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千代田区立千代田図書館

千代田区立千代田図書館

レポート
カルチャー
2007.07.18
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指定管理者制度による
新しいタイプの公立図書館

目的の場所に簡単に行けるよう、書棚や
椅子はゾーンごとに色分けされている。
公共図書館で初の図書館コンシェルジュを
設置。館内だけでなく区の案内も行う。
タッチパネル「ジンボウナビ」では
神保町の古本屋や飲食店を検索できる。
館内はビジネスマンでいっぱい!夜間の利用が
圧倒的に多く、仕事や資格試験の勉強を行う
人も多いそう。
古地図や古書も展示。120年の歴史があり、
戦災を逃れた同館には貴重な蔵書が多く
残っている。
サロンスペースに展示されたタペストリー光壁
(ひかりかべ)。和紙アーティスト堀木エリ子
さんと区内小学生らの共同制作によるもの。
2007年5月7日、九段下にある「千代田区立千代田図書館」が移転リニューアルオープンした。「GO!LIBRARY」という電車の中吊りや雑誌広告などを見かけた方もいるのではないだろうか。

千代田区では、同館のリニューアルに際し指定管理者制度を導入。指定管理者制度とは、2003年に施行された改正地方自治法のひとつで、従来地方公共団体やその外郭団体に限定されていた公共施設の管理を、株式会社や民間業者、NPO法人などの団体に委託できる制度のこと。小泉内閣発足後急速に進化した「公営組織の法人化・民営化」の具体例のひとつである。公共中央図書館に指定管理者制度を導入するのは都内では本件が初めてで、公募により選定された(株)ヴィアックスと(株)サントリーパブリシティサービス、(有)シェアード・ビジョンの3社が運営を行うことになっている。

場所は同日開庁した千代田区役所新庁舎ビルの9階・10階。約3,700平方メートルで、蔵書は約15万冊。9階がAVゾーン、新聞・雑誌・新刊本ゾーン、展示ウォール、一般開架ゾーン、調査研究ゾーンそして10階にはサロンコーナーと子ども室、児童書コーナーという構成になっている。書棚と椅子やソファはゾーンごとに色分けされており、目的の場所に簡単に行けるような工夫がされている。色使いも鮮やかで明るいイメージだ。

「コンセプトは“公立図書館の構造改革”。千代田区は出版社が密集する神田エリアや日本一の古書店街である神保町もあり、本にはゆかりの深い土地柄です。21世紀を展望した新しい公共図書館を作ろうと、さまざまな試みに挑戦しました」(広報・坂巻さん)。

今回、新しい試みのひとつとして取り入れたのが、「新書マップ」という情報利用システム。気になった新書を書見台に置くと、蔵書や和書300万冊の概要・目次、新聞記事、ウィキペディアなどの多様な情報源から、関連書籍のリストや、類似するテーマの書籍、さらには神保町の古書店での在庫状況まで自動表示される検索システムである。これは人気ウェブサイト「新書マップ」で紹介されているテーマ別書籍を本物の新書で再現したもので、国立情報学研究所連想情報学センターの全面協力により導入された。従来の目的書物を探す絞込み検索とは異なる、発想を広げるための検索ツールである。

また、公立図書館では初となる「図書館コンシェルジュ」も配置。蔵書や館内の案内はもちろん、区内施設や地域紹介といった街のガイドも行う。さらに、神保町の店舗などを確認できるタッチパネル「ジンボウナビ」を設置したり、神保町の古書店と連携して貴重な書籍の展示を行うなど、エリアの案内所としての機能も備えている。

区の大部分がオフィス街や官公庁街であるという地域特性を考慮し、同館ではビジネス支援にも注力。仕事帰りに利用できるよう、平日は夜22時まで営業している。ビジネス支援図書、新聞、年鑑などの資料も充実しており、PC利用環境が整った個人ブース席も設置。また研修室や会議室などもあり、セカンドオフィスとして利用できるような設備を完備している。

「千代田区は夜間人口がわずか約4万5千人なのに対し、昼間人口は85万人近くにもなるんです。区内在住の方はもちろん、在学者や在勤者、研究者など様々な方に利用して頂き、街をもっと知って頂くきっかけになればと思います」(坂巻さん)。

リニューアルに際し、公的機関としては異例の広告展開を実施。九段下駅や大手町駅など5駅に駅貼りポスターと、東京メトロ東西線の車内吊りポスター、さらに『東京人』『サライ』などの雑誌に広告を出稿した。さらにオープニングイベントでは、古書店店主を迎えたトークショーや、司書の資格を持つ落語家、入船亭扇治氏による「図書館寄席」も開催。今後は出版希望者への相談なども行っていくという。

来館者層は、昼間は主婦や学生、年配の男女が多く、夕方は30代〜40代のビジネスマンが中心。土日には子供連れで訪れる家族が多いそうだ。登録者は7:3の割合で区外在住者が多く、利用者の約2割が、平日18時半〜22時の間に来館しているという。リニューアル前は入館者数が1日平均約900人だったのに対し、リニューアル後は3倍以上の約3,200人にまで増加。オープンからわずか1ヶ月で10万名を突破したというから驚きだ。

「これだけの新しい試みができたのは、千代田区の意識の高さと“本と出版の街”という土地柄があってこそ。今後も新しい取り組みを行い、魅力あふれる図書館を目指します」(坂巻さん)。

同館は、指定管理者制度を単なるコストダウンとしてとらえるのではなく、民間企業の柔軟さを活かし、利用者のニーズを確実に捉えることにより、新しい公共施設として成功しているケースといえるだろう。現在、全国の公共施設で民間委託および指定管理者制度の導入が大きな流れになっており、図書館運営業務だけみてみても、東京23区では07年度に千代田区をはじめ大田区、杉並区、足立区の4区が、08年度には墨田区と板橋区、江戸川区が導入を予定しており、今後、新しいタイプの公立施設はさらなる増加が予想される。一方、渋谷区をみてみると、図書館をはじめとするほとんどの公共施設が19時閉館…。今後の改善に期待したい!

[取材・文/伊藤洋志(フリーライター)+『WEBアクロス』編集部]

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