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NEO GREEN(ネオグリーン)
レポート
2011.05.27
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NEO GREEN(ネオグリーン)

コンセプトは「ながく付き合える」こと。植栽に特化したグリーンショップ

場所は渋谷区神南のNHKの前。
代々木公園と隣接する立地である。
売れ筋は小さな盆栽。1,000円台〜と
手頃な価格で揃う。
プラ鉢ではなく、陶器の植木鉢に
植えた状態で販売。購入後、そのまま
部屋に置け、インテリアとマッチする
ようにと配慮している。
セレクトの基準は形がおもしろいこと。
ありふれた品種でも、ユニークな形の
ものを集めている。
こちらは12万円を超える盆栽。
長く付き合えることから、比較的高額の
ものも実際に売れているという。
桜やあじさいなど季節感のある鉢植えが
人気だそうだ。
葉っぱをプリントしたリーフレター。
全6型で\1,365〜\1,680。
こちらが「みどりと気付きの書棚」。
植物を基軸にした小説や哲学書、美術書
などが並ぶ。
本のセレクトはブックディレクターで
BACH(バッハ)代表の幅 允孝さんが担当。

 渋谷駅からNHK方面に井の頭通りを進むと突如として現れる、小さな森のような店。株式会社プランツピットが運営するグリーンショップの直営店、「NEO GREEN(ネオグリーン)」だ。代表取締役で同店の店長・白田仁さんは、アパレル出身という、花卉業界では一風変わった経歴の持ち主だ。

 

 「グリーンを好きになったのは、実家で同居していた祖父の影響です。植物好きで、大工だった祖父が、家の屋上庭園に花壇を造り、毎日手入れをしていました。でも僕が小学6年生の時に亡くなって、手入れする人がいなくなったので、その代わりを買って出たんです。その頃から花や野菜を育てることに魅了されていきました」(白田さん)。

 

 家業が縫製工場だったこともあり、高校卒業後は服飾の専門学校へ進学し、卒業後はアパレル会社に入社した白田さん。

 

 「年齢を重ねるごとに、毎年毎シーズン、トレンドをバンバン生み出すことに疑問を感じるようになっていったんです。消費者をだましているわけではなくとも、いたずらに購入意欲をあおって“買わせている”のでは、と・・・。自分自身が、そこにリアリティを感じられなくなっていってしまったんです」

 

 そこで一発奮起して、元来好きだった花卉業界の道へ。2007年、現在の場所にショップをオープンした。切り花は置かず、植栽(鉢物)のみに特化した。

 

 「そもそも切り花は『すぐに枯れてしまう=死ぬことが前提』じゃないですか。トレンドが生まれては廃れていくような、アパレル業界にいた頃と同じ違和感を覚えてしまうんです。だけど鉢物は、購入後、『生かすことが前提』。きちんと育てれば、何十年でも長くつきあうことができる。リピーターのサイクルはロングスパンになるのでビジネス面では不利かもしれませんが、自分はそういうことがやりたかったんです」(白田さん)。

 

 当時のターゲットは、インテリアにこだわりがあり、金銭的にやや余裕のある30代以上の人。渋谷界隈の土地勘があった白田さんは、お屋敷街である松濤エリア近くに店を構えることに決めた。目の前に代々木公園の緑が見えることが、一番の決め手だったそうだ。内装はアンティークや古道具を取り入れ、自宅で使っていた古いテーブルなども配した。

 

 品揃えは観葉植物、盆栽、サボテン。日本の住宅にマッチする小ぶりなサイズが中心だ。仕入れは市場や盆栽問屋、サボテンは生産者のもとへ買い付けにいく。セレクトの基準は、個体として面白いもの。変わった品種というよりは、ありふれた品種だけど形が変わっているものを集めているそうだ。また、街の花屋のようにプラ鉢で売るのではなく、植木鉢に植えた状態で販売し、購入後、そのまま部屋にポンと置けることを重視。これは、絵を飾ったりするように『間』を演出するという生活文化に興味があった白田さん自身のニーズでもあったという。

 

 価格帯は1,000円台から4万円。なかには12万円を超える盆栽もあるが、高額のものも実際に売れるという。最近では8万円の盆栽を、30代の夫婦が購入していったとか。

 

 「とはいえ若い世代は、洋服には頑張って高いお金を出しても、グリーンにお金をかけようと思う人は少ないですよね。そんな人たちにも、グリーンの良さを知ってもらいたい。若い人たちでもちょっと頑張れば購入できるくらいの手軽な価格帯を多く揃えています」(白田さん)。

 

 現在は渋谷の直営店と、丸の内ブリックスクエア内にある「PASS THE BATON」(株式会社スマイルズ/代表・遠山正道)のショップインショップの2店舗。客層は直営店では近隣の住民、丸の内は近くに勤める会社員などが中心だが、山梨や栃木などの遠方からの来店客も多いという。

 

 そんな同店で今、ヒットしつつある商品が「リーフレター」だ。樹木の葉に手紙を書いていたことが「葉書」の由来だったように、葉っぱをかたどった便せんに手紙を書き、封筒型に折り畳んで切手を貼ればポストに投函できるというもの。もともとショップカードやDMなど、本物の葉っぱをモチーフにした販促物を使用していたが、その制作を担当していたデザイナーから「商品化してみては?」と提案されたことがきっかけだそうだ。2011年のDESIGN TIDE TOKYOに出品したところ非常に好評で、現在は、森美術館原美術館のミュージアムショップや、ワタリウム美術館の「オン・サンデーズ」、IDEE(イデー)CIBONE(シボネ)などのインテリアショップで販売されている。3枚入りで1,365円、5枚入りで1,650円。全6種類。主に女性客に好評だという。

 

 また同店独自の取り組みとして面白いのが、店内に「みどりと気付きの書棚」と題した書棚があることだ。植物を基軸にした小説や哲学書、美術書などが並び、すべて購入可能。本のセレクトは、ブックディレクターでBACH(バッハ)代表の幅 允孝さんが担当。同店のファンだった幅さんに、こういった取り組みが出来ないか打診し、実現したという。

 

 「高層マンションで育った子どもたちは、この先いったいどうなっていくのだろうと思うんです。自然に対する直感力が衰えていってしまうのではないか、と。そんな子どもの教育にも役立てるような、新しいタイプの業態になっていけたら」(白田さん)。

 

 ここのところ、30代以上を中心に、めまぐるしく変わるトレンドのサイクルをあえて外れ、自分にとっての「定番」を求める消費マインドが拡大している。植栽に特化し、長くつきあうことができるという同店のコンセプトはそういったニーズにもマッチしている。さらにこういった新たな取り組みに対し、「きっと花卉業界一本で生きてこなかったからだと思う」と、白田さんは自身の経歴を振り返る。アパレルにいたからこそのセンスをミックスし、いわゆる街の花屋のイメージを超越。さらに他ジャンルのクリエイターたちとの交流、協業によって作り上げていく「クリエイティブ感」こそが同店の魅力と言えるだろう。今後のさらなる展開に期待したい。


[取材・文/皆川夕美(フリーライター)+『ACROSS』編集]

NEO GREEN(ネオグリーン)

東京都渋谷区神山町1番5号


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