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静岡おでん屋 6(ROKU)

静岡おでん屋 6(ROKU)

レポート
フード
2005.05.17
この記事のカテゴリー |  飲食・フーディング | 

下町風情残る宇田川町のはずれにオープンした、地元密着型の「静岡おでん屋」

店名の「6」は敷地の広さから命名。「意味や
思い入れがない名前が良くて」(渡辺さん)
通りに面した壁いっぱいの窓が心地よい。
左から、白もつ、黒はんぺん、大根。
ほとんどの具が串に刺さっているのも特徴。
ひとつ150円という良心的な価格で、客単価
は2000円程度とたいへんリーズナブル。
「磯自慢」や「花の舞」など静岡の地酒も
揃う。食事メニューはおしゃれっぽさや奇を
てらったものではなく、あくまでお酒に合う
“つまみ”らしいスタンスだ。
日替わりのみのランチはスープ、コーヒー付
750円。近所で働くサラリーマンのために、
メニューはお肉系のパワーランチを重視。
おでんを選んだ理由のひとつは、ひとりでも
お客様を待たせずにできるから。味は記憶を
頼りに独自で再現。練り物や白モツから
出るだしにより、独特の風味が味わえる。
渋谷区宇田川町。レコード屋が世界一ひしめき合うことでも有名だが、中心地から数百メートルも離れないうちに、ざわついた街の空気が嘘のようにのどかな通りが出現する。オルガン坂を下って、ちょうど渋谷ビデオスタジオの裏あたり。理髪店や八百屋といった昔ながらの店がぽつりぽつりとあり、お年寄りがのんびりと散歩をしている。そんな静かな通りに05年3月23日「静岡おでん屋 6(ROKU)」はオープンした。その名の通り、東京では珍しい静岡独特のおでんを出す店である。

「昔からいつか自分のお店を持ちたいなと思っていました。自分の友達やなんかがふらりと立ち寄ってくれるような店だといいなと思って」。

この店のオーナー、渡辺彰子さんは静岡の出身。アパレルや映画、音楽業界を経て、念願の自分の店を開くとなったとき、“何か特色を持たせるなら出身地である静岡の名物を”と思い静岡おでんを出すことに決めたそうだ。

「東京ではあまり知られていないですけど、静岡では駄菓子屋さんでおでんが売っているんですよ。それも冬だけでなく夏も当たり前のように。子供の頃からおやつにおでんを食べていました」。

どこででも食べることができない珍しい料理は人々の興味を誘う。フツーのおでんとはまるで違う真っ黒い汁に驚くが、味は至って上品。東京でもおなじみの卵やこんにゃくなどに加え、白モツや黒はんぺんといった静岡独特の具が入っており、全て1本150円。だし粉と青海苔をふりかけていただくという、変わったスタイルだ。おでんに合う日本酒や焼酎も揃い、また「たたみいわし」や「かつおのへそ(心臓)」など、東京ではあまりお目にかかることのできないつまみも300円〜900円程度で楽しむことができる。素材は週2回、静岡の実家から届くという産地直送。渋谷のど真ん中の、リトル静岡ともいえそうな店だ。

「本当は渋谷は人が多くて好きじゃないんです。でも知り合いが気軽に立ち寄れる立地を考え、出店するなら渋谷と決めてました。でもここは渋谷の繁華街のすぐそばなのに、まるでサザエさんの世界みたい。オープンしてまだ間もないんですが、皆さんいろいろと助けてくれて。すごく暖かくて、まさに下町といった雰囲気ですね」。

店内には、アンティークのしゃれた革張りソファやシャンデリアなどが置かれているが、気取らないのんびりとした雰囲気。

「近所で働くおじさんでも気楽に呑みに来られるような雰囲気を心がけています。おしゃれっぽい店じゃなく、安くて、人懐っこい店にしたいですね」。

にこやかにおでんの火を整える姿は、まるで昔からそこで店を営んでいるかのような自然さで、渋谷の街にとてもよく馴染んでいた。

フツーの店では味わえない特徴を持っていながら、押し付けがましいところが一切ない店。そういった部分が“面白い店には行きたいけど、うるさいことは言われたくない”という現代人のニーズにぴたりと合っているのだろう。

ここ最近、中目黒を中心にジンギスカンブームが起きたのは記憶に新しく、最近では恵比寿や渋谷など若者の街に立ち呑みバーが続々とオープンしている。話題を提供できるような特徴を持ちながら、気軽に呑むことができる店というのが、近頃のトレンドのようだ。雑然とした街並みや人ごみに遭遇するたび、渋谷はもう人やモノ・店の飽和状態をゆうに越えているのではないかと思うのだが、この静かな通りだけでもここ数ヶ月で3件の新規店舗が誕生しているのだから、渋谷はまだまだ、新しく個性的な店をオープンさせるだけの余力を充分に持っているようである。


取材・本文/永溝はるか(フリーライター)

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