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グリーンライン下北沢
レポート
2011.12.01
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グリーンライン下北沢

小田急線の地下化により生まれる「あとち」を魅力あるパブリックスペースに!
グリーンラインで結び直す下北沢のまち

  通称「シモキタ」。

新宿から急行電車で約10分。東京大学駒場キャンパスや明治大学和泉キャンパスからも近く、若者が集うまちとして栄えてきた下北沢。細い道に小さな店が連なるヒューマンスケールの町並みは、休日となれば若い買い物客で溢れて、活気に満ちている。東京でもっともポピュラーなまちの一つである。

 そんな下北沢がいま、大きく変わろうとしている。

 現在、小田急電鉄は朝夕のラッシュ時の混雑を解消と踏切渋滞をなくすために、小田急小田原線(以下、小田急線)の複々線化と地下化の工事を進めている。これでかなり混雑が緩和され、各駅停車の急行・準急待ち合わせや通過待ちがなくなり、かつ、閉まっている時間が長かった踏切問題も解消されることになる。今、下北沢駅の小田急線ホームを降りると、大きなドリルの音とともに仮囲いが目に入り、工事が進行中であることがわかる。

 この事業は、下北沢にとってどんな影響があるのだろう。
代々木上原〜梅ヶ丘間に生まれる2.2キロの「あとち」。
下北沢を訪れたブラジル・クリチバ市の元市長ジャイメ・レルネルさん。 元・世界建築家協会会長でもある。
高橋さんによるハイラインの取材レポートでは、公園に生まれかわったハイラインの様子が写真と共に紹介され、参加者の興味を引いていた。
第1回目のセミナーには70人以上の参加者があった。20代の男女から60代、外国人と来客層もさまざま。
1回目のセミナーに飛び入り参加した保坂世田谷区長。保坂区長は、12/4(日)の第3回目のセミナーにパネリストとして参加する。
 下北沢駅周辺で線路が地下化されることにより生まれるのが、線路跡地の約2.2km幅約30mの細長い空間である。1927年に小田急線が全線開通してからこれまでの間、線路とともにあったまちの風景は様変わりすることになる。2008年に市民案を募集、市民案検討委員会での委員会案を経て、今年2月には「世田谷区案」を発表した。

 こうした小田急線の複々線化・地下化事業に対し、活動を行っているのが「グリーンライン下北沢」(リンク先はこちら)だ。市民が、都市計画や建築の専門家と協働して、地下化よって創出される跡地を、どのように地域の活性化につなげられるか。セミナーや勉強会、ワークショップやシンポジウムなどの企画を通し、世田谷区を介して小田急電鉄に積極的に提案していこうという市民グループだ。

そんな、「グリーンライン下北沢」代表の高橋ユリカさんに話を聞いた。

「下北沢というまちが大きく変わるのですよね。これまでメディアでは、道路計画についての賛否のみがずいぶん報道されてきました。でも、まちが大きく変わるのはそれだけではありません。今、見えている小田急線が見えなくなるというのは大きな変化です」(高橋さん)

 東京生まれ東京育ちの高橋さんが、家族とともに下北沢へ住まいを移したのは、いまから13年前。小田急線の地下化事業について知ったのは、住まい始めて数年が経ってからだった。

 実は、高橋さんの本業はライター。20代には雑誌編集者として活躍し、ライフスタイル、アートやグルメ、魅力ある地方への旅など生活全般について担当。海外取材も多く、「まちのあり方」は長い間の関心事だった。たまたま、家族が建築関係の仕事をしていたこともあり、もともと建築やまち歩きが大好きだった。また、病気を経験したことで、医療福祉や環境問題、人がいかに地域で暮らしていくのかということにも関心を広げていった。

 そうした取材を通して、「地域の宝」という言葉をキーワードとして心に留めることになる。

そんなとき、さまざまに魅力あるまちとして、心地よく暮らしてきたと思ってきた地元の下北沢が大きく変わる計画があることを知り、これは見逃せないと、「グリーンライン下北沢」の前身である「下北沢フォーラム」に参加。

高橋さんはそれまで環境問題の取材で各地の反対運動を目にし、なかなか奏功しない現実も見てきていた。1970年代から80年代にかけて、活発だった市民運動から、環境保護と市民参加、情報公開が世界では常識になっていたが、日本ではおおむね数十年遅れの実態があった。そんな現実から、まずは、市民が専門家と協働して課題の勉強をし、行政の発する情報を理解すること、そして、問題があるときには代替案を提示していくという市民活動が必要ではないかと痛感していたという。

「下北沢フォーラム」の活動には、下北沢そのものの魅力に加えて、代表の小林正美さん(明治大学教授)が海外事情に詳しいこともあり、海外の専門家からも大きな関心が寄せられていた。2005年にはハーバード大学大学院が国内の大学とともに跡地利用計画を提案。環境に優しく持続可能な都市づくりに取り組んできたことで有名なブラジル・クリチバ市の元市長ジャイメ・レルネルさんも下北沢を来訪し、跡地利用案の提案を行った。「下北沢フォーラム」は、大きく変わる下北沢について、専門家の立場から小田急線地下化後の姿も含めて、さまざまな研究や提案の発表を仲介する先進的な市民活動となった。

 そんな活動に参加する一方、高橋さんは本業のスキルを活かし、下北沢で暮らす人、店を営む人、来訪者ら多くの人へのインタビューを始めた。下北沢とはどんなまちなのか、まちの歴史を丁寧に辿っていった。脈々と流れる文化や商業の歴史を確認し、そのうえで下北沢の未来がどうあったら良いのか…。インタビューした人の数は150人以上にのぼり、このインタビューや調査によっても、日々暮らしている下北沢の姿がみえてきたと高橋さんは話す。

 「今のメディアからの情報は少し偏っていると思うの。徒歩5分圏内のまちは確かに若者とファッションの町というイメージかもしれないけれど、そのすぐ隣には閑静な住宅街が広がる。でも、それは伝わりにくいですよね。下北沢は、郊外住宅として開発され、昔からリベラルで文化人が多く住むまちでした」(高橋さん)
ニューヨークのハイラインの様子。
撮影:高橋ユリカ(トップページ写真含む)
北沢タウンホールから望む下北沢のまち並み。
「グリーンライン下北沢」代表の高橋ユリカさん。
「下北沢フォーラム」は、2007年の準備期間を経て、2008年に「小田急線あとちを考える会」として、小田急線あとち(上部利用)についての提案を主軸にした市民グループに生まれ変わった。専門家と協働するという路線は変えずに、ワークショップやセミナーを重ね、世田谷区が募集した跡地利用の区民アイデアに応募するなど、積極的な活動を展開。そして今夏、より広がりのある場をつくろうと、団体名を「グリーンライン下北沢」へと名称を変更さらに地域の多くの人たちと一緒に活動をしたいと進化した姿を見せる。

”グリーンライン”というと、”緑道”?と聞かれますが、公園の中には大きくない商業施設や文化施設も可能ですし、それらも含めてグリーンな公共空間と捉えています。英語では“グリーン”すなわち“エコ”の意味で使われることが多く、地下化した線路の上部空間を、エコロジカルで広がりある、いろんな人が集って活動ができる場所にしていけたらと思っています。”ライン“はニューヨークで鉄道跡地を利用した公園”ハイライン“の成功もあっての言葉です」(高橋さん)

 今春の統一地方選で、市民活動に理解ある保坂展人さんが世田谷区長に就任したことで弾みもつき、10月より3回連続セミナーが企画され、その第1回が下北沢の北沢タウンホール12階スカイサロンにて10月30日に開催された。

 2.2キロの連続したランドスケープをテーマにしたこのセミナーでは、ランドスケープ・アーキテクトの井上洋司さん(背景計画研究所)により自身が手がけるランドスケープデザインやまちづくりについての事例紹介がされた。そして、ジャーナリストでもある高橋ユリカさんは、市民発の提案により放置されていた高架鉄道の跡地を緑溢れる公共空間を生まれ変わらせた実例として、ニューヨークの「ハイライン」を取材したレポートを紹介(当日発表のパワーポイントはこちら)。この「ハイライン」は、地元住民の憩いの場としてはもちろん、世界中から観光客を集客するニューヨークの新たな観光スポットとしても成功を収めて世界的に注目されている

 会場には、小田急線跡地の利用に高い関心を寄せる周辺住民の人たちを中心に約70名参加。会の後半には公務の合間を縫って世田谷の保坂展人区長が駆けつけるなど、この事業に対する関心の高さと熱意を伺わせた。その後、11月10日に開催された第2回のセミナーでは、都市交通の専門家中村文彦さん(横浜国立大学教授)と今は「グリーンライン下北沢」顧問の小林正美さん(明治大学教授)が、交通の観点から跡地利用を考える講演を行った。

セミナーでは、住民らによる積極的な意見交換もなされ、中には『ニューヨークのハイラインを見てきた、園芸のボランティアに参加したい』という地元の女性や、『実現のために、我々住民が具体的にお手伝いすべきことは?』といった質問などがあがった。

「このセミナー開催して再確認できたのは、下北沢がメディアで喧伝されるような若者文化のまちというだけでなく、文化レベルが高くグローバルな意識があるクリエイティブな人たちが住んでいるまちだということ。今後は、そんな住民の方たちにも参加していただき、世田谷区、鉄道会社と一緒にまちをつくっていく、新しい市民活動のスタイルや仕組みをつくりたい。グリーンラインで、まちが結び直されれば」と、高橋さんはビジョンを語る。

 12月4日(日)には、連続セミナー第3回が代沢小学校で開催されるが、いよいよ保坂区長も参加して、地域の人たち、専門家たちとのパネルディスカッションも予定されている。(詳細は、HPを参照

 東京都内のみならず世界からも注目が集まる、小田急線地下化後の景色。そして上部利用の仕方次第で変わるであろう下北沢の未来。「グリーンライン下北沢」のキャッチコピーのように線路のあとちが「地域の宝」となるかどうか。緑豊かで賑わいある光景が創出されるまでも大仕事だが、実際にその空間ができたときに、どのようにマネジメントしていくかなどソフト面での課題も多い。みんなが幸せに使える公共空間として育てていくためには、新しい市民グループやルールづくりが必要だ。そうした担い手としても「グリーンライン下北沢」には期待がかかる。

小田急線の複々線化および地下化の工事は2013年度をメドに完了するという。いままさに、刻一刻と姿を変えようとしている下北沢。その先の未来に、無関心ではいられない。
 
【取材・文:尾内志帆(ライター)】
 ■グリーンライン下北沢 3回連続セミナー
「みんなでつくるグリーンラインと下北沢〜公共空間を楽しもう!」 

■第3回 12月4日(日)13:30〜16:30 代沢小学校講堂(体育館)


パネリスト

保坂展人(世田谷区長)
吉見俊哉(東京大学大学院情報学環教授/世田谷市民大学学長)
太田浩史(建築家/東京大学生産技術研究所講師/東京ピクニッククラブ)
柏雅康(しもきた商店街振興組合理事長)
吉田圀吉(下北沢南口商店街振興組合理事長)
渡辺明男(おやじネット下北沢代表)
首藤万千子(世田谷プレーパーク世話人)
高橋ユリカ(グリーンライン下北沢代表)


主催:グリーンライン下北沢
http://www.greenline-shimokitazawa.org/
共催:しもきた商店街振興組合
後援:世田谷区
協力:下北沢南口商店街振興組合、おやじネット下北沢

参加費無料、事前申し込み不要。

問い合わせ:info@greenline-shimokitazawa.org


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