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TADFUR(タッドファー)
レポート
2017.10.27
この記事のカテゴリー |  ファッション | 

TADFUR(タッドファー)

毛皮のリフォーム・リメイクを専門にする創業50年の老舗
「お直し」という方法で毛皮製品の消費に一石を投じる3代目社長にインタビュー

近年、欧米のファッション業界では「エシカル・ファッション」や「サステナブル・ファッション」といったキーワードが頻繁に叫ばれ、倫理的で持続可能なファッションのあり方が問われている。特にその動きが顕著に見て取れる分野が毛皮産業だ。

つい先日の2017年10月13日、GUCCI(グッチ)がミンク等6種類の動物の毛皮を不使用にすると発表。また、2016年3月にARMANI(アルマーニ)グループが自社の全ブランドで毛皮(リアルファー)の不使用を宣言したのも記憶に新しい。そのほかにもSTELLA McCARTNEY(ステラ マッカートニー)やH&M、日本のマッシュスタイルラボなど、ハイブランドからファストファッションまでさまざまなブランドが“毛皮の不使用”を掲げている。

トップメゾンが毛皮不使用を打ち出す流れに変化している大きな要因として、繊維メーカー独自の技術による“エコファー”など、天然素材に代わる化学繊維の開発が挙げられる。たとえば繊維メーカーの(株)カネカは、従来のエコファーの欠点であった毛抜けを防止する加工技術を用いたエコファー「ラストラス」を開発。2012年以降ヨーロッパや国内のブランドで広く採用されている。

しかし毛皮業界では、そういった新素材の開発によって問題を解決するだけでなく、有り素材を生かした「アップサイクル」(※註1)の考え方が、実は半世紀以上前から実践されていたのだ。創業50年、毛皮のリフォーム・リメイクを専業にする「株式会社タッドファー(TADFUR)」を取材した。

「毛皮を扱っている会社自体、日本ではかなり珍しくなりましたね。そのうえ、毛皮のお直しに特化した業態となると、さらに珍しいと思います」と話すのは同社取締役の松田真吾さん。

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松田真吾さん
同社はもともと毛皮製品のインポート商社に勤めていた松田さんの祖父が、「毛皮の病院」というコンセプトを掲げて1966年に千葉県市川市で創業。当時は主に百貨店やメーカーから直接注文を受け、インポート製品を日本人の体型に合うように袖や着丈の調整、副資材の交換などを行っていた。

松田さんは創業3代目。大学卒業後にコンサル系のベンチャー企業勤務を経て、2008年に実家である同社に入社。千代田区五番町にアトリエを移し、個人客を迎え入れる“サロン”スペースを併設した。個人客が毛皮を持ち込み、サンプルや副資材を見ながらお直しの相談ができる窓口である。

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アトリエに併設されたサロン。ここでリフォームの相談を受けている。
松田さんの父の代から本格的に始まったリフォーム・リメイク業だが、今では毛皮以外のアパレル出身の職人(デザイナー兼パタンナー)も在籍し、「毛皮のコートからスカートを作りたい」など、個人客の幅広い要望に応えることができるようになっているという。リフォーム・リメイクの目安となるサンプルはあるが、デザインやサイズは完全オーダーメイドだ。

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また、サロンでの相談だけでなく、全国の百貨店へ赴き、「お直し相談会」を開催。「こういうのを探していた」と多くの方が押し寄せ、キャンセル待ちになる程の人気ぶりで、常時300~500件、年間で1200件ものお直しを受注している。


持ち込まれる毛皮の多くはバブル期に流通したミンク素材で、最低でも4~50万円はするようなものだという。経済的に余裕のある人たちが毛皮を購入することはもちろんのこと、当時は20代で旺盛な消費意欲を持っていた「Hanakoさん世代」が、ボーナスで数十万円の毛皮を買っていたという時代背景がある。その毛皮を今ではクローゼットに眠らせているのだ。

『高価な上に、素材的にも捨てられるものではないのでお直しをしたい』という方が全国に大勢います。ファッション性を求めていらっしゃる方も中にはいらっしゃるのですが、どちらかと言うと、困ってしまって病院に来る感覚でうちにいらっしゃる方が多いです」(松田さん)。

お客の多くは60~70代の女性だ。バブル期に40~50代だったが人たちが、年を重ねて娘や孫に毛皮を譲るために持ってくるのがいちばん多いケースだという。しかし近年は、一世代若返り始めており、「お母さんからもらったものです」「亡くなった母のものでして…」といった声も増えているそうだ。

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お客から預けられた毛皮のコート
リフォームの料金は毛皮の状態やオーダー内容によって異なるが、マフラー等の小物へのリメイクが4万円~、コートなどの上物のリメイクは20万円~となっている。通常の衣類のお直しとは異なり、部分的に直すというよりは古いデザインが一新されるように思い切ったお直しをオーダーする人が多い。

直すのは高くて、新しく買った方が安いじゃないって言う方もいらっしゃいます。でも、そういう方には毛皮の商品がどうやって作られているかを丁寧に伝えています。たとえばミンクのロングコート1着で、多いときは(動物を)40~50匹を使用しているということ。それを聞くと納得し、お直しを選んでくださる方も多いです」(松田さん)

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毛皮をリフォームするにあたり、小さな切れ端もアクセサリーにするなどして、できる限りすべてを使い切ることを心がけているという。
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コートをバッグなどにリフォームすることも可能。
松田さん自身も、この業界に入って生産の現場に足を運ぶようになり、多くの動物の命が犠牲になっていることを知り、「毛皮は動物からもらったもので、簡単に捨てて良いものではない」という意識がより一層強まったという。

「毛皮を扱うことに戸惑いを感じることもありました。それでも、ずっと続いてきた家業ですし、 “直す”という選択肢・手段を提供できることは希望ですね。それによって新しく作られる毛皮製品を少しでも減らすことができればと思います。」(松田さん)。

2011年の東日本大震災後も同社には特に大きな変化はなかったというが、消費への見直しから「もったいない」という意識の高まりを少しずつ感じる場面があるという。とはいえ、
近年は徐々にバブル期の毛皮の経年劣化も目立つようになってきているそうだ。

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同社のタグ。
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松田さんは同社から廃棄されるものに目を付け、年間1000着弱もの廃棄をしていたトワルを福祉施設やアーティストに寄付するプロジェクトを開始。トワルはアート作品の素材として活用され、一部は販売されている。アップサイクルを実践する企業から更にアップサイクルが生まれているとも言える。
今後については、規模や形態を変えても、お直しをしたいという人がいる限りはこのビジネスを継続していきたいと松田さんは話す。

作るも買うも個人の選択なので、その中で極力無駄が出ないようにして貰えたら、と考えています。これからは今以上に、(同社が)時代に求められていく存在になると思いますが、直せる会社があるということを世の中に発信していき、『毛皮の消費』に対して一石を投じていきたいです」(松田さん)。

何十年、何百年も前から続くお直し業が、近年注目されている「アップサイクル」の考え方とより密接になっていくことで、「エシカル・ファッション」や「サステナブル・ファッション」の流れに応える新しい文化となり得るだろう。

※註1:「アップサイクル」とは、これまで環境配慮へのキーワードとして掲げられてきた3R(Reduce/ Reuse/ Recycle)を超えて、いまあるものから元の製品よりも価値のあるものを生み出す考え方のこと。

【取材/文:石川千央+『ACROSS』編集部】


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