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「シティボーイ2013」台頭のなぞを解く。
レポート
2013.03.02
この記事のカテゴリー |  ファッション | 

「シティボーイ2013」台頭のなぞを解く。

「POPEYE」と「ニューバランス」の人気が予感させる、
90年代「シティボーイ」の再来

キャップやニット帽、デカリュック、マニッシュ靴、スケートボード、自転車、スモールカフェ、 DIY......。本サイトでは既に何度となく、1990年代らしい「ストリートカルチャー」というトレンドのリバイバルの兆しをレポートしてきたが、今春夏はより大きなムーブメントとして注目を浴びそうだ。

そのキーワードともいえるのが今回注目したい「シティボーイ」である。50代以上の男性には、懐かしくも少し気恥ずかしさすら感じてしまう単語だが、実は今、彼らの子ども世代ともいえる90年代生まれの若者たちに支持されているのである。
2012年6月号にリニューアルした「POPEYE(ポパイ)」マガジンハウス。創刊当時のコンセプトである「Magazine for City Boys」を再びコンセプトに。
「ポパイのシティボーイ特集をお手本にしています」と言う大学生のAさん。

この風潮に少なからず影響を与えているのは雑誌POPEYE(ポパイ)20126月号からMagazine for City Boysと創刊当初のコンセプ トを再び掲げ、大幅にリニューアルをした。

「昨年、POPEYEのシティボーイ特集を見て面白いなと思い、お手本にしています」と言うのは、2013年1月の「定点観測」渋谷地点でインタビューした23歳の大学生Aさん(#04760)。中目黒の人気ライフスタイルショップ「1LDK(ワンエルディーケー)」で買った「ユニバーサルプロダクツ」のキャップに、ジョニー・デップが映画「シークレット・ウィンドウ」で掛けていた「タート」というブランドのメガネを掛けていた。

さらに岡山で修業を積んだ店主自らが企画、生産、販売を手がけ、目黒区五本木にショップがあるメンズブランド「イール」のコートやシャツ、パンツを着用。アメリカに実質的に残る唯一の企業である「タイメックス」の腕時計をし、十数年ぶりに復活した裏原系ブランドの「ダブルタップス」のデザイナー西山徹氏のブランド「40%アゲインストライツ」のトートバッグに、「ニューバランス」のスニーカーと、全身隙なくこだわりのアイテムでコーディネートしていた。

人気のスタイリスト、長谷川昭雄氏が、少し短めのパンツに白いソックスをチラ見せした「ハズし」感覚や「ユルさ」がおしゃれだと誌面で紹介していたのを見て、まねているそうだ。


 

「『POPEYE』は毎月買ってちゃんと読んでいます」と言うのは、2013年1月に実施した「定点観測」のインタビューで出会った21歳の大学生Bさん(#04761)

もともと古着が好きで高円寺によく行くそうだが、最近のお気に入りは、アメリカの人気スケーターブランド「シュプリーム」やスポーツブランド「チャンピオン」のスウェットパーカー、さらに15万円ほどで買ったイタリアのハイクォリティ自転車メーカー「GIOS(ジオス)」社の「AMPIO(アンピーオ)」だという。

高級ブランドのものが好きなだけでなく、例えば「無印良品」のトートバッグに自分でワッペンを縫いつけるなど、DIYマインドもあるようだ。

インタビュー時にも履いていたスニー カーは「ニューバランス」。2年ほど前に「大人っぽくしたい」と「コンバース」から履き替え、他にも4足持っていると話してくれた。「次に買いたいのは『白山眼鏡店』の丸縁メガネです」と言う。

他にも「POPEYE」を買って読む若い男性は急増。コレクショントレンドをいち早く安価で市場に提供するファストファッションがおしゃれの出発点だった90年代生まれの若者たちにとって、「キャップは◯◯の△△」「パンツは◯◯の△△」など、アイテムとブランド、品番や型番を限定し、ストーリーなどうんちくやディテールを紹介している雑誌には初めて出合ったのだろう。

同誌が載せる「定番商品」も、他誌にみられるような単なる表面的なトレンドや「モテ」といった「他者視点」ではなく、素材やパターン、技術、伝統など「品質」や「着心地」といった「自分視点」を促す内容になっている。商品やトレンドなどを紹介する人もタレントやモデルではなく、スタイリストやセレクトショップのオーナー、プロデューサーなど、ファッション業界を陰から支える30~50代のプロフェッショナルが多いのも特徴だ。そこには、「上の世代が教え、若い世代が学ぶ」という「師弟」のような関係性が形成されている点にも注目したい。
 
20歳の専門学校生が履いていた「ミタスニーカーズ」と「オッシュマンズ」と「ニューバランス」のトリプルネームの「モヒート」
 一方、ストリートを観察していると、シティボーイを標榜する90年代生まれの若者と類似するファッションをしている30代後半の男性も少なくないことに気づく。

20代で「裏原宿カルチャー」の洗礼を受けた70年代後半生まれのこの世代を「ACROSS」編集部では「ヘタウマ〈ポスト団塊ジュニ ア〉世代」と呼んでいる。この世代の大半は結婚し、子どもができるなどライフステージが大きく変化し、20代の頃に比べてファッションにかけられる費用が減少していたことは、彼らが30代になりたての4、5年前に埼玉や多摩エリアで実施した「定点観測・特別編」のインタビューでも明らかだった。となると
定番で安心できる「自分視点」の消費行動を続けているのもうなずける。

分かる人にしか分からない限定商品や定番ブランド同士のコラボ商品などを好み、近年は紙媒体からネット媒体にシフト。デジタルガジェットへの関心が高い一方で、食べ物や住まい、メード・イン・ジャパンのご当地ものへの関心も高い。編集部ではそんな彼らを、「ライフスタイル>ファッション」という消費行動の特性から「ライフスタイル系」と命名している。

「ライフスタイル系」のトライブは、東京だけでなく、 全国の都市部で増えているようだ。老舗スニーカーショップの「ミタスニーカーズ」と米国のスケーターブランド、さらにニューバラ ンスを合わせたトリプルコラボモデルのスニーカーを履いていた36 歳の会社員Cさん(#04763)は、そのトライブの代表のようだった。

着ていたのはニューヨーク在住 の鈴木大器氏がデザイナーを務めるアメカジブランド「エンジニアドガーメンツ」のトレーナーに「ディーゼル」のパンツ。時計は「Gショック」

「20代の頃はコンバースやリー ボック、ナイキなどを履いていま したが、最近はニューバランスですね」と話す。

色味が落ち着いており、ほどよいボリューム感が大人っぽい印象なのだそうだ。そんな彼に、リニューアル後のPOPEYEは見たか尋ねると「ネットで見た」と回答。直接ファッションの情報源にはなっていない様子がうかがえた。

そんな折、この世代に人気の藤原ヒロシ氏が手がけるオンラインマガジン『Houyhnhnm(フイナム)』ニューバランスのタイアップ記事を掲載しているのを発見。スタイリストやプランナー、フリーのバイヤー、工芸デザイナー、ライター、DJ、ミュージシャンなど比較的自由な働き方をする30代の日常生活やこだわりが、ニューバランスとの関係性を通してユルく描かれており、90年代ストリートカルチャーの代表的な雑誌の一つ「relax」が思い出された。
このように、ディテールこそ異なるものの、4世代にまたがって共通して支持されるのは、
1)表面的なトレンドをただ消費するのではなく、
2)ファッションに限らず、さまざまなカルチャーへの造詣を深め、
3)自分自身のこだわりを見つけ、
4)自分なりの着こなし、ライフスタイルを楽しみましょう、ということだろうか。 

マスマーケットにおいて「自分の欲しいものが分からない、選べない」や、「人が持っているものが欲しい」という志向性から台頭している「サブスプリクション型消費」とは対峙する1~4の消費行動のインサイト。それが「シティボーイ」と同義語かどうかは本家『POPEYE』誌をはじめ、さまざまな解釈があると思われるが、「メンズファッションらしいこの価値観」が、昨今の女性のファッションにも影響を与えているのは確かである。

(文:高野公三子/「日経消費ウォッチャー」2013年2月号掲載記事より修正・加筆)


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