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渋谷手芸部 『渋谷手芸ピクニック』

渋谷手芸部 『渋谷手芸ピクニック』

レポート
ライフスタイル
2006.05.31
この記事のカテゴリー |  カルチャー | 

ひとりで楽しむ手芸から、みんなで楽しむ手芸へ。
急速に変化する手芸事情!

集まりやすい場所を考慮し渋谷を拠点に。
「渋谷手芸部」という名称は、公民館を借り
る際に団体名を聞かれてとっさに出た言葉
だそう(!)。
大盛況だった「はんこを使って自分だけの布
を作ろう」のワークショップ。
みんな真剣なまなざし。
こちらは「スピンドルを使った糸紡ぎ入門」。
原始的な道具を使って羊毛から糸を紡ぎだす
単純な作業だが、これがなかなか難しい!
いつの間にか指導していた社団法人
日本編物文化協会事務局長の守田大地さん。
上手な人にアドバイスをもらえるのも
この集いの良いところ。
「はんこを使って自分だけの布を作ろう」
で出来上がった作品がこちらのポーチ。
ドクロモチーフは海外の手芸界では大流行
のモチーフ。
なかにはタベラのオーガニックランチ
ボックスに惹かれて参加した人も。
06年04月23日、日曜の昼下がり、代々木公園でレジャーシートを広げて手芸や編み物を楽しむ集団が・・・これは、今回レポートする「渋谷手芸部」活動現場『渋谷手芸ピクニック』の光景だ。

「渋谷手芸部」は手芸を愛する人が自由に楽しむための集い。手芸教室のように先生がいるわけでも、上達を狙っているわけでもなければ営利目的でもなく、ただ純粋にみんなで手芸を楽しむ“大人の部活”だという。05年01月以来、1〜2ヶ月に1回のペースで活動を続けており、4月のピクニックで9回目となった。

発足のきっかけは今流行りのSNS(ソーシャル・ネットワーキングサイト)「mixi」の「アートする手芸」(04年12月〜/参加者2122人)と「みんなで手芸。」(04年11月〜/参加者453人)のふたつのコミュニティー。それぞれの管理者の山下多恵子さん(30)と井上直美さん(28)が手芸部発足の立役者であり、部長を務める。2人とも小学生のころから手芸をこよなく愛する自称“手芸ミーハー”だ。

「単純に手芸の話ができる友達が欲しかったんです。教室もいいけれど、年代が上の方が多くて…やっぱり自分と近い世代の人と、トレンドやこまかい技術の話、絶妙なかわいさを共有したかったんですよね」(山下さん)。

「音楽好きの人たちが自分の好きなバンドについて話したり、共感しあったりするのと同じ感覚ですよ」(井上さん)。

遡ること2年前、04年夏にニューヨークで話題になっていた“ニットカフェ”ブームを早々と察知し興味を持った山下さん。当時東京で唯一行われていた渋谷のバーPink Cowのニットカフェ「Tokyo Stitch and Bitch」にたびたび参加していた。しかし参加者のほとんどが外国人だったため、mixiで一緒に行く人を募ったところ誘いに乗ったのが井上さん。「みんなで楽しく手芸をしたい」という共通の思いを持っていた2人はすぐに意気投合し、出会った1ヶ月後の05年01月には「渋谷手芸部」が始動することになる。

「1回目の部活動は渋谷区の公民館でした。参加者は10人ぐらいでしたが隣の部屋から苦情が出るくらい盛り上がったんです。家で悶々と手芸をしていた人たちの想いが一気に噴き出した感じですね」(井上さん)と、「手芸=家でひとりでやるもの」という概念は変わりつつあるようだ。

ミセスという印象の強かった綿ニットもコットンニットと呼び名を変えて若い世代に人気になったり、ここ1〜2年でオシャレな手芸本が急増するなど、手芸をとりまく環境は確実に変化している。「手芸=野暮ったい」という感覚ではなく、既製品にはない手作り特有のクラフト感にこそ目が向けられはじめている。その流れはヴィンテージやレースがトレンドとして浮上している時代の雰囲気とも重なる。

「編み物というアナログなことをあえてやるのが、新鮮なんだと思います。大量生産・大量消費に飽きてきた人たちが、一点ものの価値、ものを作る面白さや達成感に気付きはじめたんじゃないでしょうか。時代が一巡して60年代や70年代のモチーフの野暮ったさがあえて今っぽいという風潮もありますね」とは、ピクニック参加者のひとり、社団法人日本編物文化協会事務局長の守田大地さん。

今回の「手芸ピクニック」の参加者は約30人。20代半ば〜30代の女性が中心だが男性の姿もちらほら。職業もプロの手芸作家から編集者、メーカー勤務、雑貨屋と多種多様だ。「これをきっかけに手芸をはじめたい」という初心者も意外と多い。

この「手芸ピクニック」は渋谷のカフェレストラン「タベラ」とのコラボレーション企画第2弾として行われたもので、「タベラ」の特製のオーガニックランチボックス付で参加費1300円。ランチボックスを注文しない場合は無料で参加できる。「タベラ」運営元であり映画配給等を行うアップリンクが“手芸カフェ”の要素を取り込むべく、「渋谷手芸部」にオファーして実現したもので、これによりmixiのオフ会レベルから、広く一般参加者が集まるようになったというわけだ。メディアではもの珍しさからネタとして取り上げられやすい“ニットカフェ”“手芸カフェ”だが、実は日本ではほとんどその実態がなく、言葉だけがトレンドとしてひとり歩きしているというのが現状のよう。さらに、手芸ブームが“LOHAS”や“癒し”といったキーワードでまとめられがちなことにも、山下さんは首をかしげる。

「そもそも基本にあるのは、こんなのがあったらいいなというものを自分で作るということなんです。癒されるためにだけにやっているのとはちょっと違う気がするな」(山下さん)。

このようなアナログな大人の部活動を生んだのが、mixiというデジタルツールだったというのが何とも今っぽい。ブログ時代のネットの面白さが、同じこだわりや趣味を持つ人と人の繋がりを容易にした点にあることを象徴するケースのひとつといえるが、最終的にはアナログな「部活動」というリアル・コミュニティに着地しているのが興味深いところだ。そして、本来ひとりで楽しむ「手芸」をみんなでやろうという発想自体が、他人と繋がることに慣れたネット世代らしい感覚といえるだろう。


また5月13日-6月30日まで、渋谷パルコパート1・B1階で期間限定オープンしている「UPLINKマーケット」にて、渋谷手芸部員の手によるハンドメイド作品が販売されている。


[取材・文/重保咲+『WEBアクロス』編集室]

■参加者コメント■

○26歳 女性/雑貨メーカー企画
「1人でやっていると熱中してただ黙々とやりすぎて、暗くなっちゃいがちだけど、みんなで話しながらだと楽しい!」

○26歳 女性/アパレル企画アシスタント
「他の人の作品が見れるのでアイデアのヒントをもらえたりします」

○36歳 女性/手芸家
「手芸好きはなかなか見つからないので、こうゆう場所があってうれしいです」

○22歳 女性/アパレル企画アシスタント
「2回目の参加です。一人でやってると他の人のも見たくなるし、外でやるのは気持ちいい」

○26歳 女性/事務職
「たくさん作って京都のてしごとやで販売するのが夢なんです」

○32歳 女性/図書館職員
「mixiのコミュを見たのがきっかけです。普段はあまり手芸しないけど、まわりに教えてくれる人がいるとたちどまってしまうことがなくていいですね。時間があったらまた来たいです」

○23歳 女性/webデザイナー
「今日は2回目。この他にも友達と手芸部やってます。まだまだ初心者だけどみんなで集まってやると楽しいです」

○31歳 女性/フリーター
「手芸好きな人たちにいっぱい会い、自分もこんなの作ってみたい!と良い刺激がもらえました。ひとりで手芸するのも楽しいし、仲間とやるのも楽しいし、ますます手芸が好きになりました」

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