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Secori Gallery(セコリギャラリー)
レポート
2013.05.16
この記事のカテゴリー |  ファッション | 

Secori Gallery(セコリギャラリー)

ロンドン発、日本のファッションともの作りをつなぐ
ノマド・キュレーション・プロジェクト

ロンドンと東京を行き来しながら、日本のファッションともの作りを発信するSecori Gallery(セコリギャラリー)。「ノマドギャラリー」というコンセプトのもと、毎回異なる会場で、様々な日本の若手ファッションデザイナーとコラボレーションをしながら展示会を行うユニークなファッション・キュレーション・プロジェクトである。


主催者の宮浦晋哉さん(26歳)に、これまでの活動や日本のものづくりが抱えている課題などについて伺った。
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2011年9月、ロンドンファッションウィーク期間中に東ロンドンのTony’s galleryで2回目の展示会を開催。
「ジャパニーズ・エシカル」をテーマに、コンセプチュアルでメッセージ性の強い日本人デザイナーの作品を集め、
イギリスのメディアから高く評価された。
第1回目の展示会はロンドンのOld Streetに位置するギャラリーArbeit gallery(アルベイトギャラリー)で開催した。
オノヒロキ氏が手掛けるqwerty(クウォーティー)。ファストファッションの商品を分解し、ニードルパンチでたたき合わせた生地から各アイテムを製作。環境問題だけでなくファストファションの爆発的な広まりに対するアンチテーゼが感じられる作品。

■Secori Gallery(セコリギャラリー)

宮浦さんは、杉野服飾大学エスモードジャポンcoconogacco(ここのがっこう)で学んだ後、2011年に渡英しロンドン芸術大学に入学。在学中の2011年9月に同大のコンペ用に書いた「日本のキュレーション」という論文をもとに、日本のデザイナーズブランドをヨーロッパに発信するSecori Galleryプロジェクトを立ち上げた。

「杉野服飾大学在学中からバイトでお金を溜めて、アントワープやウィーン、ロンドンの学校見学に行き、現地にいる日本人の先輩方にお話を聞いてまわっていました。そこで、ヨーロッパの学生は、学生時代から世界的な舞台で作品を披露する機会に恵まれている一方、日本の若手デザイナーはそれが不可能に近いことに気付きました。そういった中で、ヨーロッパのプレス会社やメディア、ショップと連継して実験的な試みができないかと思い、ショールームを借りて展示会のキュレーションを始めました。なにより日本の若手デザイナーにとってお金をかけず、ヨーロッパで展示をして様々なフィードバックを得ることができたら非常にプラスになると思ったんです」(宮浦さん)

1回目の展示は、東ロンドンのarbeit gallery(アルベイトギャラリー)を会場に、YUYA MIURA(ユウヤミウラ)、Keita Ebihara(ケイタエビハラ)、qwerty(クウォーティー)など、日本の若手デザイナーズブランドの作品を展示した。2回目は、ロンドンの東部にあるTony’s Galleryでロンドンファッションウィーク期間中の2011年9~10月に開催。TAKASHI NISHIYAMA(タカシニシヤマ)、nusumigui(ヌスミグイ)KoH T(コウティー)の3ブランドを加えた5ブランドの展示を行った。

Secori Galleryのテーマは一貫して、「ジャパニーズエシカル」と「日本のものづくり」。いずれも環境や社会に配慮し、ハンドクラフトを用いたもの作りをしていたり、ファストに対して丁寧にスローに服を作っていたり、コンセプチュアルでメッセージ性の強いデザイナーを集めた。評価は上々で、ブランドだけでなく、テキスタイルや技術面での「日本のものづくり」に関しても高く評価されたという。
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2013年1月に上梓された『Secori Book vol.1』。宮浦さんが日本各地の繊維工場・産地を回って取材を敢行。
世界トップレベルと言われる日本のテキスタイル産業をファッションデザイナーが活用できていない問題や、その要因
でもある生地産地とデザイナーの間の理解不足を埋める懸け橋となるべく、この本を制作した。
すべてバイリンガル。

 

Secori bookでは宮浦さんが実際に産地に出向いて取材を行った。
写真はニットコンサルタントの田沼さんとの対談。
1300年もの歴史を持つ群馬県桐生市の絹織物。世界的なメゾンでも生地が使われており「ぐんまシルク」としてブランド化もすすめられている。
写真は、かつて養蚕が行われたノコギリ屋根工場。
広島県唯一の帆布工場である、尾道帆布工場の力織機。ピークだった昭和15~19年頃に比べると、現在の生産量はわずかその1%だという。
福岡県久留米市の本藍染の絣工場。藍染め職人の田中さん(30歳)は若き後継者である。

■Secori Book(セコリブック)

過去2回の展示会では、全ルックを集めたシューティングを行い、リリースを作成していたが、もっと幅広い人たちに見てもらいたいという思いから、デザイナーの紹介と日本各地の染織・織物工場の現状を伝えることを目的とする書籍『Secori Book vol.1』を、2013年1月に上梓した。

日本のテキスタイルは世界でトップレベルと言われてきましたが、多くのファッションデザイナーがオリジナリティに富んだ日本のテキスタイルを充分に使用できていない現状にあります。産地の方々はデザイナーのことを深く理解する機会が少なく、デザイナーも産地に足を運ぶことが少ないという、距離の問題があると考えています。そこで書籍を作って、産地のご紹介/取材と、デザイナーのご紹介/取材をし、双方の理解を深めるサポートをしようと考えました。ただ、僕らも、何かを訴えたいとか答えを出すというよりは、行ってみて感じた事をそのままを伝えたいという思いが強かったんです」(宮浦さん)。

はじめに、どの産地を訪問するのかを老舗テキスタイルメーカー「みやしん」の宮本英治社長(現 文化ファッションテキスタイル研究所 所長)に相談をして各地方の織物組合などに連絡をし、結果的に6か所の産地をまわって取材をしたという。

宮浦さんによると、一般的に国内の産地は衰退していると言われているが、たとえば桐生には処理しきれないほどの発注が殺到していたり、場所によって状況はまったく異なるという。同じ産地でも、ある工場とその隣の工場では繁忙期がずれていたり、既存のコンバーターでは把握しきれない細かい部分がたくさんあるそうだ。コットンの産地である浜松と播州を比べるといった産地間の比較が出来なかったことなど、課題は残っているそうだが、『Secori Book』は産地の現状をそのまま伝えるという彼らの活動の目的が一読して分かるものとなっている。

ほぼ手売りで販売を始め、その後は美術館や専門学校・大学の図書館などにも販路を拡大。現在は 全国9店舗の書店とショップで販売しており、6月からは東京と福岡で一店舗ずつ取扱店が増える予定だという。
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渋谷アップリンクで行われたsecori gallery主催のシンポジウム「ブランドと工場の共生」。
coromoのスナオシタカヒサさん、みやしんの宮本英治さん、奥田染工の奥田博伸さん、ASEEDONCLOUDデザイナーの
玉井健太郎さんが登壇し、昔と現代のデザイナーの相違点やデザイナーと工場が結びつく為に必要なこと、ブランドと
産地、コンバーター、或いは組合の今後の理想的な在り方などについて議論が行われた。
Secori Galleryシンポジウムでは立ち見が出るほどの盛況ぶりで、参加者の関心の高さが伺えた。
写真:Secori gallery
渋谷パルコパート1「ぴゃるこ」で行われた「はいてくを、ろーてくで、ファッションへ〜」。 新鋭デザイナーと伝統的な産地の技術のコラボレーション作品を展示した。

■イベント、トークショー

  不定期でイベントやトークショーも開催している。1月25日、渋谷パルコパート1のセレクトショップ「ぴゃるこ」を会場に「せこりぎゃらりーのお披露目会 〜はいてくを、ろーてくで、ファッションへ〜」が開催された。同展は、日本のものづくりと若手ブランドを海外に紹介することを目的に、ロンドンなどで展示会を開催してきたSecori Galleryが、『Secori Book(セコリブック)』を刊行するにあたり、出版披露会として企画したものである。当日はファッション関係者や学生、プレスなどが大勢詰め掛け大盛況となった。

3月からは生地工場や染色工場など産地の方とデザイナーを招いたトークイベント「Secori Galleryシンポジウム」を行っている。これまで2度開催された同イベントでは「ブランドと工場の共生」(3月5日@渋谷UPLINK)と「日本の服づくりを考える」(5月6日@coromoza)がテーマに挙げられ、服作りの現状や日本で作ることの利点がデザイナーと産地それぞれの側から語られた。来場者には、デザイナーや生地作りに関わる人達が多く、登壇者との質疑応答では、司会者が止めに入るほど白熱し、現在の服づくりの課題や可能性がどこにあるのかを確認・議論する場となっていた。

■今後の展開

現在は『Secori Book vol.2』の刊行準備、秋の展示会準備と並行してSecori Galleryのスタジオ開設を準備している。
また、同じ志をもつ仲間と共同でプロジェクト「東東京研究所」を立ち上げた。


「ファストファッションが一般化した現在、服はいくらでも安く作ることができると思っている人も多いと思います。でも実際には、どこかを無理しているから、この価格で出来ているわけです。服を作るのにはどのくらいのコストがかかるのか、珈琲でも飲みながら話すことが出来たら、ジーンズが980円で売られているのはおかしいと分かってもらえると思います」(宮浦さん)。

「東東京研究所」は啓蒙の根拠地となるわけだが、注目すべきはこのプロジェクト兼ショップは、ショップでもあり研究室でもある、と彼らが位置づけているという点だ。ショップではSecori Galleryがこれまで取り上げてきたブランドのアイテムを取り扱うが、その他に、100年前のフランスのリネン生地をつかったシュンスケハタケヤマとのコラボアイテムもつくられた。この生地はロンドン芸術大学時の友人で、ヨーロッパで集めた古着を都内などのショップに卸している石井諒さんが仕入れてきたものだ。

Secori Galleryの掲げる「エシカル」とは「当たり前のことを当たり前に行う」ことを意味するもので、衰退した産地と技術を求めるデザイナーを結び付けることや適正価格の啓蒙のみならず、残反(=残った布)の利用などの実験的な試みも「エシカル」な活動に含まれる。問題を提起し、解決の糸口を探る実践自体を消費者に開いていこうという姿勢が、新たな拠点を研究室として位置づけるゆえんである。今後は、織り機を設置したり、杉野服飾大学と共同のプロジェクトも計画しており、研究室機能の拡充も予定されている。
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「東東京研究所」を運営する3人。左から、ヴィンテージ古着バイヤーの石井諒さん、『Secori Book』のデザインを
担当した椿武さん、secori galleryを主宰する宮浦晋哉さん。

ロンドンのギャラリーでの展示会に始まり、書籍の刊行、パルコでの展示、トークイベントの企画や大学とのコラボなど、一見行き当たりばったりのようにも見えるSecori Galleryの活動だが、過剰に安価な洋服やものづくりの衰退という日本の現状への問題意識は一貫している。様々な方法を併用しながら取り組まざるをえない課題であると彼らが考えていることも伺える。
宮浦さん自身が編集者や記者、キュレーターやコンバーターを兼ね、ネットワークを拡大しながら、国を超えて産地や工場と作り手をつないでいく姿は、インターネットやSNS環境と重なるものがある。また、産地・工場が自ら情報収集・発信しようというオープンな姿勢にかわってきたという背景も少なからず影響しているように思われる。

今後は、デザイナーと産地を結び付けるだけではなく、結びつきの結果として生まれたものづくりをサポートするところまで関わっていきたいという。「服づくりの黒子」として日本のもの作りを支える彼らの活動のこれからの展開が注目される。



取材・文 工藤雅人


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