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Across the Book Review Vol.06
レポート
2008.01.18
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Across the Book Review Vol.06

『皇室へのソボクなギモン』竹田恒泰・辛酸なめ子(扶桑社)

マジメだけど笑ってもいい?
皇室ガイド

リブロ渋谷店で行われたサイン会でいただ
いた竹田氏のサイン。
辛酸なめ子氏のサイン
皇室ウォッチャー・なめ子氏が、明治天皇の玄孫、旧竹田宮で『語られなかった皇族たちの真実』著者・竹田氏を質問攻めにする、という本。

もともとはフジテレビのオリジナルサイト「週刊少年タケシ」での対談企画から、発生した企画だそうだ。この「少年タケシ」では、なめ子氏がデジタルコミック「サイキック学院」、竹田氏がコラム「皇室のきょうかしょ」を連載しており、出会うべくして出会った二人であったということだ。

なめ子氏の皇室好きは、つとに有名である。年始の一般参賀は欠かさず行っているそうだし、年賀状も毎年皇室がらみである。特に紀宮様(黒田清子さん)には、ルックスが似ていることから格別の思い入れがあったようで、ソウルメイト・サーヤへのオマージュを込めた自主制作冊子「Saaya & Me」を作っていた。一度彼女の本を作ろうと過去の作品を集めていたとき、このコミックも入れてはどうでしょう、という話になったが、さすがに皇室モノは無理では、と断念した記憶がある。5年程前のことだが、まったくもって皇室はタブー、という空気だった。
そして、新刊が皇室の本と聞いて、「ついに出るのか」と、何か感慨深い思いがした。しかし、皇族の子孫で、女性天皇容認論に抗議する立場の、生粋の伝統擁護派(といっていいのかわからないが)に教えを請うスタイル、版元は保守系の扶桑社と、ばっちり地固めをした態勢。なるほど、こういう作り方があるのか、と思う。

本書の帯には、「皇室の方はジャージを着て外出なされたりするのでしょうか?」「皇室の方もメアドとかお持ちなのでしょうか?」などとあるので、軽いトーク集を連想していたが、相手が真の皇族で研究者なだけに、皇室の風習や歴史についての記述も多く、しかもかなり深い。

皇族の名前を呼ぶのは畏れ多く、名前に「様」とつけるのは失礼で「殿下」と呼ぶべき。「ロイヤル・ファミリー」というのも、ロイヤルは王室なので、正しくは「インペリアル・ファミリー」。など、細かい部分もさることながら、宮中祭祀など、皇居内の日常も、驚きが多い。宮中三殿に仕える内掌典の女性の、徹底した規律(肉食禁止、髪はおすべらかし、世俗に触れず、穢れない状態を保つ云々)が、今この時代にも行われているとは。

竹田氏の、天皇や皇族を敬う姿勢や言葉遣いがあまりに自然で、戦後教育を受けた身には、面食らう。「国民ひとりひとりの幸せをお祈りしてくださる方が天皇として頂点にいらっしゃる、そのような国の国民でよかったと思います」「皇室がなければ、日本はもう別のものです」と、本当に潔い。皇室と神道、宗教との密接な関係も納得できる気がする。

しかし、そこは対談、しかも相手が鋭いツッコミのなめ子氏なだけに、少し笑える余地があるのがいい。竹田氏が『語られなかった皇族たちの真実』の出版を反対され迷っていたとき、神武天皇の御陵に報告にいったら、何千羽のカラスが飛び立ち、これは神勅だと確信し、出版を決意したとたん応援してくれる人が現れた、というスピリチュアルエピソードには、なめ子氏のイラストと、「恐怖体験を神からのGOサインと受け取るところが普通ではありません」のコメントが。あ、笑っていいところなのね、というクッションが、読者に安心感を与えてくれているといえよう。

何かとタブーが多い皇室という話題で、まったく違う立場ながら、議論を戦わすわけでもなく、かといって一般論だけではなく、かなり掘り下げたところまで語り合っていてる、日本にはこういうものもあるんだ、と教養として皇室についての知識をかじれるという意味でも、予想以上に面白い対談だった。

さて、ちょうどリブロ渋谷店で刊行記念のサイン会があり、行ってきた。なめ子氏のサイン会では、いつも何かしらプレゼントを用意していてサービス精神旺盛なのだが、今回のお土産は「赤福シール」。出版報告で伊勢神宮にお参りしたからだろう。賞味期限は大丈夫だっただろうか。そして、竹田氏、サインが大変立派だった。なんという書体だろう、印鑑のような。旧皇族ならではの作法なのだろうか。猫ちゃんイラスト入りのなめ子氏サインと、絶妙なコンビネーションであった。


[神谷巻尾(フリーエディター)]

読みたくなった本




▪読みたくなった本
『語られなかった皇族たちの真実-若き末裔が初めて明かす「皇室が2000年続いた理由」』竹田恒泰(小学館)
『ECO・MIND—環境の教科書(ベストセレクト 751))』竹田恒泰(ベストブック)
『宮中賢所物語—五十七年間皇居に暮らして』高谷朝子、明石伸子、太田さとし(ビジネス社)
『憲法を変えて戦争へ行こうという世の中にしないための18人の発言 (岩波ブックレット657)』井筒和幸、木村裕一、黒柳徹子、辛酸なめ子、中村哲、半藤一利、松本侑子、美輪明宏、、森永卓郎吉永小百合(岩波書店)


▪思いだした本
『知恵熱』池松 江美(パルコ出版)
『ニガヨモギ(ちくま文庫)』辛酸なめ子(筑摩書房)


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