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デジタルアーカイブ学会第1回研究大会
レポート
2017.08.18
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デジタルアーカイブ学会第1回研究大会

現代社会におけるアーカイブ学のあり方を再考し、デジタルアーカイブ推進を目指す学会が初の研究大会を開催

スマートフォンやタブレット端末が爆発的に普及し、ビッグデータやAIなどの技術革新が脚光を浴びる現代社会において、画像や映像、文書、書籍などの資料をデジタル化してネットワーク上に保存・公開する「デジタルアーカイブ」の重要性が高まっている。

デジタルアーカイブを巡る世界の動きを見渡すと、欧州の電子図書館「Europeana(ユーロピアーナ)」や米国の「DPLA(デジタル公共図書館)」といった機構が二次利用可能な膨大なデータをCC0(クリエイティブ・コモンズ ゼロ)上でユーザーに提供している。対して日本では、そういった基盤の整備が遅れているのが現状だ。

そんな状況を改善すべく、2017年5月1日、国立情報学研究所や東京大学、岐阜女子大学などが中心となって「デジタルアーカイブ学会」を設立。その後わずか3ヶ月間で正会員数が約250名にまで増加したということからも、デジタルアーカイブ推進に対する社会的な需要や期待の大きさが窺い知れる。

そのデジタルアーカイブ学会の第1回研究大会が、7月22日に開催された。会場となった岐阜女子大学文化情報研究センターには、研究者をはじめとして、博物館や図書館の実務者、さらにはアーカイブに関わるさまざまな企業など、約300人が来場した。

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岐阜女子大学50周年記念事業も兼ねた本大会に集まった聴衆は約300人。主催者側も驚きの数字だったそうだ。写真は吉見俊哉氏の基調講演。
大会は、東京大学大学院情報学環教授であり、同学会会長代行でもある吉見俊哉氏の基調講演からスタート。吉見氏によれば、デジタル化が進行し全てが記録可能になった現代では、図書館や文書館、美術館や博物館といった従来のアーカイブ機関に収まりきらなかった、録音テープや写真、脚本や設計図といった制作の過程を示すもの、そして個人の語りや記憶まで、そのすべてがアーカイブの対象になっており、これまでの図書館情報学的な考え方では対応できない状況になっているという。

その上で、日本においてデジタルアーカイブを推進するにあたり、

(1)バラバラ問題:各施設はそれぞれにがんばってデジタルアーカイブの動きを推進しているものの、それが標準化されておらず、縦割りでバラバラになっていること。
(2)宝の持ち腐れ問題:いったいどこにどんなアーカイブがあるのか、またそれを誰がデジタル化できるのかが不明瞭。
(3)食べていけない問題:デジタルアーカイブを推進するには専門職の人々が必要だが、明確なキャリアパスが存在せず、ちゃんと食べていけない。

という3つが大きな問題点があり、これを解決するための政策を提言することが本学会のミッションだと吉見氏は話す。

問題解決のために何より重要なことは、「国立デジタルアーカイブセンター」のような拠点を設立することだという。デジタルアーカイブを集積していくためには、実際にどんな資料があるのかという資源情報が必要であり、法律を整備する必要があり、人材を育成していく必要があり、こういったことを統括する組織として想定されているのが「国立デジタルアーカイブセンター」だ。

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吉見俊哉氏(東京大学大学院情報学環教授/同学会会長代行)。「デジタルアーカイブの今日的意義」をテーマに基調講演を行った。
基調講演に続いて行われたパネルディスカッションでは、吉見氏に加え、同学会法制度部副会長の生貝直人氏、人材養成部会長の井上透氏、技術部会長の高野明彦氏、コミュニティアーカイブ部会長の坂井知志氏、関西支部長の原田隆史氏、同学会総務担当理事の柳与志夫氏が登壇。

「法律だけを勉強している人間だけでは、法律をどのように変えるべきなのかがわからない。この学会で議論されたことを、法律や行政といった国の言葉に翻訳するのが法制度部会の仕事」(生貝氏)、「それぞれホームがある人々が、そこではやりきれないことをやるのがこの学会。全然違う出自のアーカイブをデジタル化というひとつの技術によって無理なく繋げるにはどんな技術があるのかを議論したい」(高野氏)という各氏の話からも、本学会は純粋な学術研究の場というよりは、政策と現場の両面から働きかける媒介役としての性格が強いことがわかる。

また、会場からは「クリエーションや社会のアクティビティを誘発する表現技術を検討すべき」、「国際間の連携を強めて欲しい」、「スマホやタブレットしか使わない人たちを巻き込んでの活動を検討すべき」、「利活用の面を活発化させ、アントレプレナーを育成すべき」などの意見が挙がったように、結局重要なのは、単にアーカイブをデジタル化することではなく、アーカイブをデジタル化することによっていかに新たな価値を生み出せるかということで、井上氏も「地域の文化を外に発信できる人材が必要。アーカイブ化しただけでおしまいになるのは最悪で、社会のなかで役立つようなデジタルアーカイブを作っていかなくてはならない」と話す。

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画面左から、生貝直人氏(東京大学大学院情報学環客員准教授/同学会法制度部副会長)、井上透氏(岐阜女子大学デジタルアーカイブ研究所長・教授/同学会人材養成部会長)、高野明彦氏(国立情報学研究所教授/同学会技術部会長)、坂井知志氏(常盤大学教授/同学会コミュニティーアーカイブ部会長)、柳与志夫氏(東京大学大学院情報学環特認教授/同学会総務担当理事)、原田隆史氏(同志社大学大学院総合政策科学研究科教授/同学会関西支部長)
パネルディスカッション終了後は各オーラルセッションに。「広がるデジタルアーカイブの対象と活用」、「コミュニティーとデジタルアーカイブ」、「技術・法制度とデジタルアーカイブ」をテーマとして、合計18名の登壇者が発表した。

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オーラルセッションで「関西大学ポピュラー音楽アーカイブ・ミュージアムプロジェクトおよびアーティストコモンズの活動について」をテーマに発表した三浦文夫氏(関西大学教授/株式会社radikoフェロー)。全発表の中で唯一ポピュラーカルチャーを扱っている事例。
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「アイヌ衣服・文様のデジタルデータ作成方法に関する検討」をテーマに発表した皆川雅章氏(札幌学院大学副学長・法学部教授)。
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ポスターセッションの展示会場にはデジタルアーカイブの関連企業も出展。写真は文化財や絵画などのスキャンを専門とする株式会社サビアのブース。
ところで『ACROSS』編集部は今年、Googleが運営する非営利団体Google Cultural Instituteによるプロジェクト「We Wear Culture」に参加したが、このプロジェクトはまさに、デジタルアーカイブの技術が存分に活かされたものだった。衣服そのものだけでなく、衣服の制作過程だったり、ストリートファッションのスナップ写真という、装う主体を記録したものも含めてファッションの記録として保存する本プロジェクトは、既存のアーカイブ機関がアーカイブの対象外としてきたものの中に眠っていた価値を引き出し、それを新たなプラットフォーム上で提示している。その意味では、デジタルアーカイブ活用のひとつの成功例と言えるだろう。

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Googleの「We Wear Culture」
ものを生産流通し社会を大きくしていくのが成長社会とすれば、それを深めていくのが成熟社会。ものを再利用しながら価値を高めていく社会。この社会ではアーカイブは根本的に重要なものです。ただし蓄積に主眼を置くのではなく、それをどう再活用していくか。今日のようにバラバラの分野の人が集まってコラボレートすることで、新たな価値や未来が生まれるのでは」 という吉見氏の言葉通り、未来の社会像を考えていく上で、デジタルアーカイブは重要な存在になっていきそうだ。

なお、本学会の第3回定例研究会が9月16日(土)に実施される予定。詳細は以下の通り。

* デジタルアーカイブ学会 第3回定例研究会
日時:2017年9月16日(土)午後2時~5時 場所:東京大学工学部2号館9階 93B
発表:・デジタルアーカイブに関わる肖像権を60分で学ぶ/福井健策(骨董通り法律事務所)
   ・アニメーションアーカイブのサバイブ方法 / 山川道子(㈱プロダクション・アイジー)
定員:80名(先着順)
申し込みはこちらから

【取材・文:大西智裕(『ACROSS』編集部)】


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