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Reno Bicycle Project(リノ バイシクル・プロジェクト)
レポート
2014.09.10
この記事のカテゴリー |  カルチャー |   ファッション | 

Reno Bicycle Project(リノ バイシクル・プロジェクト)

ママチャリ × カスタム × デザイン = Reno
不要になった自転車を魅力的にリノベーションするプロジェクト

 ビニール傘のように使い捨て感覚で扱われることが多い、いわゆるママチャリ。しかし、そこから余分なものを捨て、パーツを替え、街乗りに丁度いいデザインに再創造=リノベーションすることで、オンリーワンの魅力を持つ1台に生まれ変わらせることができる。「Reno Bicycle Project(リノ・バイシクル・プロジェクト)」は、そんな新しいスタイルの自転車再生プロジェクトである
「Reno Bicycle Experience 2014」の会場風景。2013年に制作された6台のRenoバイクが展示された
ママチャリのポテンシャルを引き出すことで、スポーツサイクルでも実用車でもない独特の魅力を創りだすことに成功している
ベース車両の色やサビもそのまま活かしながら作り上げる。「Reno」という名称には自転車のリノベーションという意味が込められている
ママチャリがベースになっているとは思えないヴィンテージ感を醸し出している1台
ハンドルやサドルなどのパーツを入れ替えただけで新しい魅力を持った1台に再生する
 
 スポーツとして、移動手段として、そしてライフスタイルのツールとして広がりをみせる自転車カルチャーを、ACROSSではこれまで継続的に紹介してきた。その一方で安売りチェーンやディスカウントストアなどで販売された安価な自転車が使い捨てられ、年間約60万台の自転車が撤去されている(
2013年度東京都調査のが現状だ。

「この温度差はいったい何だろう? モノの価値ってどこで決まるの?」
そんな疑問から、宮城野信太郎さんが2012年にスタートした自転車再生プロジェクトが「Reno bicycle(リノ・バイシクル)」だ。「Reno」という名称には、自転車をリノベーションするという意味が込められている。

宮城野さんが2013年に作り上げたRenoのバイクを集めた展示会が、2014年3月に開催された。会場のギャラリー「HIGURE 17-15 cas」に展示された車両は6台。一つ一つが手作りで、それぞれのオーナーたちの手に渡っていたバイクを再び集めての展示となった。

ベースとなっている車両は、廃棄処分されたママチャリや流行遅れのデザインになったマウンテンバイクなど、もう乗られなくなった自転車ばかり。ママチャリのフレームが本来持っている曲線をそのまま生かしたことで、スポーツ系バイクでもない、全く新しいデザインの自転車になっていることが写真からもお分かりいただけるだろう。基本はベース車両の色やサビなどもそのまま活かしながら、余計な装飾を外して用途に合わせたパーツを組み合わせることで、他にはない個性を持ったバイクに変化している。必要に応じてリペイントをする場合もある。

宮城野さんの本業はプロダクトデザイナーで、Renoプロジェクトにかけられる時間は週末限定。そのため、生産ペースは年間3〜4台程度だという。作品と呼ぶにふさわしいデザインと手間暇をかけて作り上げられているのである。

宮城野さんが自転車の魅力に惹かれるようになったのは大学時代。ロードレーサーに乗るようになり、飛び抜けて運動神経がいいわけではない自分が100km近い距離を走り切ることができることに衝撃を受け、自転車という乗り物と自身の身体への観方がガラリと変わったという。
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宮城野さんが試行錯誤を重ねて組み上げた1台が周囲の評判を呼び、次々とカスタムの依頼を受けるようになった
依頼主との対話を重ねることで、そのライフスタイルや価値観をデザインに反映させるのがRenoのスタイル
Ronoのバイクは宮城野さんが1台づつ手作業で組み上げている。制作は年に数台というペース
展示会「Reno Bicycle Experience 2014」は西日暮里のギャラリー「HIGURE 17-15 cas」で開催。日常の足であると同時に作品でもある
流行遅れとなったマウンテンバイクを再生させた1台
作品それぞれのBefore/Afterが展示で分かるのが面白い。自転車が辿ってきた歴史やオーナーの思いが反映されている
Renoバイクの展示会は年に1回のペースで開催される予定。次回開催は2015年7月17〜20日の予定
Renoバイクと宮城野さん。今後はRenoのスタイルに合ったカゴの開発などにも取り組んでいきたいという
そんな宮城野さんが放置自転車への違和感を感じるようになったのは、就職して数年後に一人暮らしをするようになってから。
「その時住んでいたのがたまたま都内でもっとも放置自転車の多い地域で、駅前などのひどい状況を毎日見るうちに疑問に思うようになりました。
高価な自転車が売れている一方で、大量の自転車が放置され、リサイクルされた自転車が途上国に船で送られています。そんな日本の自転車文化は何かがおかしいと思うようになったんです」(宮城野さん)

ゴミ同然だった自転車を魅力的な乗り物へとリノベーションしようと考えた宮城野さんは、自転車カスタムの技術を学ぶために杉並区のあるショップに通うようになった。試行錯誤を重ねながら組み上げた1台が周囲から高く評価され、カスタムの依頼を受けるようになったという。そしてそれが「Reno」というプロジェクトへと発展し、宮城野さん自身もそのショップの近所に引っ越すまでになった。

プロダクトデザイナーとしてのデザインの力に自転車作りの技に加えて、もう一つ重要なのが自転車への愛情だ。宮城野さんは、依頼者たちのライフスタイルや用途などを丹念に聞いたうえで、リノベーションの全体像をデザインしていくという手間のかかる作業を行っている。

Renoを作っていく上でまず一番大切な事は、お客様がどんな方なのかをよく知ることです。お客様の生活や価値観などをじっくりうかがって、その人に合った自転車のタイプやデザインをイメージするんです。基本的に、街乗りが楽しくなる自転車であることをイメージして作っています」(宮城野さん)

古くなった自前のママチャリをリノベーションしたい、という要望を送ってきた依頼主との打ち合わせに同席取材させてもらった。今回のベース車両は依頼主が東京に出てくる時に両親が買ってくれたもので、露天に停めているのでサビも浮いてきたが棄てるにはしのびない、という。そんなオーナーと自転車とのつながりから、「旅行が好きでアジアによく行く」「マラソンにもチャレンジしている」といった直接自転車にはつながらないようなことまで対話を続けていく。一方、宮城野さんからもRenoを通してやりたいことをお客さんに伝え、価値観の共有を行なっている

速く走り、競技に勝つという点に目的が限定されるロードレーサーとは違い、ママチャリ/実用車はそれぞれのフォルムが多種多様な個性を持っている。無駄な装備を省き、そこにユーザーの乗り方や趣味指向に合ったパーツ類を加えることで、依頼主の想像を超える新しい自転車を組み立てることで、オンリーワンの個性を持った1台を生み出すのがRenoの魅力だ。

自転車マーケットの広がりに伴い、ここ数年で多様なスタイルの自転車ショップが生まれている。ユーザーの希望に沿ったカスタム化に対応するショップも増加しているが、ほとんどはスポーツバイク中心のコアなファン向けのもの。
Renoが行うリノベーションは、速さの追求や軽量化ではなく、依頼者のライフスタイルを反映させた快適さやデザイン性を追求するもの

Renoが現在直面している課題は、ベース車両の入手ルート。かつては廃棄自転車を仕入れて、それをベース車両として制作していたが、かつてのように簡単に入手できなくなったという。現在は依頼者がベース車両を持ち込んでの依頼のみを受け付けている。
 

「リサイクル」「リユース」ではなく、一台一台に向き合いながら「リノベーション」を追求するRenoプロジェクト。そこから生まれるバイクには作品としての性格が強く、今のところ制作のペースも年に数台という規模だ。しかし、
ありきたりの素材から予想外のデザインを引き出す面白さや、スポーツでも実用車でもない独特のバランスを持つフォルムなど、Renoにはまだまだ大きなポテンシャルがありそうだ。新しい自転車デザインの可能性も感じさせるプロジェクトである。
 

 
【取材・文: 本橋康治(コントリビューティングエディター/フリーライター) 】 

Reno Bicycle Project

店舗での取り扱いはなし
http://renobicycle.tumblr.com/

制作依頼について
まずはメールで直接ご相談を
reno.bicycle@gmail.com

Reno Bicycle Experience 2015
開催日程:2015年7月17日〜20日(予定)
HIGURE 17-15 cas
〒116-0013 東京都荒川区日暮里3-17-15


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