device.TOKYO

device.TOKYO

レポート
2004.01.26
ファッション|FASHION

キャットストリートと明治通りの狭間、ウラ・キャットストリート。大手資本が進出しがちなオモテに比べ、渋谷と原宿を繋ぐ重要なゾーンとはいえまだまだ民家が立ち並ぶ路地裏には、実験的で時代を先取るショップの登場が目立つ。そんなエリアに、03年12月7日、築40年の民家を利用した「device.TOKYO(ディバイス)」がオープンした。これは、京都に売り場面積130坪の本店を構える個性派セレクトショップの2号店である。

古い日本家屋をそのまま活かした同店は、1階(18坪)がショップ、2階(14坪)が東京のプレスルームという構成。色鮮やかでアバンギャルドな洋服や小物が雑然と配される店内はどこかシニカルでもある。よく見ると数万円というタグが付けられている商品であっても、チープで無造作なディスプレイで気負いが全く感じられないのが今までのセレクトショップとの違いだろうか。

ショップコンセプトは「折衷」。テーマを設けず、バイヤーやスタッフが「面白い」と感じたものを商品、コーディネート、ディスプレイ、ポスターや新聞等のビジュアルにより総合的に表現しているため、結果的に価格帯も幅広くなるのだそうだ。

取り扱うブランドはTheatre PRODUCTS、Mitti、POTTO、kocho、DRESS CAMP、HISUI、Yoshiko☆ CREATiON Parisなど、時代を象徴する新進ブランドばかり。現在、東京店では15〜20のブランドを扱っているが、その時々で個性やパワーを感じるものをセレクトしているため、こちらも常に流動的。国内外はもちろん、有名無名も問わないという柔軟性が、この独特の空間を生み出しているともいえる。また少量だが古着も取り扱っている。

「01年にオープンした京都店は大バコの個性派セレクトショップとして認知され、わざわざ名古屋や東京からいらっしゃるお客様も少なくありませんでした。それがもっと多くの方に見て頂きたいという思いに繋がり、今回の東京進出に至りました。個性的なセレクトですが、敷居の高いショップになるつもりはありません」とプレスの柏野繁大さんは言う。

セレクトの他にオリジナルの商品も展開しているが、「オリジナルもワガママブランドで」(柏野さん)と、特定のブランド名を持たないのも特徴。シーズン毎に色の名前をブランド名にしているのだそうだ。ちなみに先シーズンは「パープル」、今シーズンは「グリーン」なのだとか。

同店を運営するのは(株)ヒューマンフォーラム。95年9月に古着・雑貨を扱う「スピンズ本店」(京都)をオープンして以来、西日本を中心に「スピンズ」を7店舗、メンズファッションの「コンクエスト」を6店舗など、精力的な出店を行う企業である。当時からユースカルチャーの活性化を意識したプロモーションを行っているのが特徴だ。クラブイベントに留まらず、様々な若手アーティストとのコラボレートTシャツをプロデュースしたり、2001年7月に大阪のFMラジオ局FM802と共同で、才能ある若いアーティストのビジュアルブック『digmeout(ディグミーアウト)』を創刊するなど、幅広い活動を行ってきた経緯がある。

90年代後半のストリートシーンにおいては、イラストレターやグラフィックデザイナー、グラフィティ・アーティスト、メディア・アーティストなど、国内外を問わず「ストリート・アーティスト」が続々と誕生したのは周知の事実。同社は、そんな彼らの作品発表の場を提供しようとメディアをプロデュースしたり、ギャラリー・イベントを企画するなど、インキュベーターとしての役割も担っていたといえるだろう。

そんなストリート・アーティストが生み出す「クリエーション」というトレンドが、ファッションへと波及するのは当然のことである。商品をスタイリッシュに見せる京都店とは異なり、『device TOKYO』は、あえてチープなハコに等価に配置することで、改めて国内外、有名無名のブランドであることやクォリティの違い、テイストの差といった既存の価値観をいったん壊そうとしているかのようでもある。

新進気鋭の服飾・小物デザイナーが続々登場し、第5次インディーズ・ブランドブームへと発展しつつある今、このような新しい感覚のショップはますます増えると思われる。

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