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自虐の詩

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カルチャー
2007.11.26
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「日本一泣ける伝説の4コマ漫画」が実写化

「日本一泣ける4コマ漫画」として知られる業田良家氏原作の漫画を映画化した『自虐の詩』が10月27日より渋谷シネクイントで上映されている。

原作は、1985年〜1990年にかけて『週刊宝石』に連載されていたもの。特徴は、4コマのギャグマンガでありながら、ストーリー展開するのが特徴で前半ではダメな亭主がちゃぶ台をひっくり返す…という古典的なギャグが延々と繰り返されるが、後半からは一転。哲学的な深い人生観を描き出し、それまでの4コマ漫画の常識を覆したといわれる作品である。その後、竹書房から文庫版が出たのが1996年。やがて「日本一泣ける」との噂が噂を呼び、10万部売れればヒットといわれるコミック業界で累計50万部を超えるヒット作品となった。

そんな異色の漫画の実写化を企画したのが、TBSテレビ制作センタードラマ部門プロデューサーの植田博樹氏。『ケイゾク』や『ビューティフルライフ』などのヒットドラマを手がけてきた人物である。植田さんが原作と出合ったのは2002年の冬。

「友人に勧められて何気なく読んでみたところ、すごい漫画があるなあ…と圧倒されました。登場人物はみなダメな人なのに、こんなにも人生や幸福について教えられるのかと驚いて。4コマ漫画は最も実写化しにくい形態なので映画にするなんてムリだろうと思っていたのですが、他で映画化の動きがあると聞いて、いてもたってもいられず、提携もないまま版元に企画書を持ち込みました」(植田さん)。

そうして2003年にプロジェクトがスタート。監督は『ケイゾク』や『トリック』を手がけた堤幸彦監督で、主演俳優には阿部寛さん、中谷美紀さんを起用。本来はシュールなテイストが持ち味の堤監督だが、本作では原作に忠実にベタな笑いを盛り込み、さらに4コマ漫画特有の起承転結を意識して淡々と進むテンポを大切にしたそうだ。ギャグ要素を織り交ぜた平凡な日常生活と、感動的でドラマティックな人生の回想という、相反する2つのストーリーが並行して進んでいく構成も本作の大きな魅力だ。

同時期に『ALWAYS 続・三丁目の夕日』や『恋空』などのいわゆる感動作が公開されていることもあり、差別化を図るために「笑い」に重点を置いたプロモーションを実施。パンチパーマの阿部寛がちゃぶ台をひっくり返すコミカルなテレビCMを放映したり、オフィシャルHP上で、ちゃぶ台ひっくり返しゲーム「ちゃぶ1グランプリ」を展開するなど、ユニークなキャンペーンを行った。メインターゲットはF1層(20〜34歳の女性)で、いわゆるデートムービーとして訴求することで男性への広がり効果を狙ったという。

「劇場で実施したアンケートによると、客層は狙い通り20代〜30代前半の男女が中心。原作を知らない人も多く、『パンチパーマの阿部寛のインパクトにひかれて』『中谷美紀が好きだから』というようにビジュアルやキャスティングが来場のきっかけとなり、鑑賞後には『コメディかと思っていたら、感動して泣いてしまった』という意見が多数です」(松竹(株)宣伝プロデューサー會田さん)。

社団法人日本映画製作者連盟によると、2006年の邦画興行収入は1,000億円を突破。21年ぶりに洋画を上回るなど、現在、邦画市場は空前の盛り上がりとなっている。なかでも、ブームベストセラー小説や漫画を映画化した作品が相次いで大ヒット。とくに最近は、人気漫画の実写映画化するケースが増えており、2007年だけでも『蟲師』『どろろ』『ゲゲゲの鬼太郎』『天然コケッコー』『吉祥天女』『さくらん』『クローズZERO』など、約15もの作品が公開されている。原作の知名度の高さから、確実にヒットにつながることに加え、CGなどの技術の進歩により、これまで紙面上でしか表現できなかった世界やアクションを実写で再現することが可能になったことも、こうした傾向にさらに拍車をかけているといえよう。

この傾向はアメリカのハリウッドにも広がっている。ここ数年、ヒット映画の復活版や続編、海外の作品のリメイクが量産されており、映画業界のネタの枯渇が叫ばれるなか、日本の映画や漫画を実写化する動きが高まっているのである。現在『寄生獣』『ルパン3世』『マッハGoGoGo』『新世紀エヴァンゲリオン』『MONSTER』などの実写化が決定。日本の漫画やアニメは欧州でも人気があるため、世界の市場を狙えるという点でも、日本の漫画やアニメの映画化はメリットが大きいのだという。空前の漫画・小説の実写化ブームで盛り上がる映画業界だが、植田さんはこう語る。

「原作があればとりあえずなんでも映画化する、という現状には疑問を感じています。大切なのはその先にある作品のテーマ性であって、もっと内容表現に注力するべきでは。漫画や活字など2次元では伝えきれないものを伝えるのが映画の役目だと僕は思います」。

[取材・文/『WEBアクロス』編集室]

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