paille d’or(パイユドール)

paille d’or(パイユドール)

レポート
2006.11.16
ファッション|FASHION

30年の歴史を持つ帽子ブランド
「バライロノボウシ」がキャットストリートに
初のオンリーショップをオープン!

直営店限定の一点ものが毎週5〜6アイテム
(!)店頭に登場。帽子の他にもヘアゴム
やブローチ、秋冬には耳あてなどの帽子
以外でも“スパイス”になるアイテムを展開
繊細な柄と色の組み合わせが美しいニット
帽。これらは全てハンドメイドで丁寧に
作られているというから驚く
帽子の素材や作りかけの帽子がディスプレイ
されたノスタルジックな空間
繊細な作りと独創性で人気を得ている
「ANTIPAST」のアイテムをこれほど扱う店は
他にはないのだそう。靴下以外にも洋服など
も取り揃える
お店同様、温もりある雰囲気の
オーナー/デザイナーの薗部さん(左)と、
営業担当の梨本さん(右)。
1階は仏風クレープ店「ラフェデリース」。
ブルターニュ地方でよく食べられているそば
粉のクレープを提供するお店で、こちらも
薗部さんと仏人のご友人との共同経営店
レディース帽子ブランド「Barairo no Boushi(バライロノボウシ)」初の直営店「Paille d'or(パイユドール)」が、06年06月16日にオープンした。

場所は表参道からほど近く、キャットストリートを渋谷方面に歩いてすぐの赤と黄色の一軒家で、古き良き原宿を思わせる佇まい。以前は、同店の運営元である有限会社バラ色の帽子の社長兼デザイナー薗部(そのべ)弘子さんが友人と手がけていたセレクトショップ「ニィドラフェ」があった場所である。そのセレクトショップの運営がひと段落したこともあり、長年あたためていた「オンリーショップで独自の世界観を表現したい」という想いを実現すべく、そこに「パイユドール」をオープンした。

「ブランドをはじめたころは鈴屋さんなどの子供服全盛期。大人よりも子供服の方が遊べた時代でした」(薗部さん)というのも、「バライロノボウシ」がスタートしたのは1976年。子供の帽子専門ブランドとして立ち上げたが、若者の間で帽子がファッションアイテムのひとつとして定着してきたという時代の流れに伴い、99年頃から「かわいい大人の女性」をテーマにしたレディースへシフト。ニットものを得意とし、「CA4LA」などの帽子専門店や雑貨店への卸しを中心に展開していた。

一軒家の2F部分にある店内は、アンティークの帽子や原材料、制作途中の帽子もディスプレーの一部となっていて、ちょっとした帽子の博物館のようだ。フランス・ブルターニュで薗部さん自ら直感で集めたというアンティーク家具や雑貨が生成りの壁にしっとりなじむ、温もりある空間である。

「帽子作りで、とにかくこだわるのは“色合い”。デザインはもちろん、色みや配色のバランスにその時代の気分が表れるんです。ニットは生地に比べて瞬間的な感覚をすぐに落とし込むことができるし、微調整がしやすいんですよ」と薗部さん。現在オリジナルの毛糸を200色以上保有し、さらに毎年10〜15色の新色を追加するというから、色へのこだわりの深さがうかがえる。

また、レース編みのニット帽にキャップのツバがくっついていたり、一見フェミニンな帽子にハードな蜘モチーフがあしらわれているなど、素材的にもモチーフ的にも相反するもの同士の“ミックス感”も同ブランドの特徴だ。今でこそ、大人のファッションでも遊びのあるミックス感は常識となったが、同社ではキッズ時代から“かわいいイメージを基本に置きつつも素直にかわいいだけではないミックス感覚”を、30年変わらずデザインの中心に据えてきた。
「被ることによってその人の個性が引き立つような帽子作りを心がけています」(薗部さん)。

商品は年2回、約100アイテムを発表している。デザイン性にこだわり、微妙なニュアンスを大切にした帽子作りを行っているため、工場での大量生産はしていない。全て国内のお抱えの職人による手作業で生産しているにもかかわらず、平均的な価格帯は¥6〜7,000。現在の価格を維持するのには薗部さんの若い頃の体験がある。

「昔、帽子はとても高級品で、欲しくても買うのが大変でした。だから自分のブランドでは、お金のない若い人が買えるような価格で提供したいという思いが常にあります。なんせ、帽子は脇役ですから…」(薗部さん)。実は、薗部さんご自身は“なくてもいいものだけど、全体のスパイスになるもの”が大好きで、同じにおいを感じる靴下&小物をメインとするブランド「ANTIPAST(アンティパスト)」のほぼフルラインを扱っている。

同店の客層の中心は20代後半だが、ストリート系からギャル系など幅広い層が来店している。また、4〜50代からなんと70代までもが訪れており、世代を超えて違和感なく買い物ができるというのも、ミックス感覚溢れる商品と30年の歴史がある同ブランドならではだろう。髪のボリュームダウンを気にするシニア世代からは、頭まわりのお洒落を楽しめるアイテムとしても好評で、「昔は子供のために買っていた」という親子でのファンもいらっしゃるとか。

弊サイトでもたびたび取り上げているように、若者の間で“頭まわり”のおしゃれに対するハードルは以前に比べ格段に低くなってきている。特に06年は、カチューシャやスカーフ、シュシュといった“ヘッドアクセサリーズ”も浮上。そのきっかけになったといえる帽子はストリートでは「=カジュアルなもの」、という受け取り方が一般的であるが、薗部さんは「ウエディングハットや、よりフォーマルなものなど、『売れる』『売れない』にかかわらず、ここならどんな種類の帽子も揃うという安心感のあるお店を作っていかなきゃと思っています」という。

毎シーズンものすごいスピードで目まぐるしく移り変わるトレンドだが、近年は、例えば定番のカットソーでも、昨年より丈が少し長くなっていたり、袖が少し短めになっていたりと、細かいトレンドの差異が反映される時代になっている。

服や靴に比べると、帽子はファッションアイテムとして定着したというものの、実はまだまだ発展途上のアイテム。「時代の気分」「瞬間の感覚」を帽子にデザインする薗部さんの同ブランドのように、帽子にも今の時代の細かなトレンドが反映され始めたといえそうだ。


[取材・文/重保咲+『WEBアクロス』編集室]

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