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seeds(シーズ)
レポート
2011.12.27
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seeds(シーズ)

目指すのは「コミュニケーションデザイン」。
デザインに関わるチームによる福島支援プロジェクト

旗をかたどったパッケージには、パラフィン紙に包まれた菜種30粒ほどが入っている。各300円。
菜種は福島県天栄村の農家の提供によるもの。植えられることがなかった種を再利用している。
薬剤用のパラフィン紙。印刷はすべて活版印刷によるもの。
種を植えた人が、植えた場所とコメントをHPに投稿できる。 植えられた場所をマッピングしていくしくみ。
去る11月に行われたDESIGN TIDEに出展。海外のメディアからの反応が大きかったそうだ。

 今年311日に起きた東日本大震災から9カ月。甚大な被害を受けた東北地方や被災者に向けたさまざまな支援が行われているなか、デザイナーら5人が手掛けるプロジェクト「seeds(シーズ)」がスタートしたseedsとは日本語で種のこと。福島で植えられることのなかった菜の花の種を販売し、利益を生産者に寄付している。

 

 「seeds」のメンバーは、ファッションブランド「ASSEDONCLOUD(アシードンクラウド)」のデザイナーの玉井健太郎さん31歳)、同アシスタントの清野大介さん28歳)、ファニチャーレーベル「E & Y(イーアンドワイ)」の秋本裕史さん30歳)、WEBサイトの開発などを手掛けるベンチャー「式会社スプール」の代表取締役CTO深浦朋重さん34歳)、ロゴやパッケージ、紙媒体などのデザインを行う「ALL RIGHT GRAPHICS」アートディレクター/グラフィックデザイナーの高田唯さん30歳)。

 

 発案は、玉井さんと秋本さん。震災以降、2人は自分たちの仕事であるデザインの意義を問うようになると共に、デザインの力で自分たちが被災地に役立てることはあるだろうかと考えるようになった。そして6月、人と人、被災地とを繋げるコミュニケーションをデザインしたいという考えに行きつき、より多くの人々に広めることができる「種」を使った活動を始めることを決意。被災地支援というコンセプトに関係なく、デザイン性があって消費者に「欲しい」と思ってもらえるパッケージで種を販売し、販売利益を農家に還元することにしたという。活動にはWEBやグラフィックのデザインなども必要になるため、以前から玉井さんと交流があった他のメンバーも参画することになった。

 

 プロジェクトは、福島で植えられなかった菜種を、日本各地の土壌で育てようというものである。菜種は、福島県天栄村の農家の提供によるもの。震災前に収穫されたもので、本来ならば食用油の原料として出荷されるはずだったが、震災の影響による価格崩れなどの懸念があったため、農家が廃棄を考えていたものを、「seeds」が譲り受けたという。

 

 旗をかたどったパッケージのなかには、パラフィン紙に包まれた菜種30粒ほどが入っており、販売価格は300円。旗は、「ALL RIGHT GRAPHICS」の活版印刷工房「オールライト工房」で活版印刷を施し、植木鉢に立てて濡れても破れないように、防水のためのロウ加工がされている。旗のデザインには、被害を受けた東日本のことを忘れずに(2011 NE JAPAN)、この「seeds」の第一弾プロジェクト(SEEDS 01)を、自分たちの手で育てていこう(じょうろの絵柄)という意味が込められている。

 

 また、活動のリアクションをより多くの人と共有するため、「seeds」のホームページでは、種を植えた人が植えた場所とコメントを投稿することが可能。地図上に植えられた場所をマッピングしていく。

 

 「種は生きているので、植えて収穫すればまた増えます。人に渡しても生き続けるもので、ストーリー性があります。広く知ってもらうためにも、小さくて安くて身近で良いのです。大きな利益が出るわけではないので、利益を戻すというよりも、被災地のことを思い続けてもらうことが狙い。これが何か考えるきっかけになればと思います」(清野大介さん)

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プロダクトとしてのかわいさも魅力。パッケージは鉢に差して使えるよう、ろう引き加工が施されている。
金羊社オールライト工房が主催する「印刷のいろは展」にも出展。
チャリティであると同時に、もの作りの背景を知ってもらいたいと語る清野さん。活版印刷の過程を展示した。
パッケージは全5色。今後は種以外にも、軍手やじょうろなど園芸用品の展開も考えているそうだ。

 1029日〜113日まで開催された「DESIGNTIDE TOKYO 2011(デザインタイドトウキョウ)」へ出展し、販売をスタートした。会場では菜種を紙詰めする作業の写真なども展示し、製作の過程を消費者に見せるようにした。という背景には、適正なものの価値を知ってほしいという思いからだそうだ。

 

 「ものの原点を知ることで、ものの価値を知ることができると思います。いま、ものの価値がとても曖昧な時代。安いことが消費者にとって当り前になっています が、その背景で、ものをつくっている人が大変な思いをして働いているんです。生み出す側がそれを消費者に提示していくことが必要なんじゃないかと思うんです」(清野さん)。

 

 特に2030代 女性からの反響が大きかったという。活動への共感はもちろん、単純にプロダクトとしてのかわいさ、活版への興味なども手に取る理由になっていた。興味深い のは、海外のメディアやデザイナーからの注目度が高かったということ。社会的問題にデザインでかかわるアクションに、高い関心が寄せられたそうだ。

 

 1156日に開催された「印刷のいろは展」にも出展し、2つのイベントで約600セッ トを販売したという。現状ではイベント出展の販売が主だが、今後はホームページ上での販売も着手予定。今後は雑貨店などに卸で展開していきたいそうだ。コンセプトは大事だが、そればかりを押すのではなく、プロダクトとして良いと思った人が手に取って、後からその意味を理解してくれることでも構わないという。

 

 デザインタイドに出展した際に、誰もが被災地に向けて何かをしたいという気持ちを抱いているのだと実感した、と語る清野さん。ものづくりをしている人から は、「自分も何かしないと」という意見が、また一般の参加者からは「自分はものを生めないので、お金を払うことで役に立てれば」という声が多かったという。また、10月に福島県天栄村を訪れたときには、現地の人々は金銭的なこと以上に、精神的な人と人との繋がりを求めているとも感じたそうだ。

 

 「何かをしたい気持ちがあっても、何をしたらいいのか、どこにお金を払ったらいいのか迷っている人がとても多いと感じました。同時に、託したお金が渡る先が明確でないと、動けない人が多いのではないかと思います」(清野さん)

 

 夏頃まではチャリティグッズが溢れていたが、9カ月という時間が経ち、支援のあり方が、先頃取材した「東北コットンプロジェクト」のような産業創出プロジェクトや、「seeds」のような継続的な支援のシステムづくりへと変化しつつある。チャリティを全面に押すのではなく、無意識に必要を感じることで人々に参加してもらえるコト・モノであることが、支援を継続的に続けるためのヒントになりそうだ。

 

取材・文 緒方麻希子(フリーライター)


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