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東京蚤の市
レポート
2012.08.06
この記事のカテゴリー |  イベント |   インテリア・雑貨 | 

東京蚤の市

新しいスタイルの“文化系野外フェス”

会場となった東京オーヴァル京王閣は、かつてはレジャーランドだった競輪場。場内には休憩スペースや緑も多く、イベントの内容にもよくフィットしていた
東欧の文房具や絵本、雑貨を扱う「チャルカ」は大阪市西区北堀江の人気ショップ。ここ目当てに訪れたファンも多かったようだ
絵本、アート、デザイン、生活にまつわる本と雑貨を扱う「Hedgehog Books and Gallery」は京都市上京区のショップ&ギャラリー。オリジナルの雑貨も扱っている
インテリアや家具のショップ。ヨーロッパの蚤の市のような雰囲気が漂う
移動式書店「BOOK TRUCK」やひぐらし書店(雑司ヶ谷)など本好きの間で注目を集める古書店が集まった
ここ数年、雑貨として女子の間で根強い人気を集めるこけしを扱うショップも
飲食関係はカフェを中心に9ショップが参加。中でも長蛇の列を作っていたのがこの「日光コーヒー」
ヨーロッパの各都市で行われているような、雰囲気のある蚤の市を東京にも。そんな思いから企画されたイベント「東京蚤の市」が、2012年5月26日と27日の2日間に渡って開催された。東京都調布市の東京オーヴァル京王閣という、かつてはレジャーランドであった歴史を持つ競輪場に、 古道具/古家具店、古書店など約60店が全国から集まった。

日本各地から集まった出店者が扱うのは、 古い家具、お皿・鍋・調理器具などの暮らしの道具、ファブリックやカメラなどの小物、古書や“紙モノ”、古着など。1950〜1980年代のアンティーク雑貨を扱う「OLD NEW THING(オールド・ニュー・シング)」(世田谷区)、東欧の文房具や紙もの、東欧雑貨の店として全国区にファンを持つ大阪市の「チャルカ」、天文・理科系の古道具を扱う京都の「Lagado(ラガード)研究所」など個性的なショップばかりだ。

13店が参加した古書店には、移動式書店「BOOK TRUCK(ブック・トラック)」や雑司ヶ谷のひぐらし文庫など、本好きの間では既に注目を集めているショップの姿も。飲食関係では、自家焙煎の珈琲が人気の日光珈琲(栃木県日光市)、京都を中心に関西でケータリングや出張カフェなどの活動をしているsouffle(スーフル)など13のショップが集まった。さらにライターの江沢香織さん、文筆家の甲斐みのりさんなどクリエイターたちのフリーマーケットのコーナーも設けられた。

休憩スペースではメインビジュアルを手がけたイラストレーター・ニシワキタダシさんのトークショーや、「古材で家具作り」「紫陽花のリースづくり」といったワークショップ、ライブや昭和歌謡をテーマにした青空DJなどが開催された。かつてレジャーランドであった、どこか昭和のテイストも残る競輪場にはゆったりできる居場所も多く、ただ物を売るだけではなくのんびりと休日を過ごせる構成になっていた。さながら文化系フェスといえそうな趣のイベントである。

主催者は雑誌「自休自足」「カメラ日和」の創刊編集長を務めた北島勲さんと、雑誌「マイガーデン」の副編集長を務めたわたなべようこさんを中心とした編集集団、手紙社。書籍やwebの編集のほか、 調布市でカフェと古本と雑貨のショップ「手紙舎」と紙ものや雑貨、古道具を扱うショップ「手紙舎」2店舗を運営している。

同社はこれまで調布市多摩川河川敷を会場として年に1回、 陶芸家、布作家、料理家、音楽家、農家、写真家、イラストレーターなど様々なジャンルの作り手を集めた「もみじ市」を主催。第7回となった2010年は、2日間で3万人の来場者を動員している。
「もみじ市をご覧になっていた地元の方がこのオーヴァル京王閣を紹介してくださったことで今回、東京蚤の市の開催に繋がったんです」
と事務局スタッフは語る。

蚤の市で扱われるのは“ブロカント”というカテゴリーのものが中心。ヨーロッパの生活文化の中で大切にされてきた美しい古道具のことをいい、近年愛好者が増えているジャンルである
主催の手紙社によるミニ写真展のコーナー。これは面白いアイデア
休憩スペースでは音楽やトーク、ワークショップなどのライブイベントを開催。メインビジュアルを手がけたニシワキタダシさん(写真中央)などのクリエイターが参加し、文化系の野外フェスという趣だった
アメリカで買い付けたアンティークウェアを扱う「general STORE」は茨城県結城市のショップ
国内外の古物/古道具を扱う「ALL TOMORROW'S PARTIES」(神奈川県相模原市) 古道具ながらポップなテイストのものが多い
大阪市阿倍野区の古道具店「つむぎ商會」の2人。「ウチは古金物なら全国でも他にない品揃えだと思います」
独特の展示で来場者の目を引いていた「Lagard(ラガード)研究所」。天文/理科系の古物を扱う京都のショップだ。会場内にはこうしたカメラ女子の姿が目立った
もみじ市とは異なり、この東京蚤の市に集まったショップが主に扱っているのは古道具や古書、紙ものなどの“古いもの”全般。ただし骨董、アンティークではなく、“ブロカント”というカテゴリーに入るものが中心である。ブロカント(Brocante)とは「美しい古道具」を意味するフランス語で、ヨーロッパの“物を愛し、長く大事に使用する”ことを美徳とする生活文化の中で大切にされてきた古道具を指す。近年日本でも愛好者が広がってきたジャンルだ。

ちなみにアンティークとは、本来作成されてから100年以上を経過した、美術的な価値や収集の価値があるものを意味する。ブロカントは、アンティークほど年月を経っていないもので、より日常生活の中に気軽に取り入れられるものだ。このあたりの感覚は、
日本各地に埋もれる優れたデザインを発掘する、D&DEPARTMENT PROJECTの取り組みにも通じるものがある。「クウネル」に代表されるスローライフ指向や、アフター311に強まってきたサステナブルな社会への関心の高まりにもつながっていそうだ。

この「東京蚤の市」の後、6月30日には手紙社と333discsの主催によるイベント「森のカフェフェス in ニセコ」がニセコビレッジ(北海道虻田郡)で開催された。2011年11月に味の素スタジアム(東京都調布市)で行われ大きな反響を呼んだ「カフェ&ミュージックフェスティバル」の第2回として企画されたものだが、こちらは音楽フェスを柱に手紙社のセレクトしたカフェやクリエイターのショップを加えた構成だ。日本でもすっかり定着した夏のミュージックフェスでも、参加者向けのサービスとして飲食や物販などのショップは内容が充実してきたが、それをさらに文化系のフィールドに引き寄せた感じである。

大量消費社会に正面からアンチを唱えるのではなく、消費をしつつ無理なく心地よい生活に近づいていこうという一つの顕れともいえそうで、こうしたイベントは今後も広がっていきそうだ。地域固有の文化をフィーチャーしたり、各地で広がる日本版マルシェと連携するなど、編集の可能性はまだまだある。これから各地で多様なスタイルの文化系フェスが生まれてくるのではないだろうか。


取材・文/本橋康治(ACROSSコントリビューティングエディター/フリーライター)

東京蚤の市

第1回東京蚤の市 概要
日程:5月26日(土)、27日(日)
時間:11:00 〜 17:00
会場:東京オーヴァル京王閣

東京都調布市多摩川4-31-1
入場料:300円(ただし小学生までは無料)
主催:手紙社
後援:調布市、調布PARCO
協力:東京オーヴァル京王閣


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