ターブル・オギノ
レポート
2012.07.09
フード|FOOD

ターブル・オギノ

コンセプトはフレンチの総菜店
食環境サイクルにも取り組むフレンチレストランの新業態

スタッフのほとんどが女性。「結婚や出産を経ると復帰したくても働く場がない女性が多くいます。働く人たちが幸せになれる店でもありたい」(荻野さん)
キッシュにはタルト生地を使用。片手を広げたほどのサイズでボリューム満点。エビとマッシュルームのキッシュ(¥680)
たっぷりのクリームチーズとイチゴが乗ったヘーゼルナッツのカップケーキ(¥480)とヴァローナチョコカップケーキ(¥520)
レストランオギノの名物メニュー、パテドカンパーニュ(田舎風パテ)。地方からの反響も大きく、通販でも販売している。

  2011年末に代官山蔦屋書店という新たなランドマークが登場し、大手企業から個人オーナー系ショップまで新規出店が再び増えている代官山。そんななか、2012年2月、代官山のキャッスルストリートに、デリ&カフェ、ターブル・オギノがオープンした。同店は、世田谷区池尻の人気フレンチレストラン・オギノの2号店で、キャッシュオン形式のカジュアル業態。オーナーは荻野伸也・夏夫妻。


 「コンセプトはスロウなファストフード。テーブルに座って何時間もかけてゆっくりする食事もいいですが、仕事やプライベートが忙しい人の日常に寄り添って、いいものを手軽に食べられる場所を作りたかったんです」と夏さん。聞けば、伸也さんは趣味でトライアスロンをしており、仕事の合間のトレーニング後に「よい食材を使い、時間をかけて作られた体にいいスローフードを、ファストフード感覚でさっと食べられる店があったら」と考えており、その理想を自ら実現したというわけだ。


 きっかけとなったのは、伸也さんが以前から北海道で取り組んできた食環境のリサイクルプロジェクト。農地が広い北海道では、余剰野菜や規格外野菜が多く出るが、それら市場に出荷できない野菜を総菜に加工して販売することで、第一次産業と消費者をつなげる、という活動である。その一環として、2011年、丸井今井札幌本店にデリカテッセン「Vivre Ensemble(ヴィヴルアンサンブル)」をオープン。その経験やノウハウを活かし、全国の生産者ともつながりが増えたことから、ターブル・オギノをオープンするに至ったという訳である。 

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プレートメニューはパテデリプレート(写真:¥1,260)のほか、鴨のコンフィプレート(¥1,360)、仔牛カレープレート(¥960)から選べる。ほぼ同じ内容でテイクアウトBOXも用意している。

 

2階はイートインスペースで25席を設置。木目と白を基調にしたナチュラルな雰囲気。
朝は朝食向けのサンドイッチや焼き菓子を中心に販売。フォカッチャ(¥150)、レモンタルト(¥420)、ブルーベリーのタルト(¥420)
場所はキャッスルストリートの入り口にできたテナントビルの1階と2階。地下にはライブハウス「simple voice」が入居。
近隣の美容師やアパレル店員、親子連れ、50代、60代などの年配客など幅広く来店しているそう。
   1階は食肉加工品や総菜、焼菓子を販売するデリ、2階はカフェスペースという構成。1階で購入した商品のイートイン利用のほか、プレートメニューも販売する。1階でオーダーと会計をし、カウンターから料理を受け取ってお客さん自ら2階の座席に運ぶシステム。食後の食器も、返却コーナーにセルフサービスで片付ける。


 デリは朝9時のオープンと同時に、朝食向けのサンドイッチや焼き菓子を提供。サンドイッチは自家製サーモンのマリネサンド(650円)など2種類、焼菓子はスコーン(230円)やタルト(420円)など豊富で、ズッキーニとトマト、飴色玉葱のキッシュ(680円)など3種のキッシュもショーケースに並ぶ。また、レストランOGINOの看板メニュー、自家製のパテ・ド・カンパーニュ(約100g・630円)やイベリコ豚のコンフィ(690円)もテイクアウト販売する。


 カフェでは、4種類のプレートメニューを11時から閉店の19時まで通して提供。ランチメニューとディナーメニューの切り替えはしていない。一番人気は「パテデリプレート」(1,260円)で、パテドカンパーニュ、おまかせデリ2品、ドリンクがセットで、白米または玄米、フォカッチャのうち1つが選べる。ほかに、カレープレートや鴨のコンフィのプレートなど。


 出店場所としては青山や恵比寿も候補地だったが、平日も地元の人が暮らしていて、土日はわざわざ遠くから足を運ぶ人がいる、そんな街の特徴に魅力を感じて代官山を選んだ。食への意識が高い人が多いという点も、決め手になったそうだ。


 平日は地元の女性客や遅いランチ利用の近隣の会社員が多く、平均滞在時間は約30分。休日は家族連れや若いカップルが中心で、平均滞在時間は約1時間。


 「予想以上に男性のお客さまが多く、平日のランチタイムにはスーツ姿の男性が1人で食事をしていかれますね。男性がパッと入ってサッと出て行ける、そういう店として選んでくださっているのには驚きました」と夏さん。伸也さんが理想とした店舗形態は、同じ男性の多くが抱えていた潜在的ニーズに応えた形なのかもしれない。


 「たとえば、野菜は無農薬や低農薬など、できるだけオーガニックのものを選んでいます。だからといって、決してオーガニックにこだわりのある方だけをターゲットにしているわけではなく、あくまでも忙しい人がさっと利用できるカフェでありたい。店側がお客さんを絞るのではなく、お客さんの使い方次第で店を選んでもらう。そうすることで裾野が広がると考えています」


 素材・調理にこだわったメニューをカジュアルなデイリーユースの形で提案する同店は、ハレの場だけを特別に飾るのではなく、毎日の生活にこそこだわって日常をバージョンアップしたいという、昨今の消費者心理の変化にマッチしていると言えるだろう。そして、同店の背景にある食のリサイクルプロジェクト=社会貢献活動も、消費者のモチベーション喚起に結びついているポイントになっていると言えそうだ。


取材:皆川夕美(フリーライター)

ターブル・オギノ

東京都渋谷区代官山町14-10 Luz代官山1F-2F


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