代官山ティーンズ・クリエイティブ
レポート
2018.09.25
カルチャー|CULTURE

代官山ティーンズ・クリエイティブ

渋谷区とメディアによる、あたらしい子育て支援のカタチ

古くは千代田区立千代田図書館や都立日比谷図書館、さらに「武蔵野プレイス」の核施設となった武蔵野市立図書館など、“進化する公共施設”として、東京の図書館を何度となく取材してきたが、近年、「中高生向けの公共施設」も進化しているようだ。

代官山駅から徒歩5分の複合施設内にある「代官山ティーンズ・クリエイティブ」 (以下代官山TC)もそのひとつ。

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代官山駅から歩くこと約5分、職人さんが作ったという茅壁(かやかべ)が目印だ。代官山TCの受付は4階にある。
同施設の公式サイトを見ると、顔文字のように描かれたロゴから“代官山ティーンズクリエイティブ”という吹き出しのユルいマークが目を引く。一方、「可能性を生み出し、夢を描く」というコンセプトのもと、第一線で活躍するクリエイターによるユニークな内容の授業・ワークショップが目白押しの「アートスクール」や、「ミート・ザ・おやつ」といった学校帰りにみんなでいっしょにおやつを作って食べよう、という集いなど、1つひとつのアクティビティが気になる!と調べたところ、同施設の運営を委託されていたのは、(株)マザーディクショナリーであることがわかり、さっそく代表取締役で同施設の館長でもある桑原紀佐子さんにお話を伺った。

“学童”や“レンタルスペース”のように定義が決まった場所じゃなく、とにかく“10代の居場所”を作りたかった。学校や塾、部活のような限られた世界の中では出会えないような大人やモノに出会うことで、視野が広がり、将来の選択肢が増やせる、そういう場所が必要だと思ったんです。」(桑原さん)。

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入り口すぐの壁面には、様々なクリエイターやアーティストから子どもたちへのメッセージが描かれている。
『mother dictionary』は、1970年代生まれ以前には馴染みがある、日本のカルチャー系フリーペーパーの草分け的存在であるクラブキングが発行する『dictionary』の一企画として、2001年にスタート。既成概念にとらわれない“自立したかっこいい母親像”を早くから提唱し、“新しい価値観で伸びやかに生きる女性たちの視点をシェアする場”を提供してきた。

たとえば、2002年には「Talk dictionary」として建築家マザー4人によるトークイベントを開催。2010年にクラブキングが“学ぶを遊ぶ”をテーマに、渋谷の神南にあった水道局代々木漏水防止出張所だった築40年以上の建物を利用し開設した「ディクショナリー倶楽部(その後、千駄ヶ谷に移転し、現在は終了)」という多目的スペースで、雑貨やフードの販売をしたり、さまざまなアーティストを招いての親子ワークショップを行う「mother dictionary 春の会」を開催(その後「秋の会」も開催)。いろんなジャンルのクリエイターたちとのネットワークを活かした場づくりに定評があった。

そんな「mother dictionary」の取り組みに注目した渋谷区子ども青少年育成係は、2013年に代々木学童館のリニューアルおよび運営に(株)マザーディクショナリーを採択。乳幼児~小学生とその親のためのコミュニティスペース「かぞくのアトリエ」をオープンし、都会で子育てする親同士の交流の場を創設。そういった実績を受け「今度はぜひ小学生以上のためのスペースも手がけてほしい」と依頼され、代官山TCの運営を担当することになったという。

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当日の様子は、子どもたちが卓球したり会話を楽しんだりと和やかな雰囲気。
「民間の施設なら自由なことができるかもしれないけれど、利用料金が発生してビジネスになってしまい、利用者が限られてしまいます。でも行政と組むことで、料金が発生せず、あらゆる人に開かれるのは大きいですね。その上で、自治体の発想にはないような自由さや楽しさを出せれば」(桑原さん)。

もともとは利用対象が渋谷区在住または在学の18歳以下およびその保護者のみと定められていた同施設だが、現在は「優先」という形に切り替え、さらに年齢も以前の18歳以下から「25歳くらいまでの学生」と、かなり幅も広げられた。居住エリアや年齢を限定しないことで、もっと幅広い多くの人に、今回の取り組みを知ってもらうのが目的だという。実際に利用者は小学生~大学生と幅広い。

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温かみのある内観は、随所に工夫が見られる。例えば、椅子カバーや脚カバーを制作したり、キッチンコーナーでは、棚に可愛らしいイラストに描かれ、分かりやすいようになっている。
施設には、子どもたちに大人気という卓球台や大きなキッチン、楽器やPCなども揃っており、取材日も自由に楽しむ姿が印象的だった。ふだんから小学生と高校生が卓球で対戦したり、パティシエ志望の女子高生がお菓子を作ってみんなに振る舞ったりと、年齢の壁を越えた自然な交流も多く生まれているという。

また、施設内には複数のスタジオがあり、ダンスや楽器の練習、ミーティング場所として使用できる。そのスタジオのうちのひとつには、リニューアルの際にDJブースが設置され、レコードやCDが著名な音楽プロデューサーによってセレクトされており、自由にプレイすることができる。

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施設内にはスタジオも複数あり、ダンスや楽器の練習、ミーティング場所として使用できる。
こちらでは、寄付されたレコードがズラリ。
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デザインやアート、写真や音楽、映画、 暮らしに関する書籍も完備。
そして代官山TCの核となる企画が2種類のワークショップだ。平日の夕方に開催される「ミート・ザ・クリエイターズ」は予約不要で飛び入り参加も自由で、土日に開催される「アートスクール」は予約制で、内容によって8人~最大20人ほどの規模感で実施しており、講師には、写真家、刺繍作家、ミュージシャン、プログラマー、シェフ、ダンサーなど、さまざまな分野で活躍するクリエイターたちを招き、他にはない独特なサービスとなっている。

実際に講師との出会いをきっかけに急成長した受講生も少なくないそうで、たとえば「BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権」で活躍したラッパーの“ちゃんみな”さんも、音楽プロデューサーの佐々木潤さんに本格的な音の打ち込み方を習ったことで表現力に磨きがかかり、ブレイクにつながったという。

ワークショップは、子どもたちへの種まきみたいなものです。何かを作る、どこかへ行く、誰かの話を聞く、いろんな講座の形式があります。多彩でジャンルレスなワークショップの場でいろんな魅力的な大人に出会ってもらうことで、将来の選択肢の幅が広がれば、と思います」(桑原さん)。

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取材当日は、イラストレーターjun sasakiさんによる『ニュアンス似顔絵を描いてみよー』が開かれていた。
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男の子に大人気だったパソコンコーナー。リニューアルを機に、Adobeなどのクリエイティブソフトも導入された。
近年、各自治体で青少年向け施設の見直しが始まっているが、東京都内だけで見ても、2014年には港区に「公益財団法人児童育成協会」が管理運営する「麻布子ども中高生プラザ」が、2015年には文京区に認定「NPO法人カタリバ」が管理運営する中高生向け施設「b-lab(ビーラボ)」がオープン。さらに世田谷区では、2014年に「NPO法人文化学習協同ネットワーク」が管理運営する「世田谷区立野毛青少年交流センター」、昭和女子大が運営主体の「三軒茶屋の若者の居場所“あいりす”」など、複数の施設がオープンしている。

また、2017年には山梨県韮崎市に「NPO法人河原部社」が運営する青少年育成プラザ「Miacis(ミアキス)」という青少年向け施設のモデル的な施設がオープンするなど、地方でも同様の動きが出てきている。

そんななか、この代官山TCが注目すべき点は、NPO法人による運営ではなく、「mother dictionary」という“メディア”が“(リアルな)場”に拡張し、クリエイティブな人々との人脈を最大限に生かした小規模なワークショップなどのコンテンツが充実しているという点だろう。

「クリエイティブシティ」を目標に掲げる渋谷区にぴったりとハマった本施設。今後は、それぞれの地域やコミュニティにマッチするコンテンツを見出し、実際に運営できる人やNPO、企業などの団体といっしょになって、多様なサービスが提供できるしくみづくりがますます求められそうだ。

【取材・文:肥田柊+ACROSS編集部】

*以下告知
ちなみに現在、10月のアートスクールの予約受付中。
10月のアートスク
ールでは、タップダンサー 谷口翔有子氏による『 はじめてのTAP DANCE!!! 』や美術家の上出惠悟氏による『 母熊になった気持ちで熊をつくろう 』などが開催予定。申し込みは以下のページから↓

http://daikanyama-tc.com/artschool/


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