“cococi” Coworking Space
“ココチ”コワーキング・スペース
レポート
2011.09.02
ライフスタイル|LIFESTYLE

“cococi” Coworking Space
“ココチ”コワーキング・スペース

“ここちよく働き、ここちよく暮らす”
新しい働き方を実現するための「場」の誕生

レセプションに集まった、育児をしながらもプロとして活躍するコワーキング仲間の女性たち
コワーキング・スペース“cococi”は今始まったばかり。
子育て支援の合同会社を立ち上げるなど、地域活動の実践者として駒澤大学で講師を務めるなど、地域に根ざした活動をしてきた発起人の市川望美さん。
大震災以降、新しいムーブメントや事業が続々と生まれている中、急速に広まっているのが「コワーキングスペース」である。

コワーキング=Coworkingは、フリーランスなどで働く人々がオフィス空間を共有し、参加者同士がアイデアや情報を交換しながら相乗効果を生み出そうとする働き方のことである。自宅開業のSOHO、事務所を持たないバーチャルオフィス、会社員の在宅勤務、どこでも仕事をするノマドワークなどの新しいワークスタイルが、さらに発展したかたちといえよう。レンタルオフィスのような単なる場所貸しでなく、入居者同士のコミュニュケーションが重視されるコワーキングは、今のこの日本の状況で、新しいものが生まれる場所となる予感がする。

この夏、都下仙川にオープンした「cococi」(ココチ)は、“ライフステージに合わせ、ワークもライフも犠牲にしないで、新しいはたらきかたを実現するための場”と銘打ったコワーキングスペースである。子育て支援活動などを行ってきた女性たちが、子どもがいる暮らしの中で、地域の中でゆるやかなペースで働くための拠点として開設した。
“ここちよくはたらき、ここちよく暮らす”をあらわす名前の通り、商店街のど真ん中、和室やダイニングキッチンがある普通の住宅を改装したスペースは、生活感があふれ、暮らしと仕事が密着した印象である。オープニングイベントでは、子どもが走り回り、赤ちゃんを抱っこした女性たちであふれ、都心にあるオフィスとは様相が違う。

しかし、事業内容のプレゼンテーションを聞くと、確固たるビジネスプランがあった。
発起人の市川望美さんは、子育て支援の合同会社を立ち上げるなど、地域活動の実践者として駒澤大学で講師を務めるなど、これまで地域に根ざした活動をしてきた。それをさらに推進するため、内閣府の地域社会雇用創造事業の一環である「iSB公共未来塾」に通い、ビジネスプランコンペで起業支援対象者として選抜され、cocotiを含むの事業をスタートさせることになった。
事業は、非営利型株式会社(NPC)Polarisと、NPO法人Connecting Dotsの二本立て。NPOで、育児期の働き方、暮らし方の情報収集や支援、マーケティングを行い、それをNPCで実践、コワーキングスペースの運営や、地域の仕事の受注などの事業を行う、という計画である。cocociも「〈地産地消のはたらきかた〉地域労働市場の創出・地域女性の多様なはたらきかたを支える基盤とひとが育つ仕組み作り」という事業プランの一環であり、スペースである以上に育児中の女性の新しい働き方を研究し、仕事を生み出していく拠点、ということであろう。

終日や週に2〜3日の入居、時間貸しのドロップイン、所属事務所契約など、利用方法は他のコワーキングスペースと同様だが、子ども、地域がキーワードとなるためか、「朝jelly!」「MAMAjelly!」などのアイデア会議やコワーク体験、フリーランスワーカーのマネジメント、クライアントとの価格交渉や目標設定支援などのほか、「セタガヤ庶務部」で個人事業主の事務委託、事業相談、講座なども行うという。会議室の貸出しでは、会議の記録などファシリティターの役目もできるよう、人材育成もしていゆきたいとのことだ。

「なぜそんなにお母さんたちを優遇しなければならないのかという声がある。そうではなくて小さくても素敵な事業や活動をしている人たちがたくさんいることを知ってほしい」という市川さん。育児期は価値観が刷新され、今までと違う視点がでてくる。ビジネススキルやマナーとは異なる、人との縁の結び方、コミュニケーションスキルを身につけているし、さまざまな矛盾やギャップも感じている、とも。また0〜2歳児を持つ母親の8割が在宅育児、7割が30代というデータが示す通り、働いて10年、15年の人材が地域にたくさんいる。「私たちは弱いから支援してください、ではなく、私たちももっとできるし、やりたい」というのは、多くの子育て期の女性の声を代弁しているといえよう。

新会社の取締役や理事には、乳幼児を抱える女性が多い。会計士、webプランナー、デザイナー、会社員などワーキングマザーもいれば、「こういうところなら働けるかもしれない」と、一歩を踏み出した主婦も。「仕事のプロだけでなく、プロ意識を持った普通の人たちがこれからの大きな担い手になってくれるはず」(市川さん)というように、子どもと暮らしと仕事のバランスを最も考えるライフステージの女性から、ビジネスもコワーキングスペースも、また新たな展開が開けてきそうである。

[取材・文:神谷巻尾(フリーエディター)]

cococi

182-0002
東京都調布市仙川町1-16-4 栗本ビル3
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