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BYOB Factory Tokyo(ビョブ ファクトリー トウキョウ)
レポート
2013.02.22
この記事のカテゴリー |  カルチャー |   ファッション | 

BYOB Factory Tokyo(ビョブ ファクトリー トウキョウ)

自分の自転車を自分で作る(=Build Your Own Bike)
日本初・DIYユーザーのためのフレーム制作スペース

競輪用の競技車輛づくりをベースとしてきた日本のフレームビルディングは、これまで一般のユーザーには非常に敷居が高い世界だった。BYOBは「フランクかつオープンで、 誰でも自転車のフレームを作れる場所」を目指している
ユーザーから持ち込まれるアイデアスケッチなどをベースに「Bike CAD PRO」という自転車設計ソフトで設計図面を作成する
ロードレーサーだけでなくシクロクロスやクルーザー、ランドナーなど多彩なスタイルの自転車を設計できる
合金製の部材を溶接加工してフレームを組み上げる。画面手前に見えるのが組み立てられたフレームで、早いユーザーなら1週間程度で作業を完了させるという
完成車のサンプル。既存のスポーツサイクルともミニベロ(小径車)とも微妙に違うデザインバランスだ
自転車ユーザーの間で、ここ最近注目を集めているのが自転車フレームのハンドメイド。FabやDIY志向の高まりと、自転車カルチャーの広がりを象徴するひとつの動きである。

日本初の自転車フレーム制作スペース”として2012年4月、中落合(東京都新宿区)にオープンしたBYOB Factory Tokyo(ビョブ ファクトリー トウキョウ)。「BYOB」とは“Build your Own Bikes”の略で、「誰でも自転車のフレームを制作することができる工房」というコンセプトを表している。

システムは1日利用(9:00〜17:45)1万2,600円、夜間利用(18:00〜22:00)6,300円の2形態で、初期費用として利用者は5日間分を先払いする。フレームなどの制作に必要な部材は一通り用意されており、最低限動く形のスタンダードなフレーム1本分を作るためのキット価格が2万6,000円〜3万5,000円。これに希望するパーツなどの内容によって価格が決まってくる。早い人なら1週間くらいで1台分を完成させるというから、単純計算で12万円台からの予算で自分だけの自転車を作り出すことが可能ということになる。

利用にあたり、ユーザーはまず作りたい自転車のイメージをスタッフに伝え、図面化する作業からスタート。溶接加工などの工程も、必要に応じて作業をサポートしてくれる。

「ただ場所を貸しているだけではなく、最初の設計図づくりからスタッフが一緒にフォローしています。作業の流れの中で細かな要望を伺いながら進めていきますから、作り方が全く分からないという方でもフレームを完成させることができます」

と語るのは、この「BYOB」を立ち上げたフレームビルダーの高井悠さん。自身の自転車フレームショップ「Sunrise cycles(サンライズ サイクルズ)」を経営している。

「もともと完成車の企画を仕事にしていたんですが、年くらい前から自宅に設備を作って独学でフレームを自作していました。しかし日本のカスタムビルダーは競輪などスポーツ用車両を造ることを目的とした職人技の世界で、部材一つとっても望むものがなかなか手に入らないことが多かったんです。そこで、もっと自由な発想をもって自転車を作りたいと思って始めたのが『サンライズ・サイクルズ』なんです」

高井さんが初めてオリジナルのフレームを発表したのは2010年。そして2011年春からウェブサイトでフレームの直販を始め、工房兼ショップをオープン。それから半年くらい経ったところでこの物件を紹介され、以前から構想していた「フランクかつオープンで、 誰でも自転車のフレームを作れる場所」を作ろうということになった。

スペースを立ち上げるための設備投資など、資金はツイッターと口コミで集めた。一口5万円・無期限で場所貸しは無料という条件で30名の出資者を募ったところ、5日ほどで枠が埋まった(!)というから、その注目度の高さが伺える。ちなみに出資者のうち28名が男性、2名が女性だ。
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高井さん(写真左)をはじめフレームビルダーやデザイナーなどが共同で立ち上げたBYOB。管理人を務める窪山勝也さん(同中)、顔ステムの中村さん(同右)など5組が参加してスタートした
“いきなりフレームを作り出すのはちょっと不安”という方にはクロモリステムを1日で製作する体験版BYOB「ステム製作教室」も。フレーム製作の要素の詰まった工程を体験できる。参加費は材料費込みで29800円
既存のフレームにカスタマイズを施してオリジナルのフレームを作ったり、ドレスアップすることも可能だ
「顔ステム」のオリジナルステム。ステムとは自転車のハンドルバーとフロントフォークをつなぐパーツで、市販の自転車でもエンブレムを配されることが多い“顔”となる部分である
フレームビルディングにかかせないジグ(治具)。これはBYOBのオリジナルジグで、2013年春に販売が予定されている
「ハンドメイドサイクル展」に出店された高井さんのショップ「サンライズ・サイクルズ」のオリジナルバイク。これまでの競技色の強いものと趣味性の高いもの、そのいずれでもない新しいハンドメイドサイクルが誕生しはじめている
各種パーツや同ショップのオリジナルグッズの販売コーナー
「フレームビルディングに詳しい方が集まると思っていたのですが、実際にオープンしてみたらそういう方は半分くらい。あとの半分は“自転車を自分で作ってみたい”という好奇心でいらっしゃる方たちでした。エンジニアや加工屋さんなど、自転車以外で仕事としてものづくりに携わっている方が多く、僕らからはまず出てこないような独特のアイデアが出てくることもありますよ」(高井さん)
 
実はこの「BYOB」は、高井さんをはじめとするフレームビルダーやデザイナーなど5組が共同で立ち上げたもの。このスペースに常駐して管理人を務める窪山勝也さんは
cicli KATSUO(チクリ・カツオ)」という自身のブランド名で自転車のフレームやパーツの製作、補修・改造などを行っている。

「自転車を作りたいと思うと、当時はメーカーに就職する他に選択肢はありませんでした。ある中規模のメーカーで働いた後、個人でフレームビルダーの仕事をしていこうと考えていた頃に、ちょうど高井さんがここを立ち上げることになったんです」(窪山さん)

日本ではフレームづくりに必要なジグ(フレームを接合するときに金属管を固定する道具=治具)など“自転車を作るための設備”が一切流通していなかった。BYOBオリジナルのジグを作り上げたのは、金属加工を本業とする中村さん。高井さんから設備の相談などを受けるうち、自然にBYOBに参加するようになったという。彼もまたBYOBや本業と別に顔ステム」というブランドでパーツを製造・販売している。

それぞれがフレームビルダーやパーツメーカーとしてブランドを持ち、平行して自転車づくりの場としてこのBYOBという場所をシェアする、という運営形態も面白い。自転車づくりを核としたシェアスペースであり、趣味を媒介とした新しいサロンのといっていいだろう。

2013年1月にはイベント「ハンドメイドバイシクル展」が一般財団法人・日本自転車普及協会 自転車文化センター主催のもと、科学技術館(東京都千代田区)で開催された。BYOBや東京サイクルデザイン専門学校(東京都渋谷区/2012年オープン:取材記事はこちら)も参加し、ハンドメイドビルダーの技術をアピールした。

「日本でもここ4〜5年、多様な自転車のあり方が認められてきているという実感はあります。サイズ感や仕様、カラーなど、細かい部分で既製の自転車に満足していない方はまだまだ多いと思います。そういうニーズに合わせて、細かい部分を微調整して製品やサービスを提供できるのが僕らの強み。自転車を作るための設備から部材、パーツまで、何でも必要とあれば作り出すことができる場所として発信していきたいですね」(高井さん)

2013年春からは「BYOB」オリジナルのジグの販売も予定されている。この場所から自転車のフレームビルディングという文化が全国へと広がれば、その土壌からやがてオリジナリティあふれる新しい自転車が生まれるかもしれない。自分が本当に好きなものに触れ、必要とあらば時間をかけてでも自分で作る。そんな丁寧に暮らすライフスタイルの一つの現れとも言えるだろう。

 
いまや自転車は単なる移動手段ではなく、スポーツやホビーなどさまざまな意味合いを持つ重要な生活ツールである。最近でも、自転車を積んで出かける「サイクルバスツアー」やファミリー向けイベント、女性限定レースなど、自転車を巡って新しい動きが続々と生まれている。自転車そのものの多様化が進んでいけば、ファッションなど他ジャンルと組み合わせた魅力ある商品やサービスが生まれてくる余地はまだまだある
 

2013年1月17日にも、東京都三鷹市に自転車のカスタマイズが楽しめる会員制作業スペース「自転車の楽園 by Cycle Paradise」がオープンしている。自転車のDIYカルチャーは今後さらに裾野が拡がっていきそうだ。


【取材・文: 本橋康治(フリーライター)across編集部 】

BYOB Factory Tokyo(ビョブ ファクトリー トウキョウ)

〒161-0032
東京都新宿区中落合3-29-5 1F
03-6908-3934



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