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ピリカタント書店
レポート
2013.03.12
この記事のカテゴリー |  カルチャー |   飲食・フーディング | 

ピリカタント書店

目指すは街の商店。「本とごはんと日用品」で
“旅と暮らし”の楽しみを提供する下北沢の本屋

オープンして間もないにも関わらず、ずっとここにあったかのように趣のある店内。
料理や食に関する本も豊富に揃う。レシピ本はもちろん、よしながふみの人気コミック『きのう何食べた?』や桐島洋子のエッセイ『聡明な女は料理がうまい』など切り口も様々。
食器類は沖縄の職人が作る民芸の器が中心。西野さん自ら、読谷山焼の北窯・與那原正守工房に出かけて、泊まり込みで窯だしを手伝うこともあるとか。
野菜は、旅する八百屋「青果ミコト屋」から。「ミコト屋」は自然栽培や在来種、固定種にこだわった八百屋で、店舗を持たず宅配や移動販売で野菜を提供している。
内装は「都会の中にいながら自然とつながれる場所、室内でもアウトドアを感じられる空間」がコンセプト。
東京・下北沢では昨今、毎日トークイベントを行うブックセレクトショップ「B&B」、30代の女性店主が手がける”女子の古本屋”「七月書房」、古本バー「赤いドリル」など、本の新しい楽しみ方を提案する書店が増えている。先日リリースした『ACROSS』のPDF版フリーペーパー「the across」vol.4では、インディペンデントな小規模ショップが独自の文化圏を形成している下北沢の“今”を「ちょうどいいまち、“ゆるタウン・シモキタ2013」(ダウンロードはこちらから)としてまとめたのでぜひご覧頂きたい。

そんな下北沢北口に12年10月にプレオープンした、ここ「ピリカタント書店」も、その新たな流れを感じさせるユニークな本屋として話題を集めている

店舗があるのは、かつてギャラリー「commune(コミューン)」があった場所(2011年新代田に移転後の取材記事はこちら)。「ピリカタント書店」では「旅と暮らし」をテーマにセレクトした古本(一部新刊書あり)と雑貨などを販売するだけでなく、世界の家庭料理を提供するのが特徴

店主はアノニマ・スタジオ(出版社)で編集者として本づくりに関わっていた西野優さん(29歳)。11年11月に知人にこの場所を紹介されたことが出店のきっかけだという。「それまで10年後くらいに自分の店を持てたらと、漠然と思っていましたが、この物件を目の前にしたらやりたいことがどんどん膨らんできて。すぐに借りることに決めました」と西野さん。

12坪の店内は、自然素材を組み合わせたナチュラルな空間。内装は、知人であり、家具の製作や内装も手掛ける「noteworks」によるもので、都会の中にいながら自然とつながれる場所、室内でもアウトドアを感じられる空間を目指し、本や写真などでイメージを共有して作り上げたという。

「昔から本作りに興味があった」という西野さんは、文化服装学院で広告・雑誌メディアを学んだ後、音楽制作会社の販促デザインチーム、大手出版社でのアルバイト勤務を経て、食と暮らしの本を出版するアノニマ・スタジオに入社。「ごはんとくらし」をテーマとした、食や暮らしにまつわる書籍の編集に携わった。

アノニマ・スタジオは、出版事業のほかイベント、料理教室、ミニライブ、展示を行うなど、本から広がる世界を展開する出版社。その中で「大量生産とは対極の小さな単位で作る楽しさを知った」(西野さん)という。

「充実した毎日でしたが、忙しい日々の中で、どんどん情報を更新していくことに疲れてきて。次第に自分には本作りとは別のアウトプットがあるのかも、と考えはじめました。ここで一度生き方をリセットしようと、旅に出ることにしたんです」(西野さん)。

退社後は、アルバイトをしながらお金を貯め、月一度旅に出る生活に。トルコやタイ、イタリア、フランス、アメリカなど13カ国を旅した。

「旅はだいたい予定も立てずいきあたりばったり(笑)。そのほうが、現地の人たちとの思いがけない出会いがある。何より旅中で感動するのは、夕景など日常の何気ない瞬間でした。旅は非日常ではなく日常の延長で、”毎日は同じではない”と改めて気づいたんです」(西野さん)。

旅をライフワークとする生活の中で、偶然にも「環境が整ってしまった」ことから、1年をかけて開店準備をスタート。北海道出身の西野さんは、アイヌ語で「美しい今日」を意味する「タントピリカ」をもじって、店名を「ピリカタント」と名付けた

「普段の生活に、旅の要素を持ち込んで暮らしたいと、”旅と暮らし”をテーマにしました。編集とお店をやることは別のようですが、自分の中では同じところから来るもの。良いものを伝える架け橋のようになれたら」(西野さん)。
 
 
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休日ともなると、噂を聞きつけたカップルや女性グループ、遠方からの来店も増える。商品のセレクトの基準は、長く愛される普遍的なもの、消費されずに循環していくもの、だそう。
西野さんもそのスタンスに共感しているというアメリカ発の雑誌『KINFOLK』。“食”や“コミュニティ”などをテーマに美しい写真と共にインスピレーションを与えてくれるライフスタイルマガジンだ。コップはガラスをリサイクルして作られた琉球ガラス。
本棚があるスペースはゆるくカフェスペースと分断された作りのため、ゆっくり本を選ぶことができる。「椅子に座って自由に本をご覧になってください」(西野さん)。
じっくり本を読む人、お酒をたしなむ人、お茶を飲む人、晩御飯を食べる人、西野さんとの会話を楽しむ人、など、過ごし方も人それぞれ。
暖かい蒸気と食欲をそそる香りが漂う店内。カウンターでは自然と隣り合った人同士での会話が生まれ、下北沢の新しいコミュニティスペースとしても機能し始めている。
内装を手掛けた「noteworks」は家具製作を得意とするだけあって、ドアや窓枠といった建具の作り込みが美しい。
下北沢駅北口から徒歩3分ほどという駅近の立地。1階に「やなか珈琲」が入居する赤い煉瓦造りの建物の2階が「ピリカタント書店」だ。
 本はほぼ古書で、自身が編集を手がけた作家の新刊書も一部取り扱う。古書組合には入っておらず、西野さん自らが古本市などで集めた児童書や文学、エッセイ、写真集などが中心。選ぶのは、読み終わった時に夢や希望が持てるもの(西野さん)。一方、雑貨は、再生ガラスで作られた沖縄・読谷村のガラス工房「彩砂」の琉球ガラス、インドのサリー地を使ったバッグ、カリフォルニアで見つけたハーブやスパイス類など、旅先で出合ったアイテムを中心に揃える。

セレクトの基準は、長く愛される普遍的なもの、消費されずに循環していくもの。オーガニックにもこだわっていますが、敷居の高いオーガニック製品ではなく、かわいくて一般の人が手に取りやすい価格帯のもの、普段使いできる民芸の器など、普段の暮らしで使えるものを意識しています」(西野さん)。

さらに、店の半分を占めるカフェスペースでは、世界の家庭料理とドリンクを用意。「アノニマ・スタジオで、生きる基本は食べることと学んだ」という西野さんが、旬の自然栽培の野菜、ハーブやスパイスを生かし、五感をフルに使って手作りした料理を提供する。メニューは5種程度の惣菜のほか、惣菜、スープ、知人のパン屋「KAISO(カイソ)」(下北沢)のパンがセットになった定食(1200円)、ドリンクはハートランドビール(500円)、国内外の日替わりのビール(800円~)、グラスワイン(500円)、手作りのジンジャーシロップ・レモネードシロップを使ったドリンク(500円~)など。

仕事で出合った人や知人とのつながりから、様々なイベントも開催する。これまでにも、西野さんが編集を手がけたイラストレーター・ナカムラユキさんの出版記念トークイベント、同店にも野菜を卸している、旅する八百屋「ミコト屋」の野菜を販売する”週末マルシェ”、フローリストchi-koさんの花や植物の販売と、ハーブを使った料理を楽しむ”一日花屋” などを開催し、好評を博している。

客層は20~40代の男女が中心だが、中には60代の女性が訪れることも。昼間はショッピング途中に立ち寄る人も多く、夕方以降には近所の住人が増える。1人客も多く、夜は仕事帰りの女性が1杯飲みながら本を読んでいくこともあるというが、それが西野さんの理想ともいう。

夜12時までやっているのは、働く女性にも仕事帰りに立ち寄って欲しいから。家に帰る前に、ここでリセットして元気なって、自分らしく家に帰って頂けたらうれしいです」(西野さん)。

昨今、大資本チェーン点の増加が目立つが下北沢だが、同店のように若いオーナーが手がける個人店もじわじわと増加している。前述した本屋だけでなく、同店にもパンを提供する30代店主によるベーカリー「KAISO」古着屋「FILM」などジャンルも幅広く、それらの個性がこの街独自のオルタナティブなカルチャーを盛り上げている。やはり下北沢へのこだわりがあったのかと尋ねると、「特にこだわりはなく、出店するなら逗子などのんびりした場所を考えていた」と西野さん。

「でも実際にオープンしてみると、賑やかな街の中に、工務店やおせんべい屋さんが並ぶ小さな商店街があったりと、人々の暮らしが根付いている街なんだと気づいて。近隣のお店の人が来てくれたり、こちらが遊びに行ったりと、人とのつながりが残っているのも魅。今は改めて下北沢に出店して良かったと思っています」(西野さん)。

今後はヨガや手芸、語学など、さまざまなワークショップも行っていく予定で、ゆるく変化を続けて、常に新鮮な空間にしたいそう。

「目指しているのは、この街の生活の一部にあって、子どもからお年寄りまでいろんな人が混ざるパレットのような場所。“街の商店”のような店になれればいいなと思っています」(西野さん)。

取材・文/渡辺マキコ+『ACROSS』編集部 】
 

ピリカタント書店

東京都世田谷区北沢2-33-6 2F 
☎03-6804-8150
営業時間: 水木金/15:00〜24:00 土日/13:00〜24:00 
定休日:月火


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