渋谷スクランブルスクエア
2019.12.30
その他|OTHERS

渋谷スクランブルスクエア

「ヒカリエ」「ストリーム」「フクラス」をつなぐ、渋谷駅再開発の要衝が誕生

2012年4月に開業した「渋谷ヒカリエ」を嚆矢として、着々と進行中のテン(2010)年代の渋谷駅周辺の大規模再開発。銀座線や埼京線への動線が急に複雑化した一方で、新しく建てられたのは駅からやや離れた「渋谷キャスト」や「渋谷ストリーム」、そして代官山に向かう途中の「渋谷ブリッジ」など、なんとなく全体像が見えづらいまま進んできたが、2019年11月1日、渋谷駅直結の大規模複合施設「渋谷スクランブルスクエア第Ⅰ期(東棟)」が開業し、ようやく新しい渋谷駅の姿が見え始めてきた。

同施設は、渋谷エリアで最も高い約230m・地上47階建て。17階〜45階がオフィス部分。商業施設エリアは地下2階〜14階、15階には“産業交流施設”と銘打たれた会員制のワークスペース/サロンである「SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)」、そして14階および45階〜屋上が展望施設「SHIBUYA SKY(渋谷スカイ)」という構成になっている。

館内で展示されている「スクランブルスクエア」の建築模型。デザインアーキテクトは株式会社日建設計、株式会社隈研吾建築都市設計事務所、有限会社SANAA事務所。

パルコは競合ではなく補完関係! ラグジュアリーブランドの足りなかった渋谷が変わる

商業施設には日本初上陸7店舗・新業態39店舗を含む全213店舗が入居。フードは地下2階〜1階、ファッション/ライフスタイルは3階〜11階、レストランは12階〜14階という構成となっており、初年度の売り上げ目標は400億円だという。

同ビルの顔は1Fではなく、1東急東横線や副都心線とJR、井の頭線、さらに東急田園都市線の乗換え通路に面した3階だ。ガラス張りの開放感ある空間に、BALENCIAGA(バレンシアガ)やSAINT LAURENT(サンローラン)、sacai(サカイ)、VALENTINO(ヴァレンチノ)、Stella McCartney(ステラマッカートニー)など若者にも人気のラグジュアリーブランドが並ぶ。

11月22日に開業した渋谷パルコにもGUCCI(グッチ)やLOEWE(ロエベ)、Thom Browne(トム ブラウン)などのラグジュアリーブランドが出店しているが、「これまでの渋谷にはラグジュアリーブランドの旗艦店自体が欠けていたので、競合ということではなくお互いに補いあって埋めていければ」と渋谷スクランブルスクエア(株)営業二部(商業・展望部門)の刀田かおりさんは話す。


ラグジュアリーブランド以外で特に注目は「NIKE BY SHIBUYA SCRAMBLE」(ナイキ バイ シブヤ スクランブル)だろう。店舗周辺に在住・在勤の会員のデータをもとに商品ラインナップが定期的に変化するコンセプトストア「NIKE Live」の、アメリカ国外における初の店舗だ。

実はNIKEは2018年8月〜9月の約1ヵ月間限定で、渋谷の街中を走るシティランなどができるワークアウトセッションスタジオ「JUST DO IT STUDIO」を渋谷にオープンするなど、以前から渋谷周辺のユーザーとのコミュニケーション醸成に注力していた。

今回は、渋谷周辺で売れている商品をオンラインのデータから解析し、2週間に1回商品の入れ替えを行うという。また、オンライン上で予約・購入した商品を預けて好きなタイミングで受け取りできるロッカーや、メンバーカードをかざせば無料でお土産(ソックスなど)がもらえるペンディングマシンなども設置。地域(場所)と会員によるコミュニティが育まれるような店舗になっている。

オンラインで購入した商品をいつでも受け取りできるロッカー。
3週間に1回、メンバーカードをかざすと無料で商品をゲットできるペンディングマシン。筆者はソックスをゲットした。
同商業施設のインフォメーションスタッフの制服を手掛けたのは、東京を代表する若手デザイナーのひとりであるAKIKOAOKI(アキコアオキ)の青木明子さん。「ファッションで渋谷らしい取り組みがしたい」とJFWの担当者に相談したところ青木さんを紹介され、協業が実現したそうだ。

青木明子さんザインのユニフォーム。

再開発中の渋谷を一望できる展望スペース「SHIBUYA SKY」

オープンから約1ヶ月が経過した現在もエレベーター待ちの行列ができているのが、同施設の最大の目玉、45階〜屋上に位置する展望スペース「SHIBUYA SKY」だ。高さ230m、広さ2,500㎡という屋上からの360°パノラマビューは圧巻。再開発中の桜丘エリアや宮下公園など、渋谷の街が日々改造されていくようすを一望でき、1,800円(当日券は2,000円)を支払っても一見の価値はありといえそうだ。

空間演出を手掛けたのは(株)ライゾマティクスで、14階から45階までをつなぐ高速(?)エレベーターは、昇降に合わせて変化するスペーシーな映像や音響がちょっとワクワクする移動空間になっている。そのほかにも全部で10個以上のアクティビティが用意されており、開業1年間の目標来場数は100万人という。

なお、同スペースのユニフォームは先述の青木明子さんデザインのものではなく、A DEGREE FAHRENHEIT(エーディグリーファーレンハイト)のデザイナー・天津憂さんが手掛けたもの。
センター街〜公園通り方面の眺め。写真中央にあるのが11月22日にオープンした渋谷パルコ。
230mの屋上から空を眺められるハンモックも。空が近すぎてスリリングだった。
ライゾマティクスによるエレベーターの演出。

大規模商業施設の新定番テナント?! シェアオフィス&ミートアップというベニュー

15階の「SHIBUYA QWS」は渋谷で活動する企業人や学生、起業家、アーティストなどが集い、年齢や専門領域を超えたグループ間交流によって、未来に向けた価値創造活動を推進し、クリエイティブ産業の振興や新規事業の開発を目的とした会員制オフィス/サロンだ。会員同士の交流はもちろんのこと、非会員も参加できるワークショップやトークセッションなども多数開催していくという。

たとえば11月28日には、スタイリスト/ファッションディレクターで、セレクトショップ「ハウス ミキリハッシン」のオーナーかつ文化服装学院の講師の山口壮大さんが主宰するプロジェクト「CULTURAL LAB.(カルチュラル・ラボ)」と、挑戦する女性のためのコミュニティ「meeTalk(ミー・トーク)」の共同でトークセッションが開催。少数ながらも濃いメンバーが集結していた。

同イベントには山口さん、meeTalk代表の山中直子さんをはじめ、デザイナーの横澤琴葉さん(kotohayokozawa)や金井慶介さん(A MACHINE)、エンドウダイキさん・ふるえゆうきさん(僕らが纏うモノ)、パタンナーの森部有貴さん、ファッションライター/コーディネーターの倉田佳子さん、3rd inc.の川村匡慶さんなどが3部にわたって順番に登壇。「現代における価値のある=豊かなファッションとは?」をテーマに討論し、終了後にはその場で参加者全員による交流会も行われた。

ほかにも同施設にはレーザーカッターや3Dプリンターといったファブ機材も備わっており、そこで製作したプロトタイプを展示/販売することができるなど、若手クリエーターたちの支援の場としても機能するスペースとなっている。また、各コミュニティが議論しホワイトボードに記したキーワードや概念図、マインドマップなどを会員同士でシェア。お互いのアイデアをマッシュアップしようという試みもユニークだ。

「CULTURAL LAB.」×「meeTalk」トークセッションのようす。
開催されたイベントの議事録や概念図などがホワイトボードに掲載されており、会員同士でシェアされる。

“拡張する”渋谷の街、超高層化の進む駅前と面で広がる坂上文化

圧倒的な立地のよさから渋谷の新名所となりそうな「スクランブルスクエア」だが、それだけでなく渋谷の街全体にプラスになるような施設を目指していると戸田さんは話す。

「立地がいいのは確かですが、人の流れを駅に閉じ込めてしまうと街のよさが消えてしまいます。渋谷の回遊性が高まって、より渋谷の奥の方まで行ってもらえるようになるのが理想ですし、その行きがけや帰りがけに立ち寄ってもらえる施設になれば嬉しいですね。たとえばパルコ劇場に行ってご飯は駅直結のここで食べて帰ろうか、みたいなシーンがたくさんできればいいなと思っています」(刀田さん)。

今回の駅周辺再開発では、線路や道路で分断された駅周辺をペデストリアンデッキで繋ぎ、高低差のある箇所にはエレベーターやエスカレーターを導入して回遊性の向上が目指されている。後日レポート予定だが、12月5日には「渋谷フクラス(東急プラザ渋谷)」が開業し、新南口(渋谷ストリーム側)方面からセンター街/道玄坂方面へのアクセスも若干よくなった。「スクランブルスクエア」はバラバラだった「ヒカリエ」「ストリーム」「フクラス」をつなぐ、一連の再開発の要衝ともいえる。

とはいえ、駅周辺の回遊性が物理的に高まることが渋谷の街全体の回遊性の向上に直接つながるかというと、必ずしもそうとはいえないという論調は、いままさに再開発で工事中が続いている下北沢の駅舍や駅前広場再開発をめぐるそれとも重なる。

まだまだ変化するであろう渋谷の開発とそれに伴う人の流れ。2020年4月には三井不動産による「新宮下公園」、2023年には東急不動産による「渋谷駅桜丘口地区」、2024年は「渋谷二丁目17地区」、そして2027年には「スクランブルスクエア第Ⅱ期(中央棟・西棟)」と、まだまだ大手ディベロッパーによる大規模再開発は進行中だ。『ACROSS』編集部としては、いままで通り、引き続き街と人を「定点観察」し続けていきたい。

【取材/文:大西智裕(『ACROSS』編集部)】

次に開業するのは「新宮下公園」。もちろん「スクランブルスクエア」から眺められる。
★渋谷スクランブルスクエア第Ⅰ期(東棟)
・事業主:東京急行電鉄株式会社、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)、東京地下鉄株式会社
・所在:東京都渋谷区渋谷二丁目24番12号
・延床面積:約181,000㎡
・施工者:渋谷駅街区東棟新築工事事業体(東急建設株式会社、大成建設株式会社)
・デザインアーキテクト:株式会社日建設計、株式会社隈研吾建築都市設計事務所、有限会社SANAA事務所
・開業日:2019年11月1日


同じタグの記事
「2020SS」 510~
YOOX.COM(ユークス)