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大森克己写真展 すべては初めて起こる
レポート
2012.01.16
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大森克己写真展 すべては初めて起こる

震災を機に日常に生じた変化を捉えるには、写真を「拡張」することが必要だったんです(大森氏)

3.11以前とまったく同じやり方で、写真に向かっても意味がないと思ったのです(大森)
オープニングには、大森のキャリアを反映するように、雑誌関係者の姿が目立った。また、写真家やアーティストも多く来場していた。
同じサイズの縦型のプリントが、目線の位置で、静的に架かっている。それぞれの写真の性格が際立つ展示だ。
 タテ長のフレーミングで切り取られた写真が、アイレベルに淡々と並ぶ。それらの写真すべてに、桜の木が捉えられ、さらには赤いハレーションが写りこんでいる。銀座のポーラ ミュージアム アネックスで開催されている大森克己の写真展『すべては初めて起こる』。主として展示されている17点の写真は、これまでドキュメンタリー的で、ストレートなアプローチが多かった大森の写真の印象を180度変える、含意のあるものになっている。

過去、『Cherryblossoms』『encounter』といった写真集を発表し、桜への思いを、形にしてきた大森。この『すべては初めて起こる』も、一連の最新作かと思いきや、「今回は、桜が最初ではなかった」と語る。

「3月11日に、TVで震災や津波のたくさんの映像が流れて、驚くと同時に、ここに自分が写真家として赴くことはないと思いました。ジャーナリズムのプロたちが既に行っているし、アマチュアがiphoneなどで撮ったものが新聞の紙面を飾ったり、動画で流れたりしていて、津波とか揺れということに対しては、すでに遅かった。

すると、翌12日に、福島の原発が爆発したという第一報があって、事態がそうとう深刻であることがわかってきました。その時に、ああ、福島には絶対行かなきゃいけないな、と思ったのです。でも、爆発そのものには遅刻だし、放射能は目に見えないわけで、それを撮ることはできない。その一方で、どんどん事態は深刻になっているにも関わらず、人はそこに住んでいる。福島という土地そのものを見なきゃいけない、それにはどうすればいいかと考えたときに、もうすぐ桜が咲くじゃないか、と。今回、桜はガイド、道しるべみたいなものです。桜が咲いているところに行けば、きっと何かを教えてもらえるというか、何かがわかるに違いないという直感。そのことで、福島に行けるなと、思いました」(大森)
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浅草のスペースGingrich(ギングリッチ)に展示されている、アメリカン・クラッカー越しのLAの風景。この写真が、「すべては初めて起こる」の作品群に繋がった。
 2000年より、大森は桜と向き合ってきた。自分の周囲から、野生の山桜まで、さまざ ま な桜を撮影した、その経験が、ガイド役として桜、という発想に繋がっている。さらに撮影時には、桜だけでなく、もうひとつのガイドも採用されている。それは、過去の撮影で入手した、アメリカン・クラッカー。写真の赤いハレーションは、このアメリカン・クラッカー越しに撮影をしたことに起因するものだ。

「明らかに日常に亀裂が入り、しかも放射能は目に見えないというときに、3.11以前とまったく同じやり方で、写真に向かっても意味がないと思ったのです。何か写真を拡張するというか、自分にとっての写真の輪郭を大きくする、または輪郭そのものを一度取り払わないとダメだと思いました。

アメリカン・クラッカーを使った写真は、2010年の8〜9月にロサンゼルスに行った時に初めて撮ったもので、それは福島とは関係なく、3.11以前から あったわけです。今回の基準となった写真が過去にあったことが、重要です。過去からのメッセンジャーであり、同時に明らかに変わってしまった世界に対する 新しいレイヤーでもある。ふたつの、ある種相反する性質が、そこにあるのです」(大森)

震災を機に、日常に生じた変化。それに直面し、見て、さらに見せるためには、いわゆる写真の約束事を初期化して、意図的な作為のもと、写真を捉え直すことが必要だったという。そして、あえて作為を言い、認識することが、前に進むことだと、大森は語る。

もっとも、そうした言葉は、撮影時からあったわけではない。当初は無我夢中で、言語化などできていなかった。そんな中、偶然手にしたポール・セローの『The Tao of Travel』という本 で、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの詩の一節「すべては初めて起こる」に出合う。ここですべてのことが繋がった。そして、このボルヘスの言葉を、大森克己の言葉にしていく作業が、写真集をつくり、展示をして見せるということだった。

言葉と写真、一見相反する存在のようだが、大森は、写真には言葉が大切であり、理由がなければならないと語る。
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「すべては初めて起こる」のサテライト展である「Los Angeles(ロス・アンヘレス)」の会場、Gingrichの様子。古いビルの1階部分を使ったギャラリースペースだ。
 「もし、『すべては初めて起こる』という言葉に出合っていなかったら、今頃どうなっていたかと、ぞっとします。あのとき、スキポール空港であの本を手に取っていなかったら、おそらく写真は発 表していただろうけど、もっとややこしい、別のものになったかもしれない。だからこそ今回、言葉は大切だなと思っていて、対談や解説、公開講座などを積極的に行っています。それは、写真に対するエクスキューズとしての言葉ではなく、なんというか、前に進むための言葉はどこから出て来るのか、ということを話したいのです」(大森)

この『すべては初めて起こる』と同時期に、浅草のスペース「Gingrich(ギングリッチ)」で行われている写真展「Los Angeles/ロス・アンヘレス」は、 いわば写真を写真によって語ったものといえる。そこには、あの、アメリカン・クラッカーによるハレーション誕生の瞬間も捉えられている。ここまであからさ まに、写真が生まれる背景を明らかにしていいのかとも思うが、それはまた、大森自身の、新しい展開への覚悟と自信の表れとも、のようにも見える。ただし、予測は、ついていない。

「すべては初めて起こる、と言ってしまったから。次になにが起こるかは、わからないんです(笑)」(大森)

[取材/インタビュー:菅原幸裕(編集者)]
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大森克己写真展
すべては初めて起こる

www.pola.co.jp/m-annex/exhibition/

会場
ポーラ ミュージアム アネックス
東京都中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3F

会期
2011年12月15日(木)〜2012年1月29日(日)

入場料
無料

主催
ポーラ ミュージアム アネックス

宣伝美術
groovisions

企画制作
PARCO

問い合わせ
tel.03-3563-5501



写真展
「Los Angeles/ロス・アンヘレス」

gingrichinc.net/category/event/

会場
Gingrich
台東区寿3-8-4 鎌田ビル
tel.03-6425-7973

会期
2011年12月16日(金)〜2012年1月29日(日)
の木曜日〜日曜日
12時〜19時
要予約 予約先:info@gingrichinc.net
入場無料


写真展「言語と音楽と情熱」
www.matchandcompany.com/index.php

デザイン事務所マッチアンドカンパニーの書庫で、大森克己のアーカイヴから「言語」と「音楽」のキーワードに沿って選ばれた写真によって構成される展示。

会場
マッチアンドカンパニーの書庫
台東区花川戸1-3-6 花川戸ビルB1-1
tel.080-3161-5211(担当:村中)

会期
2011年12月16日(金)〜2012年1月29日(日)
の木曜日〜日曜日
12時〜19時
要予約

入場無料


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