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軍艦マンション
レポート
2011.06.15
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軍艦マンション

1970年築の元祖デザイナーズマンションがリノベーション。
シェアハウス・シェアSOHO・オフィスに

軍艦マンションの特徴はなんといっても
このでこぼこの外観。1960〜70年代に
展開されたメタボリズムという建築運動
を代表するデザイン。
10-14Fはシェアハウスのフロア。
総部屋数39戸で、室内にはベット・机・
椅子・冷蔵庫等の家具、インターネット
環境も整えられている。
9Fはシェアハウス専用の共有フロア。
みんなが集まれるリビングダイニング
スペースやPCルーム、シアタールーム
を完備。
6-8FはシェアSOHOのフロア。
1フロアに8区画の個室が設けられている。
軍艦マンションのアイコンのひとつ
である丸いガラス窓。
エレベーターホール。過剰に手を加えて
いないため随所に昭和の香りが残る。
軍艦マンションならではの個性的な
間取りも魅力。
シルバーに塗られた躯体、横起きされた
給水塔、ユニット化された各室など、
軍艦をイメージしたデザイン。
内覧会を兼ねた再出航イベント
「GUNKAN crossing」には、予想を
大きく上回る約3,000人もの人々が
訪れた。

 東京都新宿区大久保の地下鉄・東新宿駅から歩いて3分ほどの職安通り沿いに、独創的なデザインで建築ファンの間で知られる第3スカイビル、通称「軍艦マンション」がある。

その名の通り軍艦をモチーフにした同ビルは、1970年に竣工されたもので、 陸軍船舶兵だった経歴を持つ建築家、渡邊洋治さん(19231983年)の代表作の1つである。シルバーに塗られた外壁、屋上に横置きにされている給水塔、ユニット化された各室などが特徴だ。

 

 地上14階、地下1階建てで、事務所と共同住宅として活用されていた同物件。近年は入居者を募集しておらず、一時は解体も検討されていたが、ビルのオーナーチェンジに伴い、新たなスタートを切ることになった。リノベーションが図られ、シェアハウス・シェアSOHO・オフィスで構成するビルへと生まれ変わり、4月中旬から入居が開始された。

 

 リノベーションの企画をサポートしたのは、オフィスデザインや空間デザインなどを受託する、株式会社デザインワークスプロジェクト2010年初夏頃から同ビルの企画立案、解体工事がスタートしたという。

 

 当初は1棟全体をシェアハウスにする計画もあったが、ターゲットを分散させて建物を活性化させるために3ブロック構成にした。コンセプトは、入居者同士のコミュニケーションが成立する建物。

 

 「現代は次から次へと情報が入ってきますが、そこにリアルな感触がなければいけない、リアルなコミュニケーションが大切で必要、ということに誰もが気づいていると思います。取っ掛かりのない人とコミュニケーションを取ることには抵抗があります。しかし、入居者の方たちは、突出したデザインの軍艦マンションに興味を持っている、という共通点がある方たち。そこを“シェア”して提案することで、自然とコミュニケーションが生まれるはずです」(デザインワークスプロジェクト/荒井昌岳さん)

 

 軍艦マンションの独特なデザインが持つ集客ポテンシャルは明確だったので、リノベーションはできるだけビジュアルを変えないように配慮し、構造上必要な最低限の塗装や工事を施した。各室内は現代ニーズに沿うように、ユニット設計をし直したそうだ。どのフロアもリノベーションし過ぎないようにし、入居者が自らDIYできるような部分も残したという。

 

 1014階は総部屋数39室のシェアハウスゾーン。女性専用フロアもある。各部屋は16平米ほどで、各室にはベッドや机、イス、冷蔵庫などの家具、ネット環境も整備した。9階の共有フロアにはオープンキッチン、ダイニング、テレビなどを設置したラウンジスペースがあり、入居者間のコミュニティスペースとしての活用を促す。68階はシェアSOHOゾーン。1フロアに8区画のユニットがあり、1区画約15平米。徹夜作業などに配慮し、7階にはシャワーが設置されている。35階のオフィスゾーンは全6区画あり、各区画は約129平米。うち5区画はスケルトン仕上げなので、自由にオフィス構築が可能だ。2階はアトリエ、1階はエントランスと、オフィス・SOHO入居者が活用可能なギャラリー兼ミーティングルーム、地下1階は自転車置き場だ。一カ月あたりの賃料は、シェアハウス85,000円(15.53平米)〜、シェアSOHO89,250円(15.20平米)〜、オフィス409,500円(128.93平米)。

 

 2011222日〜27日には内覧会を兼ねた再出航イベント「GUNKAN crossing」を実施。音楽や映像などのアーティスト35組が、各室での展示やライブペインティングなどを披露した。当初、1,000人ほどの来客を予想していたが、6日間でなんと約3,000人が来場したそうだ。来場者は30歳前後を中心に、学生、親子連れ、年配者など幅広かったという。内覧をイベント形式にしたのは、

「ビルが40年も存在しているなか、入ったことがある人は一握り。ビルは今後も継続していますが、完全にまっさらな状態は建築直後とこの再出航のときだけです。不動産は独占するものではありませんし、人が居ないと意味がありません。入居を考える方も、ビルのなかの人の流れを見たいはず。また、たくさんの方に解放して記憶してほしかったですし、こういった機会を通じてブランディングも図れると思いました」(荒井さん)。

イベント参加のきっかけはさまざまだが、参加者間の繋がりも生まれていたそうだ。

 

 想定ターゲットはクリエーター系。シェアハウスは20代後半〜30代半ば、SOHOは起業間もない企業や従業員45名程度の企業、オフィスは従業員1020名規模の企業または5組の会社がオフィスシェアをすること、が現実的な利用者層になると予想しているそうだ。実際には、クリエーターからビジネスパーソンまで幅広い層から入居の問合せがある。入居希望者は年齢や男女、職種などはさまざまだが、人と繋がりたい意識の高さを感じるという。

  

 シェアといえども、人と人との距離間が程良く保てる同ビル。異業種とのネットワークを欲するクリエーター層のニーズや、ネットを介さないコミュニケーションの取りにくさ、経済不安定・晩婚化などの世相を、うまく捉えた同ビルが支持されているのは頷ける。建物自体にコミュニケーション機能を持たせられるかどうかは、今後の不動産売買・賃貸の成功のカギになるだろう。

 

 広さに対して賃料はやや高めだが、二度と建てることができない唯一無二の物件に居を構えることができるのは、大きな価値である。軍艦マンションを愛する人たちによる、創造的なコミュニティが形成される場となるだろう。

 

取材・文 緒方麻希子(フリーライター)


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