fancied(ファンシード)

fancied(ファンシード)

レポート
2006.12.08
フード|FOOD

人気カレー専門店のシェフがオープンした
裏原の個性派レストランバー

カウンターの奥にはキッチンが配置され
カレーのスパイスの香りが漂う。
GHEE時代から使用している大理石の
テーブル。窓からは原宿の風景が
見渡せる。
人気のチキンバターミルクカレー。
ランチタイムにはドリンクが付いて
1,000円。
写真やリトグラフなどが並ぶ、
アーティスティックな店内。
渋谷区神宮前2丁目にあるユナイテッドアローズ本店近くに、近隣で働くアパレル関係の人たちに人気のカフェ「fancied(ファンシード)」がある。オーナーの赤出川治さんは、05年3月に閉店した人気カレー専門店「GHEE(ギー)」でシェフを務めていた人物だ。

赤出川さんは、18歳からアパレル会社に勤務。販売や営業企画をとして8年勤めた後退社。その2年後、知り合いに「GHEE」のオーナーを紹介され働くことに。未経験ながらも試行錯誤を繰り返し、当時同僚だったインド人シェフと共に「GHEE」の味を作り上げていった。約20年間「GHEE」でシェフを務めた後、もっと様々な料理を提供できる店をやりたいと、独立を決意。04年2月28日に同店をオープンした。

「自分がオーナーの店ですから細部にまでこだわりました。アパレル時代からの友人も近くで働いているので、彼らが集えるような空間を作りたかったんです」(赤出川さん)。

物件は「GHEE」からあまり遠くなく、人出の多いエリアである事を条件に、原宿や青山、千駄ヶ谷で探した。当初希望していた路面店ではないものの壁一面の大きいガラスから見える景色が気に入り、現在の物件に決定。なにより、20年間働いた、愛着のある原宿に出店したいという気持ちもあったのだそうだ。

店舗面積は、約14坪でカウンターを含め22席。内装はオーナー自らがアイディアを出し、業者に依頼した。白を基調にした明るい店内には、アート作品や置物、写真などが飾られアーティスティックな空間になっている。店内に2つあるテーブルは、友人の家具デザイナーに依頼したもの。正方形の珍しい形にしたのも、友人や恋人と料理を沢山乗せて、シェアして食べて欲しいという思いからだという。「GHEE」のBGMはレゲエのみだったが、同店では様々な料理を提供したいということから、BGMの音楽もオールジャンルにした。アンビエント、ロック、ジャズなど幅広い。

ランチタイムは12時〜16時。ランチメニューはメインにサラダとコーヒー付で1,000円。メイン料理は強烈な辛さが印象的なビーフカレーと、本場の味のペルー風ミルクカレー、「GHEE」で人気メニューだったバターチキンカレーの3種の他に、ナシゴレン風のセロリチャーハンの4品から選べる仕組みとなっている。チキンバターミルクカレーは、「GHEE」時代からのファンがわざわざ食べに来るほどの人気ぶり。19時半〜26時のディナータイムは、数種類のパスタメニューやモッツァレラとトマトのカプレーゼ(1,000円)、和牛のソテー(1,600円)など、カレー以外の様々な種類の料理も充実している。ドリンクも数十種類のアルコール類とオーガニックワインを豊富に取り揃え、食事と共にアルコールも楽しめるメニューだ。

平日のランチタイムには、近隣で働く20代〜30代のアパレル関係の客で賑わい、満席の状態が続くほどの盛況ぶり。ランチ営業中にカレーが売り切れてしまうこともあるのだそうだ。しかし一転、バータイムにはオーナーの友人のスタイリストや、近隣に住む60代以上のご夫婦などの大人の客層に変化。昼間の喧噪からは想像できないほど、落ち着いた雰囲気の空間になる。

「自分の好きなものや料理を提供し、既存の枠にはまらずに、知る人ぞ知る店にしていきたいです」(赤出川さん)。

アパレルの会社やショップなどが建ち並び、日中は多くの買い物客で賑わいをみせる神宮2丁目周辺。在勤者や住民をターゲットにした、同店のような飲食店やバーなども多く、平日の夜でも遅くまで営業している店も珍しくない。その大半が、個人経営でオーナーの嗜好にそった個性的な店ばかりだ。大手飲食店にはない、自由な発想と経営による店作りが、「ここにしかないもの」という価値を生み出し、人々に愛される理由となっているといえる。

なお、同店が軌道に乗ったら青山に、洋服も売る小さなバーの出店も考えているそうで、オーナーが好きなフェミニンな雰囲気の店にしたいそうだ。

[取材・文/福田健一(フリーライター)+『WEBアクロス』編集室]

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