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渋谷グランベルホテル

渋谷グランベルホテル

レポート
ライフスタイル
2006.10.25
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近年のホテル業界のトレンド、
「デザイナーズホテル」が渋谷に誕生

光沢のある黒い壁面にカラフルなドアが
映える廊下は、まるでクラブのよう。
カーテンは各室のドアと同じイメージカラー
をベースにしたポップなデザイン。
ベッドはあえて低めにして広い空間を演出。
シングルルームにはバスタブはないが、
レインシャワーによる蒸気でシャワー
ルーム内が暖まりやすくなるそうだ。
タイプBのシングルルーム。入り口すぐに
ベッドを配し、窓際がシャワールームに
なっている。
メゾネットタイプのビューバススイートは
ホテルとは思えぬ螺旋階段が印象的。
ルーフテラス付きの部屋からは都心の
眺望が楽しめる。
場所は渋谷駅から5分圏内という好立地。
1・2階にはパイがメインのカフェバール
「PLATE OF PIE.POP」が入居。なんと24時間
営業でホテルへのルームサービスにも対応。
渋谷駅の1日平均の乗降者数は約219万人(麻布通信社調べ)。全国で4番目、関東では新宿、池袋に続く巨大ターミナルである。しかし意外なことに、新宿や東京などに較べ渋谷は需要に対してホテルの客室数が圧倒的に少なく、ビジネスホテルと東急グループなどが運営する中規模のシティホテルしかないのが現状。

そんななか、『シングル1泊1万円台ながら、独自のサービスで高い満足を提供する』という新たな切り口で、通常のビジネスホテルやシティホテルとは一線を画したアーティスティックな空間を提供し、訪れる客の目を随所で楽しませるホテルがある。06年7月に桜ヶ丘町に誕生したデザイナーズホテル、「渋谷グランベルホテル」がそれだ。

設計・デザインを担当したのは東京・目黒のデザイナーズホテル「CLASKA(クラスカ)」を手掛けたことでも知られる建築事務所、都市デザインシステム

まず目を引くエレベータは、薄暗い照明のなか押した階数の数字だけが印象的なブルーの輝きを見せるデザイン。廊下もブラックを基調にダーク&ラグジュアリーな雰囲気で統一されており、部屋毎に鮮やかな色(シングルはライトグリーン、ダブル&ツインはオレンジなど)で塗り分けたドアにスポットライトが際立つ。フロントから部屋に入るまでのわずかな時間にも、同ホテルの印象が強く心に刻まれるというわけだ。

計33室あるシングルルームは1泊13,000円。12平米とコンパクトながら、ガラス張りのシャワールームで圧迫感を軽減している。AとBの2タイプがあり、Bタイプでは通常のホテルでは入り口近くに設置するシャワールームを、あえて窓側に配したユニークな設計だ。スイートルームは4室(1泊45,000円〜65,000円)を用意。61平米の最も広いラグジュアリースイート(ページ右上写真)、天井高5.5mのプレミアスイートに加え、なかでも特徴的なのが、最上階13階にあるメゾネット形式の2室である。ビューバススイートでは上部階に設置したバスルームから渋谷の街を一望でき、エグゼクティブスイートはその逆でベッドルームを上部階に配した女性に人気の部屋だ。他に、プレミアツイン(6室、1泊28,000円)プレミアダブル(12室、1泊26,000円)の全55室。設備にもこだわり、シモンズ社製のベッドをはじめ、グラフィカルなカーテンや、国内ではまだ珍しいレインシャワー機能、無音の冷蔵庫や液晶テレビ、高速LAN回線を全室に完備している。

経営するのは、カタログ通販事業で有名な(株)ベルーナの関連会社で、不動産管理会社の(株)フレンドステージ(本社=埼玉県上尾市、安野清社長)。もともとは同立地にマンションの建設を予定していたが、渋谷のホテル不足も考慮し収支計算をした結果、利益率の高さを見込んで初のホテル事業への進出を決定した。都市デザインシステムに設計を依頼したのは、プレゼンを聞き「チェーン店にない魅力やアイデアを出せる」と、独自性を追求したい安野社長の判断と合致したからだそうだ。

「まったく経験者がいない状態でのチャレンジでした」というのは、同ホテル支配人に抜擢された飯塚能章さん(27歳)。飯塚さんは、大学卒業後、ベルーナに入社。3年間、金融ファイナンス部門でトップセールスを打ち出し、コールセンター部門で通販に従事した後、フレンドステージ社に異動、同ホテルの支配人に就任した。

同ホテルのすぐ近くには、01年東京急行電鉄が旧本社社屋跡地に建設した「セルリアンタワー東急ホテル」があるが、そこから鞍替えして来る外国人宿泊客も多いという。「実は海外のHPやブログ、雑誌で当ホテルが取り上げられているらしいんです。先月もデンマークから40名の団体様がいらっしゃいました」(飯塚支配人)。
外国人比率が4割の日もあれば、女性のシングル客も多い。実は、毎月連泊に来る某芸能人もいるという。既存のビジネスホテルとは若干違う客層に支持されているのも、同ホテルが他のホテルとの差別化を図ることができているからだといえる。

同社は渋谷でのノウハウを活かし、赤坂と新宿でもホテル出店を計画中など、ホテル事業の展開に急速に乗り出している。赤坂は同じく都市デザインシステムが設計を行い、地下2階・地上11階建、61室のデザイナーズホテルとなる予定。なんと、地下に劇場(約170席)を建設中で、06年12月中旬オープンに向けて工事は佳境を迎えている。新宿はスパ付きの高級路線も検討しているということだ。なお渋谷も既に増築が決定している。
「この3店舗が成功して、初めて成功と言えると思っています」(飯塚支配人)。

国内では、デザイナーズホテルへのリノベーションで成功した「クラスカ」(03年9月オープン)を皮切りに、「パークホテル東京」(汐留、03年9月オープン)、「三井ガーデンホテル銀座」(05年11月オープン)などの高級ホテルがデザイナーズホテル(デザインホテル)と銘打って開業。今年に入ってからも、「クラスカ」を仕掛けた(株)トランジットジェネラルオフィスのプロデュースで「堂島ホテル」が大阪に(8月)オープンするなど、まだまだ後を絶たない。

しかしHPを見ると一部では、内装や家具だけという見せ掛けのデザイナーズホテルも現れており、すっかりホテル業界のトレンドとして 「デザイナーズホテル」という言葉がひとり歩きしてしまっている様子が伺えた。そんななか、“デザインに特化した”というデザイナーズホテルの基本的な定義を満たした「渋谷グランベルホテル」の登場は、細分化が進むデザイナーズホテル業界の流れにいい刺激となるかもしれない。


[取材・文/福田健一(フリーライター)+『WEBアクロス』編集室]

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