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ビースティ・ボーイズ撮られっぱなし天国

ビースティ・ボーイズ撮られっぱなし天国

レポート
カルチャー
2006.08.25
この記事のカテゴリー |  カルチャー | 

「海賊版」×「オフィシャル」=革命的コンサートフィルム!

今年結成25周年を迎える人気ヒップホップグループ、ビースティ・ボーイズ。彼らが主演する映画「ビースティ・ボーイズ 撮られっぱなし天国」が、7月29日から渋谷のシネマライズでレイトショー上映されている。

この作品は、2004年10月9日に、ニューヨークのマジソンスクエアガーデンで行われたライブを収録したもの。とはいえ、単なるコンサートフィルムではない。観客の中から選ばれた50人が、それぞれ自由に、ノンストップでライブを撮影。延べ100時間にも及ぶ膨大な映像を編集する、という珍しい手法で作られた、異例の映画である。

監督は、ナサニエル・ ホーンブロウワー。メンバーであるMCA(アダム・ヤウク)の映像作家としての別人格である。ナサニエルは過去に10本ほどプロモーションビデオのディレクションを手がけており、本作が長編デビュー作となる。そもそもこの企画を思いついたきっかけは、なんとファンの隠し撮りだったという。あるファンが携帯電話で撮った約30秒のライブ映像を、ビースティ・ボーイズ公式サイトの掲示板に掲載したところ、それを見たナサニエルが、「おもしろい!」とアイデアを採用。もともとライブDVDを作る企画だったが、あまりの完成度の高さに急遽劇場公開用に変更したのだという。06年1月にサンダンス映画祭でプレミア上映、同年3月に全米公開された。日本では、アスミック・エース エンタテインメント(株)が配給を行っている。

「02年の『DOGTOWN & Z-BOYS』、03年の『CANDY』、05年の『sprout』と、ここ数年、シネマライズの夏の夜のレイトショーを弊社で担当させて頂いています。今年は、大勢でパーティーに行くように映画を楽しんで頂きたいと思い、この作品を選びました。実は買い付けた時点では、最初の10分間しか完成していなかったんです。続きを観たい!という一心で買い付けました(笑)。とはいえ、企画やコンセプト自体が興味深く、他にはない画期的な作品だった、というのがいちばんの決め手でしたね」(アスミック・エース エンタテインメント(株)製作事業グループ・池田穣さん)。

本作の特徴は何といってもカット数の多さである。50台のカメラが撮影した膨大な素材を、全6,732カット(1カット平均0.79秒!)もの細かいカット割で編集。普通は2ヶ月程度の編集作業に、1年も費やしたというから驚きだ。まるでDJのスクラッチのように、次から次へと新しいカットが押し寄せる映像は圧巻である。とはいえ、素材を撮影したのはファンである素人達。会場内に俳優のベン・スティラーを見つけて激写したり、カメラを回したままトイレに行ったり…。ライブの合間に登場する破天荒なシーンや荒い画質、それにハイクオリティなエフェクトが相まって、海賊版にもオフィシャル版にもみえる独特の作品に仕上がっている。

「メンバーいわく“オフィシャルのブート”。一般的に映画は、監督の意志を中心に作る封建的なものなんですが、ナサニエルは、『ライブ終了まで決して撮影をやめるな』ということ以外は無指示でこの作品を制作。これは映画制作を民主化した、革命的な作品です」(池田さん)。

客層は、ビースティ・ボーイズのブームをリアルタイムで体験している20代後半から、メンバーと同世代の40前後が中心。3名以上の団体客が多いのが特徴で、取材時にはなんと6名の団体客もみられた。熱心に集中しながら鑑賞しているというよりは、まるでライブに来ているように、談笑したり音楽にノリながらにぎやかに楽しんでいるという印象。リピート客も多いという。

「臨場感を楽しんでもらうため、映画館としては異例の大音量で公開しています。曲もベスト盤に引けをとらないヒットチューンばかりなので、入門編としてもピッタリ。ビースティ・ボーイズを聴いたことがない20代前半の若い方にも、ぜひ観てもらいたいですね」(池田さん)。

インターネットや携帯を始め、iPodなどのデジタルオーディオプレイヤーやPSP、ニンテンドーDSなどの携帯ゲーム機の普及により個人で楽しむ娯楽が増える一方で、大勢で集まって楽しむイベント感覚の楽しみへの訴求も強まっている。ここ数年の定点観測を振り返ってみても、花見や花火、フェスやサッカー観戦など、モノよりも感動や驚き、体験やコミュニケーションを伴うイベント感覚のサービスを、友人や仲間たちと積極的に楽しみたいといった傾向がうかがえる。イベント感覚で映画館に行き、大勢で盛り上がる、という同社の提案は、そんな今の時代を反映した、新しい映画の楽しみ方といえるだろう。

ちなみに、名古屋では9月1日まで上映中。京都、神戸、札幌など全国で順次レイトショー公開の予定だ。

[取材・文/『WEBアクロス』編集室]

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