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NEWLAND(ニューランド)
レポート
2012.08.30
この記事のカテゴリー |  インテリア・雑貨 |    | 

NEWLAND(ニューランド)

肩の力を抜いて毎日通える「文化の場」。熊谷の地域特性を活かした複合商業施設

大きな倉庫の中に小さな「ハコ」が入った作り。ショップの個性を活かすため、それぞれのデザインが異なる。
教習所当時の建物をそのまま利用。あえてクレーンを残しているのも斬新!
無農薬・有機栽培の野菜や自然食品を扱うグロッサリーCotona(コトナ)。床には教習所時代の名残が。
熊谷市の深谷農場が3年かけて開発した、無農薬の「あっぱれ千代にんじんじゅーす」520円。
群馬県前橋市のトンボベーカリーの2号店B&M(ビーアンドエム)。自家製天然酵母とオーガニックにこだわったパンと自家焙煎コーヒーを提供。
トンボベーカリー」のオーナー筑井誠さん。東京・富ヶ谷のルヴァンで修行し、地元の前橋で独立開店した。

真夏には最高気温が40度近くにまで達することもある、日本一暑い町として知られる埼玉県熊谷市。その熊谷市内の、JR熊谷駅からバスで20分ほどの場所に、ショップ・スクール・ドッグランを併設した複合商業施設NEWLAND(ニューランド)」が、2012年7月8日にオープンした。全体で1,000坪にもなる広大な敷地にある大型クレーン教習所をリノベーションしたという、異色の商業施設を取材した。


運営元は、熊谷市内に拠点を構える(株)デッセンス。代表取締役の山本和豊さん(36歳)は熊谷市出身である。同社は住宅・商空間・プロダクトなどのデザインから施工までを一貫して行う建築設計デザイン会社で、自社でセレクトした家具・雑貨やオリジナルプロダクトを扱うインテリアショップ「LOl(ロル)」も運営している。
 
同社では2007年から、敷地である元・大型クレーン教習所を倉庫として借用しており、その後、山本さんが「NEWLAND」の構想を立てて地権者に交渉。2009年からオープンの準備を開始した。
 
熊谷市の人口は約20万人で、その数は昼夜に差がありません。生活が熊谷で完結することは幸せなのですが、ここにはデザインやアートの拠点がほとんどありません。この町でも、文化的なものに出合ってほしいと思ったことが、発案のきっかけです」(デッセンス代表取締役/山本和豊さん)。
 
「特に地方におけるものが売れない状況、デザインやクリエイティブに対しての接点や、それらに対する価値観の乏しさをとても強く感じています。ものづくりをしていて自分が思うのは、主観を持っている人が増えないと、デザインやクリエイションが売れる場が育たないということ。まずは大人たちの感性の自律が必要だと思いました」(山本さん)。
 
コンセプトは“毎日通える文化の場”。周辺の住宅街との調和を考慮し、建物の外観は教習所当時とほとんど変えず、大げさな看板も掲げていない。「SHOP(ショップ)」棟、「SCHOOL(スクール)」棟、「HOUSE(ハウス)」棟、「DOGRUN(ドッグラン)」の4つの施設で構成。ベーカリー、レストラン等が軒を連ねるSHOP棟は、クレーンやユンボ等の大型重機が保管されていた倉庫をリノベーションしており、面積15m×40m超、天井高12mという巨大スケールだ。そこには異なるデザインの8つのコンテナ風の建物が並んでおり、1つ1つが各テナントの個性を表している。
 
「はじめは白い箱を並べるなど統一感を持たせようと思いましたが、そういう施設はすでにたくさんあります。商店街は各店舗が好きなことをしていて、様相も異なっていますが、それでも人と人との繋がりがある雰囲気が全体ににじみ出る。色がない商業施設が多いので、各テナントの個性を消してしまうのは良くないと思い、各テナントオーナーと打ち合わせてデザインを提案しました。日常の延長であってほしいので、間接照明などの過剰な演出はしていません」(山本さん)。

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House棟にはデッセンス直営のインテリアショップ「Lol」とUTRECHTが手がける古本屋「声」が出店。

 

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(株)デッセンス代表取締役の山本和豊さん(36歳)。
メンズセレクトショップ「1LDK for NEWLAND」。中目黒、名古屋、青山に続く4店舗目で、初の郊外店である。
大衆食堂「Restaurant's(レストランズ)」。不定期で、他店のシェフや料理家がシェフと一緒に腕をふるうスペシャルイベントも開催している。
敷地内の至る所にハーブや果樹が植えられており、年間パスポートを購入すればいつでも収穫することができる。
レディスセレクトショップ「xid」。オリジナルとインポートセレクトアイテムに加え、南フランスのフレグランスも展開。
直営のアートギャラリー「WeissWand(ヴァイスヴァンド)」。第1回展示はNY在住のアーティスト福井 延光氏の個展を開催。

営業時間が各テナントによって異なるのも特徴だろう。敷地奥にある2階建てのSCHOOL棟は2フロア合計で、約105坪。かつては免許合宿に来る人に使われていた施設で、ここでスクール、ワークショップ、イベントを行う。HOUSE棟は、教習所の事務棟だったという3階建ての建物で、3フロア合計約270坪。そして、すべての棟を繋ぐように位置するドッグランは、緑豊かなひょうたん型のスペースで、トラフ建築設計事務所がデザインを手掛けた。また、全体の敷地を縁取るかのように茂る樹木や植物は、9割以上がハーブや果樹などの可食植物で、今後、旬のものをいつでも収穫することができる年間パスポートを発行する予定。

SHOP棟の店舗は、地方と都市の格差が無いことを強調するために、半分は北関東の企業、半分は東京都心部の企業を誘致した。北関東を拠点にする店舗は、クリーニング店「タジマクリーニング」、ベーカリー「B&M(ビーアンドエム)」、サーフショップ「CORNER(コーナー)」等。都心部の店舗は、メンズセレクトショップ「1LDK(ワンエルディーケー)」、横浜のカレー専門店「榧”(がや)の森カレー食堂」。HOUSE棟にはデッセンスのオフィスと「LOl」が入居するほか、ギャラリー「WeissWand(ヴァイスヴァンド)」、ブックストア「声」等。SCHOOL棟では、ナンシー八須さんの「スローフード」講座をはじめ、ベビーマッサージ、ドッグスクール、フラワーデザイン、弊誌でも取上げた「NOZY COFFEE(ノージーコーヒー)」の講座等、多彩なジャンルのスクール、ワークショップが行われる。出店者は30代・40代が中心で、全てのリーシング、講師交渉は山本さんが行った。
 
ターゲットは地元の主婦層。車での来訪がほとんどで、客層は30代の子連れママやファミリー層を中心に70代までと幅広く、女性が多い。休日にはファミリーが増えるそうだ。スクールでは、浦和など熊谷以外の埼玉県内、都内からも訪れるという。情報は、口コミやツイッター、フェイスブックから広がっているそうだ。
 
ここのところ、熊谷NEWLAND(ニューランド)や千葉県南房総市のシラハマアパートメント、千葉県富津市のKANAYA BASE(カナヤベース)のように、地元企業やNPO団体が、地域特性を活かした施設へとリノベーションし、観光スポットとして再生するケースが相次いで登場している。単に建築物をリノベーションするだけでなく、地方の活性化に注目し、地域コミュニケーションや地域文化の継承という視点も備えた、進化した形の「リノベーション」が今後、全国各地でさらに増えていくと思われる。
 
取材・文 緒方麻希子+ACROSS編集部 

NEWLAND(ニューランド)

〒360-0114
埼玉県熊谷市江南中央2-3-5
Tel:048-501-7553


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