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CRAFT SHERE-ROASTERY 錠前屋珈琲@虎ノ門
レポート
2019.03.21
この記事のカテゴリー |  飲食・フーディング | 

CRAFT SHERE-ROASTERY 錠前屋珈琲@虎ノ門

珈琲の焙煎機をシェアする「時間貸しロースター」

コーヒー生豆に熱と圧力を加えることで、味と香りを引き出す“焙煎”。熟練の技と高価な焙煎機が必要となる作業で、これまで一般人が手を出すのは難しかった。しかし近年では、焙煎を手軽に楽しめるサービスが出始め、注目が集まっている。

虎ノ門にあるキーコーヒーが運営するロースター「CRAFT SHARE-ROASTERY 錠前屋珈琲」。ここは焙煎体験や、焙煎機を時間貸しするサービスを行っている店舗だ。実際に現地を訪れて、焙煎体験を行った。

虎ノ門の新虎通りに店舗を構えている。うしろに見えるのは虎ノ門ヒルズ(写真提供:キーコーヒー株式会社)。

2時間8,000円(2名まででノベルティ付き)のプランで最大4回の焙煎が可能。キーコーヒーのローストマイスター、林 稔(はやし みのる)さんが、ていねいに説明をしてくれた。

ローストマイスター、林 稔(はやし みのる)さん。自家焙煎の開業支援等を行なっている、焙煎のプロだ。右にあるのが焙煎機。業務用のサイズでは小型のタイプで、キーコーヒーの焙煎のノウハウをプログラミングされている。

「焙煎は、シンプルに言うと生豆に圧力をかけながら熱を加えることで豆の中で化学変化を起こして、香りや味わいを引き出していく作業なんです。豆の色の状態を判断しながら、圧力や火力を調整していきます。焙煎体験では、焙煎作業、カッピングまで行います」(林さん)。

単純そうに見えるのだが、奥が深い作業で焙煎によってコーヒーの味が決まると言っても過言ではない。それをプロに手とり足取り教われるというのだから、このサービスはかなり貴重な体験といえるだろう。

体験に来る方は関東圏の人が多いが、遠方から来る人もいるという。中には京都、新潟、和歌山、広島から訪れた人も。それだけ、焙煎機を手軽に使える場所がなかなかないということだ。また、最近はご夫婦で来られる方が多い、と林さん。「地上波の番組でこのサービスが放送されたことがありまして。放送後は、夫婦でいらっしゃる方が増えて、現在は8割くらいです」。

このサービスを利用する人の特徴も聞いた。「こういう産地が好きとか、こういう味が好きとか、こだわりを持った方が増えています。ただ、取り扱っている産地の豆が増えてきているので、どれを選べばいいのかわからない人もいる。そういった方には、ぜひ焙煎体験に来てほしいですね。また、焙煎機シェア(1時間3,000円、2時間5,000円)のほうは、原料を持ち込むこともできます。そのため、『自宅で焙煎しているコーヒーがうまくいかないから見て欲しい』というコーヒーマニアのお客様が多いですね」(林さん)。

キーコーヒーの基準にあう、高い品質の豆が準備されている。今回選んだのは写真左のケニアのキリニャガ、右のタンザニアのモンデュール農園(写真提供:キーコーヒー株式会社)。

目安の温度になったら、生豆を投入する。


「焙煎は3つのステップを踏みます。生豆から焙煎していくと、豆が金色に変わる『ゴールド』という状態(焙煎スタートから4分半~5分半くらい)になります。そのまま焙煎を続けていくと、パチパチという音を立てて爆ぜ(はぜ)始める。これが『一爆ぜ』(8~9分ぐらい)。豆によってはこのステップで6割以上も体積が増すものもあります。爆ぜ終わる頃が、いわゆる『浅煎り』です。そこから豆の色を見ながら、仕上がりをチェックします」(林さん)

焙煎体験でははじめに豆の種類を選ぶ。常時10種類程度の豆をラインナップしているという。今回はケニアのキリニャガ、タンザニアのモンデュール農園を選んだ。ローストマイスターのナビゲートのもと、コーヒー豆の色の状態と時間を見ながら、火力をコントロールして焙煎する。

(生豆を焙煎すると、メーラード反応やカラメル化が起きて「ゴールド」の状態になる。そのまま焙煎を続けていくと、パチパチと豆が爆ぜる「一爆ぜ」のステップに移る)
爆ぜ終わるころが「浅煎り」状態。豆の色を見ながら焙煎を続ける。理想の色になったら豆を取り出して冷まして完成。

「焙煎が終わったらカッピングに移ります。豆を挽いてカップに入れ、その状態で香りをかいでください。そこからお湯を入れて香りをチェック。4分間置いてから粉をくずしてまた香りをかぎます。そして上澄みをすくってからカッピングを行います」(林さん)。

豆を挽いた時と、お湯を入れた時、その後4分置いたあと表面を崩した時の3つで香りをチェック。そして、上澄みをすくって味を確かめる。

「うまく焙煎できると、コーヒーの味は甘くなるんです。逆に失敗すると変に酸っぱくなったり苦くなったりする」と林さん。今回は、林さんのおかげでうまく焙煎できたようだ。タンザニアは、ミルキーで滑らかな感じ。苦さもあるけど、甘さも感じた。ケニアは、柑橘系の甘さとほのかな苦みがあった。冷めてくると黒糖のような甘さも出てくるらしい。「次は、もうちょっと深煎りを試してみよう」「いや、モカを焙煎してみたい」など、もっと深く焙煎について知りたくなった。

そもそもなぜ“焙煎機”をシェアするサービスを思いついたのだろう? その質問には広報チーム担当課長の田口勇治(たぐちゆうじ)さんが答えてくれた。

キーコーヒー広報チーム担当課長の田口勇治さん

「虎ノ門の新虎通りは、パリのシャンゼリゼ通りをイメージして街づくりしており、その一環で弊社に出店のお誘いがあったんです。そこで、コーヒーを提供する手もあったのですが、コーヒーの文化を広げるためのお店を作ろうということになったんですね。そのためのひとつの手段として、焙煎機をシェアするサービスを考えました」(田口さん)

また、キーコーヒー広報チーム主任の横瀬典子(よこせのりこ)さんは「弊社はもともと、喫茶店オーナー様向けに自家焙煎店開業支援サービスを行っているので、スムーズにシェアサービスをスタートできました」と語った。その後、1955年から行っているコーヒーセミナーにもそのサービスを応用。B to BのノウハウをB to Cに適用し、それを使って焙煎機シェアに取り組んだという。

キーコーヒー広報チーム主任の横瀬典子さん

当初は、コーヒー好きの人やコーヒーを勉強したいという男性をターゲットにしていたが、サービスを開始してみると8割が女性。最近ではほとんどが夫婦で、中でも30〜40代の若い夫婦の参加が多い。焙煎体験でその面白さにハマり、その後、焙煎機シェアを利用するという人も少なくない。焙煎機シェアでは自分で原料を持ち込めて、思った通りに焙煎ができる。また、喫茶店を開業したいという人が参加することもある。

またこの店舗が、コーヒーに興味がある消費者とコミュニケーションをとるための場所になっていると林さん。「このお店は、焙煎体験を通じて、楽しみやおいしさをシェアし、コーヒーを介して日常のワクワクを創出していきたいと考えています」。

焙煎体験だけでなく、焙煎豆の量り売りも行っている。

2020年に100周年を迎えるキーコーヒーは、環境問題にも取り組む。「現在、気候変動の影響でコーヒーが育ちにくくなっていて、2050年にはアラビカ種の栽培地が現在の50%にまで落ち込むといわれています。そこで弊社は、コーヒー関連事業における非営利の研究機関である『World Coffee Research』と協業し、インドネシアのトラジャ地方にある直営農園の一部を試験栽培場として貸し出しています。40種類程度の品種をピックアップして、栽培に適しているものがあるかどうかをテストします。育てやすいコーヒーができれば、生産者の収入が安定する。その結果、生産者が増え、おいしいコーヒーを安定して提供し続けることができると考えています」(田口さん)。

2017年に大阪の株式会社HOOPがスタートさせた「シェアロースター」を始め、個人経営のコーヒー店などでも少しずつ増えている焙煎機シェアサービスだが、今回のような大手企業の参入は初だ。飲むだけでなく、素材や作られる工程を知るといった新しいコーヒーの楽しみ方は若い層を中心に今後ますます広がっていきそうだ。


取材/文:佐々木治+「ACROSS」編集部】


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