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waitingroom(ウェイティングルーム)
レポート
2011.11.10
この記事のカテゴリー |  カルチャー | 

waitingroom(ウェイティングルーム)

アート関係者からビギナーまでが集う、今注目のアート・コミュニティ・スポット@恵比寿

恵比寿一丁目の交差点裏手の路地を入ると、「渋谷百貨ビル」と書かれた築40年の古いビルが見えてくる。青い階段の付いた隣りの建物が目印。
こちらがwaitingroomという名前の由来からも来ている歓談スペース。
この日は森田晶子個展『カミナリの花』を開催。移転前の三軒茶屋のスペースから数えて、waitingroomでは2度目の展示となる。展示タイトル横には、作家本人によるデッサンが直に施されている。
20平米のギャラリー空間は、展示と歓談スペースが壁で仕切られている。小さいスペースをうまく生かしたレイアウト。
恵比寿界隈のアートギャラリー関係者を集めた交流会、通称1SS(ワンエスエス)での1コマ。ゲストを迎えてミニトークショーを行うこともあるのだとか。
若手クリエイター廣田理恵のアクセサリーは、ビスケットやクッキーなどのお菓子をしっけさせて加工したもの。左よりお菓子のブローチ類は1,500〜5,000円、カラフルなチョコのネックレス類は30,000円〜となる。
取扱い作家の絵画や版画などの小作品を販売(6,000円〜)。またポストカード(150円〜)やZINE(500円〜)もリーズナブルな価格帯となっている。
ディレクターの山内真さん(左)と芦川朋子さん(右)。
 東京・恵比寿と代官山のちょうど中間地点、恵比寿1丁目の交差点裏手に、ギャラリー「waitingroom(ウェイティングルーム)」が2010年11月にオープンした。もともと、「自宅兼ギャラリー」として、業界内でも注目を集めていた同名のギャラリーが移転オープンしたもので、今回はギャラリー単体での運営となる。オーナーは、公私共にパートナーである山内真さんと芦川朋子さん(ともに33歳)だ。
 
 2人の出会いは、ニューヨーク。芦川さんは日本の大学を中退後、1999年にアメリカ・ニューヨーク大学に進学。山内さんは同時期に日本の大学を卒業した後、ニューヨーク市立大学・同大学院へ進み、美術史・博物館学を学んでいた。
 
 芦川さんは当時から学外で友人と展覧会を企画したり、現地の老舗ギャラリーでインターンをするなど精力的に活動。卒業後は、ブルックリンにある「AG Gallery(エージーギャラリー)」でメインキュレーターを任されるほどに。一方、山内さんはもともとストリートアートが好きで、ストリートカルチャー誌の編集に参加したり、街中に作品を貼りつけるなど、美術史を勉強しつつアーティスト活動も行っていた。
 
 そんななか当時カルチャー誌「TOKION(トキオン)」のNYオフィスに務めていた友人が企画したグループ展に参加する機会があり、2人は出会うこととなった。その後、日本に活動の拠点を移すべく帰国。2009年2月、「waitingroom(ウェイティングルーム)」を三軒茶屋の自宅の一角にオープンした。
 
  「当時、NYに『CAVE (ケイブ)』という、アーティストスペースがあったんです。アーティストが泊まり込みで制作し、作品が完成したらそのまま週末だけギャラリーとして解放するという、面白い場所でした。ほかにも、自宅なのにライブを開いたりとか、ブルックリンにはそういう場所がたくさんありました。そんなNYのD.I.Y.カルチャーの影響を受け、帰国後はごく自然に、『じゃあ、ウチからやる?』みたいな感じで、自宅に併設したギャラリーを始めたんです」(芦川さん) 
 
 当時、日本ではこういったスタイルのギャラリーが珍しかったため、口コミで情報が広がり客足は伸びたという。同じマンションのテナントの多くが事務所だったこともあり、人がたくさん来ても大きなクレームにはならなかったそうだが、ニューヨークのブルックリンにある「Cinders Gallery(シンダーズギャラリー)」の作家17名のグループ展のオープニングイベントで、延べ約100人を集客した際には「さすがに自宅でやっていくにはそろそろ限界かも」と、移転を考えるようになったそうだ。
 
 「そんなとき、たまたまここが空室になると聞いたんです。もともとギャラリースペースで、オーナーとも仲が良く何度か足を運んでいたこともあり即決しました」(山内さん)
 
 移転先は、大通りから一本入った築約40年の古いビルの3階という立地。自宅からギャラリーが独立した形でのオープンとなったが、ソファを置いたり、お客様にはお茶を出したりなど、自宅兼ギャラリー時代のアットホームな雰囲気をそのまま残している。約20平米の一室は、元のギャラリーの内装をそのまま活かした白が貴重の空間だ。現在、山内さんはWEB制作会社に務め、芦川さんはフリーランスのコーディネーターとしても活動するなど、ギャラリーとは別の仕事もあるため、営業は月・金・土曜の週3日のみ。金・土曜は13時から19時までだが、月曜日は17時から23時までと夜の時間帯に営業をしている。
 
 「通常のギャラリーだと、平日19時頃には閉まってしまうので、会社務めの人は来られないことが多いんです。それでどうしても週末にお客さんが集中してしまい、ゆっくり作品を見られない状況がありました。また、一般的にギャラリーは月曜休館が多いため、関係者は他のギャラリーに行けないことも多い。それで、他とは違うユニークな時間と曜日で営業したらどうかと考えました。今では、月曜日は土曜日と並んでたくさんのお客さまがいらしています。」(芦川さん)
 
 客層は、20代〜40代がメイン。アートやギャラリー関係者の他に、ギャラリーにまだあまり慣れていない若い世代も徐々に増えてきているという。
 
 「長い方で3時間くらい滞在される方もいますが、アートの話をすることもあれば、普通に世間話で盛り上がることもありますよ」(芦川さん)
 
 また物販コーナーを設置し、ポストカード(150円〜)やZINE(500円〜)、絵画や版画などの小作品(6,000円〜)も販売。今まで本格的に絵を買ったことのない人でも「これくらいだったら買える」と思えるラインナップだ。そこを間口として、「徐々に本格的に絵を買うようになり、最終的にはコレクターにまで育ってもらえたら」と芦川さんは話す。実際に、「ここで初めて絵を買った」というお客さんもいるそうだ。
 
 現在、作品を扱う作家は7名。2人で相談しながら決めており、昔から付き合いのあったり足で見つけて新しく声をかけた作家など、国内の作家がメイン。なかには海外の作家も取り扱ったことがある。作家からはいっさい出展料を取らず、作品の売り上げの一部がギャラリーの収益としている。
 
 「そもそも出展料を取るのは日本独特の文化。海外では出展料を取るギャラリーはほとんどありません。作家のセレクトや、企画内容でそのギャラリーの個性が出てくるので、自分たちのギャラリーのブランディングを真剣に考えるようにもなりますね。」(芦川さん)
 
 また、2人はギャラリーの運営以外の活動にも精力的だ。そのひとつが恵比寿界隈のアートギャラリー関係者を集めた交流会「1st Saturday Salon(通称1SS/ワンエスエス)」である。もともとギャラリーが多い恵比寿地区。これまであまりギャラリー同士の横のつながりがなかったという。そこで去年12月、広尾のギャラリー「TOKIO OUT of PLACE(トキオアウトオブプレイス)」のディレクター鈴木氏と共に、NADiff(ナディッフ)4階のアートカフェ「MAGIC ROOM???(マジックルーム)」で、恵比寿界隈のアート関係者を集めて交流会を開いた。
 
 「恵比寿・広尾界隈にある思いつく限りのギャラリーやショップ、約30社50名程度に声をかけたら、全員参加してくれたんです。『みんな同じようにつながりたいと思っていたんだ、これは需要があるな』と思いました。その後も引き続き、月イチのサロンとして1SSを開いています」(芦川さん)
 
 また、恵比寿のクリエイターグループ「START EBISU(スタートエビス)」と恵比寿界隈にある33のアートスポットをMAPにまとめた「ART WALK MAP 2011(アートウォークマップ2011)」を制作。他にもルミネ新宿店で開催されたアートイベント「ルミネ・ミーツ・アート」では、中目黒のギャラリー&ショップ「sakumotto(サクモット)」との共同プロデュースで、アートショップ「SUPER arts MARKET」を企画した。
 
 「うちは業界的には駆け出しです。待合室という意味を持つ『waitingroom』で、若手アーティストが様々な出会いを経て世の中に出ていくまでをサポートしていきたいです。それはいわゆる『ギャラリー』と『作家』の関係ではなく、家族みたいに、二人三脚で作家と一緒に成長して行けたらいいですね」(山内さん)
 
 月曜日の夜、同ギャラリーを訪れてみると、アートスペース「TRAUMARIS(トラウマリス)」のアートプロデューサー住吉智恵さんをはじめ、恵比寿界隈で働くデザイナー、また同ギャラリーで取り扱われている作家の下平晃道さんなど5〜6人が、週末「TRAUMARIS」で行われたイベントについて、アート談議に盛り上がっていた。聞けば、ほとんど全員がたまたま立ち寄ったというから、まさに2人のもくろみ通り、アートのコミュニティ・サロンとして定着し始めているようだ。
 
[取材・文/皆川夕美(フリーライター)+『ACROSS』編集]
 

waitingroom(ウェイティングルーム)

〒150-0021
東京都渋谷区恵比寿西2-8-11渋谷百貨ビル3F(4B)
TEL  03-3476-1010


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