Wut berlin(ヴット ベルリン)

Wut berlin(ヴット ベルリン)

レポート
2006.05.10
ファッション|FASHION

ベルリンの若手デザイナーの溢れるクリエーションを体感できる
セレクトショップの誕生

バブルのように湧き出て拡散し、ひとつ
ひとつ空に消えていくさまを表現した
“Wut(怒り)は、ショップ内を巡り、
ファサードへと繋がっている。
やわらかい光がほどよくめぐる店内。
アクセサリー類のほとんどは1点もの。
キッチンだったスペースに無造作に置か
れた植木たち。壁面に描かれた葉っぱは
エティーナさんとソニアさん自らが描い
たものだそう。
年に数回、ベルリンからデザイナーを
招聘し、パーティを開催している。
こちらは、3月末に来日したデザイナー
のエスター・ペルボントさん。コンセ
プトは「ハングリー・フォー・ライフ」。
06年の2月17日、国内外の高感度なブランドを集めた個性派セレクトショップを運営するアッシュ・ぺー・フランス(株)から、またひとつ、新しいコンセプトのショップが誕生した。今度同社が着目したのは、ベルリン発のクリエーターに特化したショップで、店名は「ヴット ベルリン(Wut berlin)」という。

「オープンするきっかけとなったのは、弊社のバイヤー、ヤン・ル・ゴエックがベルリンにリサーチに訪れた時に見つけた、若手デザイナーの展示会やセレクトショップ『KONK(コンク)』との出会いです」と言うのはプレス兼ショップスタッフの高橋佳純さん。

同社はさっそく『コンク』と提携し、内装、外装も同ショップのオーナー兼デザイナー、さらにフォトグラファー、グラフィックデザイナーとしても活躍するエティーナ・シュカルツと、インテリアデザイナーとして活躍するソニア・ロッソの2人に依頼。高橋さんをはじめとする同社のスタッフも総動員で解体・内装工事に着手。約1ヵ月でふつうの住居だったスペースが瞬く間にアーティスティックな空間へと生まれ変わった。

「“ヴット(Wut)”とは、“憤慨”や“怒り”といった感情を表すドイツ語なんです」と言うのは同プロジェクトのディレクターでバイヤーのヤン・ル・ゴエックさん。

「近年、ベルリンはヨーロッパ中のクリエイターが大勢集まっていることで注目されています。ロンドンやパリに比べると経済的には困難な状況にも関わらず、多くのデザイナーたちがアートワークを行っているのです。そんな彼ら・彼女らが、“憤慨”に似た感情を持ちつつも、そのパワーやエネルギーを新しいクリエーションや新しい生き方へと変換しているさまに共感。店名にすることにしました」(ゴエックさん)。

取り扱うブランドは、ベルリンのデザイナーのものが12ブランド、日本のデザイナーのものが5ブランド、さらにパリやロンドンなど、ヨーロッパを中心とし、なかには、日本に1着というものもあるそうだ。

アイテムは、レディス・メンズのウェアの他、バッグやアクセサリー、靴、雑貨と幅広く、ディスプレイはブランドごとではなく、色やアイテム別に集積し、無造作に置かれた植木やアート作品でもある壁面やディスプレイなど、ファッションとアートが融合する空間となっている。さらに、それはファサードにまで繋がっており、独特のアーティスティックな雰囲気を醸し出している。

MDを見ていて興味深いのは、ベルリンのデザイナーによる商品と、日本のデザイナーによる商品に、共通する“Wut”なクリエーションが感じられることである。ていねいな手仕事によるプリントや、上質なシルク素材をたっぷり用いたドレス、キッチュなデザインのTシャツなど、派手に主張するのではなく、ハズし感のあるクリエーションがとても心地いい。実は、女性客の多くが、30代以上のファッション業界人というのも頷ける。

「ファッション雑誌やCM、テレビドラマなどで、モデルやタレントが着ていたものと同じものが欲しい」という志向性を持つ女性の増加が社会現象として注目される一方、そういった偏りがちなマーケットに流通する服では満足しない女性も確実に増えている。

コンセプトが見えないショップが増えるなか、同店は、そんな“通”な人のためのセレクト・ショップといえそうだ。



[取材・文/トマベチカオリ(フリーライター)+『WEBアクロス』編集室]



Wut berlin(ヴット ベルリン)
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前5-1-14 2F
TEL:03-5766-8520
FAX:03-5766-8521
http://www.hpfrance.com/
wut_berlin@hpgrp.com

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