定点観測
report : 2020 | 
06 / 06

#473 | 実施日 : 2020 / 06 / 06 | 最高気温 : 28.4 | 最低気温 : 18.8 | 天候 : 曇、雷を伴う

ポスト・コロナのニューノーマルな白Tスタイルに注目
梅雨直前の東京のストリートファッションとインサイト。

2020年6月6日(土)に実施した、「473回定点観測」の考察レポート。

今週末の7月4日(土)は天候次第だが、もう次の「474回定点観測」を実施する予定なので、その前に6月のストリートのようすを考察しておきたい。

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6月5日プレサーベイ、原宿とんちゃん通りで遭遇したカップルのように、大人の女性は柄がプリントされたシャツワンピース、しかもけっこうロング丈が多く、男性は真っ白なTシャツルックが目立った(左)/キャットストリートで遭遇した女性は鮮やかなイエローのパンツとラベンダーのビグシャツがポップな印象(中)/翌日、6月6日には女性も多かった、白トップス&白ボトムスの全身真っ白ルックの男性が目を引いた。

久しぶりの街は季節が変わって初夏の日差しに。
迷った時のチョイスは、超・定番アイテムとポップな色使い?


本稿を書いているのは6月30日。あっという間に6月も終わり。2020年も半分が過ぎてしまうことになる。

COVID-19(新型コロナウィルス)の影響で、今年40年めとなる「定点観測」は、3月はミニマムな規模・スタイルで、4月は残念ながら中止、そして5月はオンラインでの実施となったが、5月25日に緊急事態宣言解除になったということから、3カ月ぶりにリアルな路上で、フィジカルディスタンスや除菌などに充分気をつけながら実施した。

今週末の7月4日(土)は天候次第だが、もう次の「474回定点観測」を実施する予定なので、その前に6月のストリートのようすを考察しておきたい。

ファッションは時代・社会、若者文化を映す鏡。

ということで、街を行き交う人たちの装いを観察すると、女性のマキシ丈ワンピースや男女問わずベージュ系のシャツ、カラフルなヘア、黒いサンダルなどいろんなアイテムやスタイルの候補があがり、最終的に渋谷の路上でスタッフ全員で討議した結果、6月はメイン=カウントアイテムは「白いTシャツ」。そして、「シャツ(男子)」「カラフルなパンツ」の3つのテーマとした。


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外気から身を守るかのように、フードをすっぽり被ったまま歩く若者も少なくなかった(左・渋谷)/「ちょっと早めの春休み!」という気分が蔓延していたラフォーレ原宿付近。カラフルなヘアにもっちゃりしたアウターのティーンズが目立った(右・原宿)。

カウントアイテム:男性/女性白Tシャツ
それぞれのストーリーやこだわりが際立つ超・定番アイテム。


まずは、
「男性/女性白Tシャツ」。実はほぼ同じくらい黒いTシャツも見られたが、年齢が上の人ほど黒、若い人ほど白を着用していたようだった。

いずれにしても、長かった自粛解除で「久しぶりに街に出たら季節が大きく変わっていた!」ということもあり、多くの人が「何を着たらいいのか迷った結果の装い」=モノトーンということだろうか。ややサイズ大きめのシンプルな白Tシャツにはユルパンツ、女子にはワッシャー系のロングスカートという、ややリラックス感ある装いが目立った。
 
共通するのは、新品っぽい真っ白であること。また、襟元が詰まっていて生地もしっかりした上質な感じであること。また、ピタピタではなく、やや緩めに着用していること。袖がやや長めで、なかには「ポケT」と呼ばれる、胸に小さなポケットが付いているものもあり、まさに日常着の定番の白Tシャツ。

Supreme(シュプリーム)とHanes(ヘインズ)のコラボの白Tをデニムと合わせていた26歳の男性http://www.web-across.com/observe/p7l756000003qv8g.html)や、「久しぶりの原宿デートなので新品の白Tをおろした!」http://www.web-across.com/observe/p7l756000003quu4.html)という19歳の女性。

「行きつけの高円寺のバーをやっている知り合いがいつも着ているもので、クラウドファンディングでTシャツ+ドリンクで3,500円で購入した」という28歳の女性(http://www.web-across.com/observe/p7l756000003qu8m.html)。

また、「白Tは同じのを毎年買っています」と話してくれたのは23歳の男性(http://www.web-across.com/observe/p7l756000003quyw.html)。綿100%で肌触りや首元の締まりもきつくない感じが気に入っているそうで、「ちょっとルーズに着たいのでLサイズ」をチョイス。「大き過ぎずゆとりのあるサイズ感が好きで3枚くらい持っています。ボディはUnited Athle(ユナイテッドアスレ)と他にはGILDAN(ギルダン)とかが好き」と、ベーシックな白Tシャツだからこそ、こだわりが深い人も少なくない。

好みのブランドだったり、その背景にあるストーリーだったり、着用したモチベーションなど、シンプルな「白いTシャツ」だったからこそ、1人ひとりの違い、まさに、それぞれのベーシック=“ニューノーマル”が際立った点が興味深い。
 
実は、2000年に新しい(ファッション)のアイテムやトレンドは全て出尽くして、それぞれが上質になり、組み合わせが自由にリミックスになる、ということを「上質なフツー」という呼称で考察を発表したが、さらに20年を経て、今の時代・社会が内包されているともいえるだろう。
 
*各地点の「男性/女性白Tシャツ」はこちらからどうぞ。
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新型コロナ禍で公共交通機関を避ける意味からか、自転車やキックボードが再び増えている(左)/Tシャツやシャツはベージュ系も少なくなかった。1週間前に買ったばかりというGUのシャツのセットアップはそれぞれ1,990円(税別)/アロハシャツも少なくなかったが、モードっぽい柄シャツも増えてきた。

ズームアップアイテム①:シャツ(男子)
シャツのセットアップやおしゃれなパジャマルックは、
リモートワークで浸透した“拡張する日常着“。


「フレンドリーでお茶目なシャツ男子」というタイトルで考察したのはちょうど1年前の2019年6月のこと( http://www.web-across.com/todays/p7l756000001xjy1.html?ra=1 )。つい先日、「美術館女子」という

季節柄、シンプルなシャツをアウター代わりに羽織ったり、きちんとボタンを留めてラフな短パンやカーゴパンツの上に出したりしていたが、1年前はまだ少数だったシャツのセットアップスタイルなどが今春増加中なので注目することにした。

自粛時の実施した「オンライン定点観測:ファッション業界人編」でも見られたような、ワークっぽいシャツとパンツのセットアップ=「(おしゃれな)パジャマルック」も登場。今秋冬に増えそうな「ジャケットスタイル未満のシャツスタイル」として増えそう。と思いきや、実査当日、渋谷地点ではGUのセットアップを1週間前に購入した」という22歳の公務員に遭遇(http://www.web-across.com/observe/p7l756000003qude.html)。購入価格を尋ねると、それぞれ1,990円(税別)!だというから、本当に近年の同ブランドのMD力には脱帽だ。

ちなみに、「オンライン定点観測:ファッション業界人編」では、シャツのセットアップを着用する感覚は、パジャマっぽい〜部屋着っぽさなのだとか。作業着・ワークっぽい素材のセットアップ、ジャンプスーツも含み、自粛によるリモートワークの浸透で、“仕事が生活にぐっと近づいた“ように、日々の装いも、部屋着で外出する〜“日常着の拡張感“に注目したい。
  
*各地点の「シャツ(男子)スタイル」はこちらからどうぞ。
 
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東京オリンピックが延期されてもスポーティなトレンドはじわじわ浸透中。裾を絞ったジョガーパンツもちらほら見かける(左)/男性に多いのはテーパードパンツ。ベージュ系やパープル系などが多い(中)/案外女性に多かったくすんだピンクはコンサバ系だけでなく、古着ミックスのグループにも人気だった(右)。

ズームアップ・アイテム②:カラーパンツ
インパクトとニュアンス・チェンジは色で。


2つ目のズームアップアイテムは、プレサーベイをしなかったら気づかなかったかもしれない「カラーパンツ」とした。

目立ったのは、赤〜テラコッタ、イエロー、ブルー、グリーン、ピンク、ラベンダーなど実にいろいろ。量的に目立ったのは、コンサバ系の女性のボタニカル系のベージュやグリーンといったパステル調の淡い色のバギーパンツ。テロテロした素材のものや、しわ加工(クリンクル加工)のものなど、リラックス感のあるデザインが特徴だ。

「インパクトのある色のパンツが履きたかった」と話してくれたのは、マウジーの赤いパンツをゾゾタウンでセール(2019年)で買っていた19歳の専門学校生(http://www.web-across.com/observe/p7l756000003qvke.html)。

営業が自粛になる前の3月に渋谷パルコのイッセイミヤケ・オムプリュスで購入したパープルのパンツを履いていた23歳の男性は、「パステル、ニュアンスカラーのパンツは去年くらいから気になって購入していた」と話す(http://www.web-across.com/observe/p7l756000003quyw.html)。

インターネットでややレンガっぽい赤いパンツを購入していた大学生は、「“かわいいではない服”が欲しくて赤いパンツを買いました」と話す(http://www.web-across.com/observe/p7l756000003qumy.html)。

ベーシックな白Tシャツが流行する一方、カラフルなパンツのトップスとして選んでいた人も。インパクトやニュアンス、ちょっとした気分転換になど、色・色彩と人びとの心理の関係性は奥が深い。
 
*各地点のカラーパンツはこちらからどうぞ。

[文責:高野公三子(本誌編集長)]

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グランドオープン直前の「ウィズ原宿」(6月5日撮影)。東京都内では、今春オープン予定だった新しい施設が特にレセプションなどなく、静かにオープンしている。6月30日現在IKEAは週末は入場制限中だそう。


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