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6次元(ロクジゲン)
レポート
2012.04.06
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6次元(ロクジゲン)

DIY感覚でカルチャーを編集する“メディアとしてのカフェ” 

「6次元」とは 1+2+3=6 あるいは 1×2×3=6「1×2×3=6次元化」。 1次産業・2次産業・3次産業の連携による“産業の6次元化”のように、新しい文化を作ることを目指してこの名がつけられた
かつて伝説のジャズバー「梵天」その後にはカフェ「ひなぎく」として知られた場所 店内はかつての面影を留めており、昔を懐かしむ来店客もいるという
書棚には書籍に混じってアート作品や器なども展示されている
6次元に関わる方たちを中心にセレクトされている本はお茶を飲みながら自由に読むことができる 不要な本で飲食代を支払うことも可能(※一部引き取り不可な古本もあり)
アート、写真、デザインなど多彩なジャンルの展示が行われるギャラリースペース 
荻窪在住の詩人・谷川俊太郎さんはここで朗読会やワークショップなどを開催している これは谷川さんの“顕微鏡で読む詩集”
料理や飲み物が提供される器も楽しみのひとつ 食をテーマにした企画が開催されることも多い
 荻窪駅のすぐ近く、名前もない古いビルの1と1/2階にあるカフェ「6次元」。出版社や編集者、クリエイターたちの注目を集めている店である。通常営業は週末金〜日曜日の3日間のみという営業形態だが、平日には雑誌・テレビの撮影やイベント向けにスペースをシェアしており、「spoon.」などのファッション誌にたびたび登場している。

“ブックカフェ”“ギャラリーカフェ”といった紹介のされ方をすることも多い同店。店内の壁面に設えられた大きな書架には、デザイン、アート、文学、児童書などの書籍が並んでいる。この店にかかわる人たちの本を中心にセレクトされたという古書は、お茶を飲みながら自由に読むことができる。さらに、本を持参して飲食代とすることも可能だという。

展示スペースを中心とした展覧会も開催している。「棟方志功装幀展」「平野甲賀リトグラフ展」といった大家の企画から、一般には馴染みのない若手クリエイターの展示までさまざまで、谷川俊太郎さんのポエトリー・リーディングや読書会、金継ぎナイトや製本ワークショップなどライブ型のイベントも数多く開催している。それがツイッターをはじめとするソーシャルメディア上で拡散し、この1〜2年で急速に存在感を増してきた。

同店のオープンは2009年12月だが、内装やインテリアはかなりの年月を経てきた趣がある。それもそのはずで、この6次元はかつて伝説のジャズバー「梵天」として知られた場所なのだ。その後ここを引き継いだ「ひなぎく」は、沼田元氣さんのカフェスクール関係者とあって乙女に人気のカフェとして知られた店。6次元の内装、家具類はこうした店のものをほぼそのまま引き継いで、そこにミナ・ペルホネンのファブリックを使用してリノベーションを施している。

 「ずっとテレビの仕事をしてきたのですが、ひなぎくが閉まるという事を聞いて、どうしてもここの物件が欲しくなったんです。これを逃したら、もう2度とそんな物件は手に入りませんから」
と語るのはオーナーの中村邦夫さん。現在もフリーのディレクターとしてテレビの仕事を続けながらこの6次元を運営している。中村さんとともに6次元を運営する道前宏子さんも、同じく映像業界の出身。現在は店の運営と並行してライターとして活動中だ。


「小さいメディアを作ろう、という発想から始めた店なので、そもそも僕はカフェをやっているという意識がないんです。カフェと書店、ギャラリーなどの要素が複合した、新しい場所を作ろうと思ったんです」(中村さん)

彼がチョイスするクリエイターを紹介す るというスタイルはオープン当初からのものだが、かつては週6日、昼から夜まで通しで営業していたという。当初は珍しい食材の料理を提供したり、音楽のラ イブを開催するなどしていたが、反応は芳しいものばかりではなかったという。「やはり助走期間に1〜2年くらい、ベースができるのに3年くらいはかかるんですね。イランのサントゥールという楽器の演奏者を招いたり、湯川潮音さんのシークレットライブをやったり、そんな企画を徐々に増やしていったんです」 (中村さん) 

山フーズの小桧山聡子さんが「未知の料理」を作り、その料理に『名前』をつけていく公演「詩とごはん。」 他所ではなかなかないワークショップが楽しめるのが六次元の魅力
河合勇展「Light up a Memory いまを照らす対話」(2011年4月28日〜5月1日)
タナカチエ「ヒキダシ ノ カレンダー」と、ヒキダシ展(2011年12月)の展示風景 42名の参加クリエイターが自分のヒキダシを紹介するというプロジェクト
「Book Bang」どむか×内沼晋太郎(NUMABOOKS)×BIBLIOPHILIC×6次元(2012年4月6日〜15日) 当然ながら本に関するイベントは多い
オーナーの中村邦夫さん 雑誌「soppn.」にも連載を持っている
立地は中央線沿いの白山神社と光明院に挟まれた三角地帯 光明院は荻窪の地名の由来となる寺院だ
井伏鱒二や棟方志功など荻窪は文化人の住む町でもある 都心でも郊外でもない絶妙のバランスが面白い街だ
お店の存在が広く知られ、客層が大きく広がったのが2010年頃から。出版社や編集者が展示やワークショップを開催するカフェとして知られるようになり、『spoon.』で何度も大きく取り上げられたあたりから一躍文化系女子の注目を集めるようになった。

平日のイベント開催が増えてきたことと並行して週末のみ通常営業というスタイルに落ち着いたが、現在、通常営業を行なっていない月〜木曜日も大半はワークショップやトークイベント、展示などでコンスタントに埋まっている。

「うちのようなレトロな雰囲気の空間が好きで、京都が好きで、文具とか古い紙ものが好き、っていう乙女層のお客さんは一定のボリュームでいるんです。それがspoon.に特集されて、ますますそういう乙女系のお客さんが増えましたね。ただ、ここをそういう方向にしようという意識はないんですよ」(中村さん)

女子っぽい企画が続いた後には、あえてハードめな展示や知名度の低いクリエイターを紹介する企画などを開催。ジャンルも分散させて企画のバラエティを広げるようにしているという。
「ガーリーな路線の企画は人も集まるし楽なのですが、同じ層のお客さんばかりが集まると雰囲気が閉鎖的になってしまう。閉じたサロンになってしまうんです」(道前さん)

6次元の面白さは、こうした編集センスだけでなく、荻窪という土地の地縁を感じさせるところにもある。近隣に住む皆川明さんや谷川俊太郎さんといったクリエイター/アーティストたちが店に出入りし、それが企画となることもある。もともと荻窪は棟方志功や井伏鱒二といった文学者たちが住んでいたことでも知られており、文化度が高いエリアだといえる。

このエリアにはデザイナーや建築家も多く住んでいるので、彼らと仕事をする編集者や周辺ジャンルのクリエイターが荻窪には多く訪れる。そうした人たちがオープン当初からここに集まっていたという。 
「荻窪はちょうどバランスがいいんですよ。中野-高円寺のサブカルと、三鷹の方のちょうど中間にあるので、住んでいる人も“いい感じ”の人が多いんです」(中村さん)

6次元が広く注目を集めるようになった2010年は、まさにツイッターが爆発的な広がりを見せた時期だ。出版社やクリエイターがツイッターで告知をし、それが拡散することで“クリエイターが集まる面白そうなカフェ”として6次元の存在が急速に広がったのである。地縁だけではなく、ソーシャルメディアで情報が拡散することで、人の集まり方にも大きな変化があったという。

「この半年で人の集まり方がすごく変わってきました。1ヶ月後の企画告知よりも、1週間前に告知した方が爆発的な反応がある。翌日のワークショップを告知をして、30人くらいの枠が瞬時に埋まることもあります。スケジュールはなるべく空けておいて、何か面白そうなことがあったらすぐ対応できるようにしている人が増えている気がします」(中村さん)

今や注目のスポットでもある6次元には企画のオファーも多く寄せられるが、3ヶ月先以降のイベントスケジュールは固定しないようにしている。それでもソーシャルメディア経由で十分な告知と動員ができるからだ。

店内での企画に留まらず、中村さんのもとには6次元企画のイベントやトークショーの依頼も増えてきたという。独特のスピード感で、新旧問わずクリエイターをDIY感覚で発掘・紹介する6次元の動きはまさにメディア。他のスペースとの連携などによって、今後さらに広がりを見せていきそうだ。荻窪エリアの変化も含めて注目していきたい。



取材・文/本橋康治(ACROSSコントリビューティングエディター/フリーライター)

6次元(ロクジゲン)

6次元(ロクジゲン)

営業日:金 土 日 15:00-22:00
住 所:〒167-0043
    東京都杉並区上荻1-10-3 2F
電 話:03-3393-3539


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