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TurnTable(ターンテーブル)
レポート
2018.06.05
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TurnTable(ターンテーブル)

日本初・徳島の“泊まれる”オーベルジュ型アンテナショップが奥渋谷・神泉町に登場
食や音楽で徳島県の魅力を発信

渋谷から道玄坂を上がった井の頭線・神泉駅近く、実は、弊社の本社が入居するビルの真裏に、2018年2月4日、徳島県の魅力を発信する日本初のオーベルジュ型アンテナショップ「TurnTable(ターンテーブル)」がオープンした。宿泊施設を備えた自治体のアンテナショップという形態は日本初併設のレストランやマルシェなどを通して徳島の魅力を存分に体験できる「体験型施設」として話題だ。

地方の特産品に出会えるアンテナショップといえば、銀座や有楽町などの繁華街にあるイメージだが、同施設があるのは道玄坂上のさらに裏通り。入口には宿泊者以外も気軽にお茶やお酒を楽しめるバルを設け、奥には隣接する小さな公園に面したカフェ・ラウンジやマルシェ、さらにホテルのレセプションへと続く。印象的だったのは、看板はもちろん、館内のどこを見ても「徳島」と掲げていないことだ。

 TurnTable』という名前は、徳島にテーブルで回帰するという意味高感度の人々が集う場を作るというコンセプトのもと、レコードを回すターンテーブルのように、モノだけではなく人と人とのふれあい、食や音楽とのふれあいに回帰できる場所をイメージして名付けました」と話すのは、同施設ジェネラルマネージャーの河田真知子さん。

徳島市出身の河田さんは、飲食店の立ち上げやディレクションも手がける徳島市内のレストラン「Deili(デイリ)」を主宰する人物。徳島の食に詳しく、これまで東京近郊で徳島の食をテーマにしたポップアップレストランを数回実施し、好評を博してきた現在東京にも支社を持つ「デイリ」は、食のほか内装、デザインを担当する約10人が在籍し、食に関する多彩なプロジェクトに関わっている。

「従来のアンテナショップは物販が中心で、十分な収益を得るのは難しいのが現状。来店するのは、出身者やその県をよく知る人が中心です。新しいファンを作るためにも徳島だから来るのではなく、居心地が良い おいしい、そんな一般的な飲食店やホテルを選ぶ動機で気軽にてもらいたい。宿泊や食事を通して気づいたら徳島だったというような場所にしたかったんです」(河田さん)

宿泊客のほか、ランチタイムには近隣のオフィスワーカーの姿も目立つ
 折しも2020年の東京五輪・パラリンピック開催に向けて海外からのインバウンドが増加し、渋谷周辺の宿泊施設のニーズが高まっている昨今。「宿泊施設を併設することで長く滞在し、空間や食を体験し魅力を感じて頂けます。安定した収益も得られるので、流行を作るだけでなく継続していくことが可能だと考えていますと河田さん。

5階建てのビルは、元々動物美容の専⾨学校だった築21年の建物をリノベーションしたもの。空間ディレクションと12階のオペレーションは、徳島市を中心に各地でリノベーション建築の設計・施工・運営を行うDIY工務店」と「デイリ」が担当した。DIY工務店の代表は林業家でもあるそうで、バルやレストランのテーブル、椅子、床などのインテリアには徳島の一本杉を加工して使用。全体に統一感と温もりを演出している。同時に、隣接する神泉児童遊園地も渋谷区と協議のうえ再整備を行い、人々が集まる明るいイメージへと生まれ変わった。
マルシェでは加工品や調味料のほか、徳島から週2回直送される新鮮な野菜を購入できる。特に掲げていないが無農薬やオーガニック野菜が中心だ
そもそも「TurnTable」の構想は3年前より、地方の情報を東京から発信するという徳島県の地方創生プロジェクトからスタートした。一般公募から運営・企画を受託したのが「DIY工務店」。プロジェクト進行にあたり、設計やデザイン、建築、運営、製品開発やイベント企画までを手がけるチームを結成することになり、河田さんが参画することになったのだという。さらに全体のリノベーション設計・施工は「リノベる株式会社」が担当。物件の所有者は「東急不動産株式会社」で、「リノべる」の子会社である「Japan. asset management株式会社(以下jam)」が「東急不動産」とマスターリース契約をし、徳島県にサブリースをしたかたちだ。物件探しの際に「DIY不動産」らが売りに出されていた物件に出合ったものの、直接物件を取得することが難しかったため、画策した結果このような座組みになったという。
2Fレストランのテーブルや床には徳島の一本杉を使用。緑あふれる大らかな空間だ
 空間デザインには、河田さんが長年信頼を置く東京のユニークな感性が集まった。「ターンテーブル」の名を冠する同施設らしく音楽表現にも注力しており、レコードプレイヤーから流れる館内の楽曲セレクトは、音楽やスポーツ、内装をクリエイトする目黒区五本木のJazzy Sport(ジャジースポート)によるもの。所属アーティストのDJ Mitsu the Beatsが、徳島でフィールドレコーディングした音源によるオリジナルアルバム制作した。また、館内を彩る壁画はアーティストの丸倫徳(まる みちのり)さんがひとつひとつ描いたものだ外国人スタッフも多数在籍する店内はフレンドリーで、自然に会話が広がる解放感がある空間になっている。

2レストランの食材選定やメニュー開発等のディレクションは、河田さんと渋谷区神山の人気店Pignon(ピニョン)」の吉川倫平さんが担当。同施設のコンセプトに賛同するオーストラリアやスペイン出身のシェフが集まった。全ての食材を徳島から直送しこだわりの薪のグリルを使った調理も好評だメニューは日替わりのコースが中心で、4皿ショートコースで5,000円、6皿とデザートのコースで8,000円。徳島の日本酒やオリジナルクラフトビール、ナチュール系ワインも豊富に揃える。また1Fのマルシェでは、レストランで使われる新鮮な徳島産の野菜や物産品販売も行っている
壁画やロゴを手掛けたのはアーティストの丸倫徳(まる みちのり)さん。1Fには徳島と神泉の街並みを組み合わせた壁画を描いた

25階部分のホステル運営は、未活用不動産を活かした宿泊施設の運営事業などを手がけるRProject(アールプロジェクト)」が担当。ベッド数は約60床で、2階はグループ用ドミトリー、34階は個人用ドミトリーとシングルルームを用意。5階は専用テラス付きのスイートルームがあり、パーティやイベントでの利用も可能。1泊の宿泊料金はドミトリー6,000円~、シングルルーム 10,000円~で、全てに徳島の食材を使った朝食がつく。

昨今大規模な再開発が進む渋谷駅周辺だが、駅から10分ほど歩いたここ神泉や富ヶ谷周辺は「奥渋谷」と「裏渋谷」呼ばれ、改めて注目を集めているエリアでもある。ここ数年のあいだに、おしゃれなショップやレストラン、カフェのオープンも増え、IT系やクリエイティブ系のオフィスも増えている。宿泊施設に合う物件探しは簡単ではなかったが、ここ神泉は企画コンセプトにもぴったりの場所だったという。

自分のライフスタイルを確立している大人が多く住み集うイメージ。程よく渋谷の喧騒からも離れていて、代官山や中目黒にも近く、個人的にも好きで、理想的なエリアでした」(河田さん)

5階は最大10名まで宿泊できるテラス付きスイート。パーティー利用も多いそうだ

宿泊客は国内・海外からのツーリストの割合が半々で、2030代を中心に幅広い。「Booking.com(ブッキングドットコム)」「Expediaエクスペディア」などの宿泊予約サイトを見て予約をする人も多いという。一方、レストランの客層は東京近郊の高感度な3040代が中心で、バルやランチで利用する近隣のオフィスワーカー、マルシェ目的で訪れる近隣住人も増えているそうだ

バルでは定期的に音楽のライブやDJイベントなどもスタート月一度のサンデーブランチなどのイベントも好評。今後も積極的に増やしていく予定だという。「実際に来て頂いて、徳島っていいね、かっこいいねというお客様の声を聞くと嬉しいですね。まだまだスタートしたばかりですが、収益を生み出し継続していける場所にすることが今の目標です」(河田さん)


ここ数年、都内アンテナショップの数は増加し2017年度の調査では都内のアンテナショップ数は過去最高の72店舗に前年65店舗/*財団法人地域活性化センター「自治体アンテナショップ実態調査 2018より)舗の内装やサービスも洗練され、ミシュランの星を獲得するハイレベルなレストランを備える施設も見られるようになった。そんな中でもここTurnTable」は、徳島と東京の文化が交差し、モノからではなく、寝食や音楽を介したライフスタイルと、“と人との繋がり”から情報発信を行うユニークなスポットとして注目が集まっている。

 
【取材・文:渡辺満樹子】

ジェネラルマネージャーの河田真知子さん


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