍ハウスは、長屋のように周囲の家との垣根がなく、それぞれの家庭の生活感を感じられる、オープンで程良い距離が保たれたコミュニティがあったという。

  「成長過程において、友人が人間関係において壁をつくることに疑問を感じたり、立川の町が商店街に代わって万人受けする商業施設ばかりが並ぶようになったことに違和感をおぼえたりすることがありました。心地良い町であってほしい、人が集まりお互いに信頼関係が築ける場所をつくりたいという思いをずっと持っていました」(酒村さん)。

  酒村さんは、団体職員として働きながら(10年3月退職)、友人とギャラリーカフェでの音楽イベントを2008年から行っていたが、2009年3月にシブヤ大学の姉妹校構想を知り、自身のイベント以上に広い活動ができると思い、学長に立候補したそうだ。

 授業は毎月第2土曜日に開催予定。講義ではなく、先生と生徒が一体となれる参加型や体験型の授業を通じて、多摩地域の魅力を発見し共有するそうだ。現在は職員が授業企画をしているが、今後は授業コーディネーター(授業の企画・運営者)を増やし、30市町村の個性を活かした授業を企画していく。同じ都内のシブヤ大学との違いは、「例えば吉祥寺のようなカルチャー的なエリア、檜原村や奥多摩町のように自然あふれるエリアというように、30市町村それぞれに個性があるので授業の素材が際限なくあります。また、シブヤ大学は都内在勤の方が主な対象になりますが、西側は地域に根差して生活している方が多い。生活に特化した授業ができますし、当大学が生活の一部に入ることも可能だと思います」(酒村さん)。

 開校に向けた取組みでは、ラジオ・FMたちかわの番組「東京ウェッサイ」内に「みんなでつくる東京にしがわ大学」というミニコーナーが昨年10月からスタートした。今年1月31日には「東京にしがわミーティング20100130」を開催。国営昭和記念公園内施設で、西側で医療やデザイナー、町づくりなどの独自の活動をする50名を招待し、多摩地域の魅力と可能性について意見交換をした。

 6月12日には、同大学初のイベントであるオープンキャンパス「教室をさがせ!」が開催された。内容は、参加者がランダムに2名1組のペアになり、30市町村いずれかの担当エリアに出向く。町の人に話を聞いたり、散策したりと行動し、その町ならではの魅力が反映された授業素材=教室になりそうな場所・人・ものを探して撮影するというものだ。参加者が撮影した画像は公式サイト内に随時公開したり、ツイッターの公式アカウントで参加者同士の状況を知れたりとITツールも活用し、フィールドワーク後は報告交流会をした。フィールドワークを企画したのは、デザイントープコンペティションなど数々の賞歴を持ち、武蔵野市を拠点に活動するプロダクトデザインユニット「ミリメーター」。

 参加者は48名で男女比は6:4、8割が多摩地域からの参加。全体の、約半数が20代、3割を30代が占めた。公式サイトやTwitter(ツイッター)の公式アカウントで情報を得て参加した人がほとんどだそうだ。参加者からは「普段は知り合えないような方に会えて、刺激的だった」「知らない人と町を歩くのは不安だったが、充実した楽しい時間だった」などの感想が寄せられた。また、「授業コーディネーターになりたい」や新たな企画案、今回の問題点などが寄せられたことからも、参加者の地域づくりへのモチベーションの高さを窺えたという。

 「地域が好きで学ぶ意欲が土台にありますが、それ以上に出会いやコミュニケーション、職場や学校以外での人とのつながりが求められていたのではないかと思います。公式サイト上で学生登録を受付けていますが、開校していないにもかかわらず、2カ月間で20〜30代を中心に200名以上の方が登録してくださいました。人とつながることができる当大学が、欲してもらえているのを実感します」(酒村さん)

 ITツールの普及や核家族化、大型ショッピングセンターの台頭による商店街の閉鎖などにより、生身のコミュニケーションを図れる場が減っている現代。同大学や弊誌で取り上げたリクルートエージェント社「ちゑや」のように、同じ目的に向けて一体となれる “ライブ感ある学び”をテーマにしたサードプレイスが、世代や立場にとらわれないコミュニティづくりに力を発揮しそうだ。

 開校までの7〜9月の各月にはプレ授業を開催する。
次回のプレ授業は9月11日(土)に立川市(立川市女性総合センターアイム5階 第3学習室)で開催する。『3人の女性編集者・ライターと考える「街を書く愉しみ方」』と題し、自分が暮らす街をフィールドに、編集や執筆の仕事をしている3人の女性の話をきっかけに、自分の暮らす街のことを書く愉しみ方について、参加者それぞれが、あれこれと話合い、考える 授業を行う。

 また10月9日(土)にはパルテノン多摩水上ステージ(多摩市)で開校式イベント「東京にしがわ大学 みんなで開校式 〜にしがわ先生コレクション100〜」を行う。まちの「先生」100人が、まるで【東京ガールズコレクション】のように、舞台上を仲間や当スタッフと一緒にウォーキングし練り歩く、ファッションショーのような演出で観覧参加者へ一挙にプレゼンテーションする(観覧自由)。


〔取材・文:緒方麻希子(フリーライター)、撮影・
オヤビン佐藤


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