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ののわプロジェクト
レポート
2013.08.15
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ののわプロジェクト

“中央線の真ん中エリア”で進行中
東京郊外の新しいコミュニティづくり

「はらロール」「一真菴」「多奈加亭 FARMHOUSE」など中央線沿線の人気ショップが出店。各店に1台づつデジタルサイネージを設置している
武蔵野線下りホームに面した場所にはパティスリー「フロ プレステージュ」を配置
新たに増築棟を設け、噴水の広場にカフェや書店を配置。移動の合間や待ち合わせなどにも便利なスペース
西国分寺駅・中央線上下線のホームに並ぶカフェや飲食店、男性用ヘアカットなどは全店が“ウエスタン・ジャンクション”というイメージで統一されている
2013年5月29日、武蔵境駅の高架下にオープンした「nonowa武蔵境」。三鷹~立川駅間に生まれた約9km・全約7万平方メートルの高架下については今後さまざまな活用法が期待されるところだ
武蔵境で開催された「第2回 ののわ 街フィールドワーク/街の間取り」では街全体を「自分の家」に見立てて間取りを考えるというフィールドワークが行われた。ミリメーター(宮口明子さん&笠置秀紀さん)の2人が講師を務めた
JR中央線の三鷹~立川駅間で進行中の連続立体交差化事業。新たに約9km・全約7万平方メートルの高架下が出現し、駅と沿線の風景が大きく変わりつつあるこの「JR中央線のミドルゾーン」エリアで行われている、駅と地域住民をつなぐ新しいコミュニティづくりの試みが「ののわプロジェクト」である。母体となるのは株式会社JR中央ラインモール。2012年9月にショッピングセンター「nonowa西国分寺」を西国分寺駅の駅構内に開業、2013年5月29日には「nonowa武蔵境」を中央線高架下にオープンした。

「nonowa西国分寺駅」は、ホーム上や駅構内に展開するコンセプト型の駅ナカ商業施設で、約730平方メートルの店舗面積に20のテナントが出店している。“ウエスタン・ジャンクション”というコンセプトのもと、ショップのファサードデザインや看板、照明、POPなどをウエスタンイメージで統一している。駅構内の商業施設は安全性確保の必要から得てして機能的、画一的なデザインにならざるを得ないものだが、導線から離れたところに増築棟を設け、噴水の広場にカフェや書店を配置、居心地のいい空間を作り出している。

はらロール」「一真菴」「多奈加亭 FARMHOUSE」など中央線沿線の人気ショップや、地元の朝採れ野菜を販売する「にしこくマルシェ しゅんかしゅんか」など、地域の名産品や地元ブランドを強く打ち出しているのも特徴だ。本好きに評価の高い地元書店「オリオン書房」も出店している。

一方、武蔵境駅の「nonowa武蔵境」では、駅西側に「nonowa口」を新設し、そこにデニッシュバーをオープン。そして道路を挟んだ高架下に高品質スーパーマーケット「クイーンズ伊勢丹」を置くことで、駅の南北を結ぶ人の流れを生み出そうとしている。

「ののわ」は単なる商業施設のブランドネームではない。「ののわ」とは「むさしののわ」であり、「わ」には環/輪/和といった意味が重層的に込められている。駅とその周辺施設の運営に留まらず、地域住民に向けたエリアマガジンの発行、地域連携イベントを同時に展開し、新しいコミュニティづくりを目指している

情報発信のメディアとなるエリアマガジン「ののわ」は2012年11月に創刊。JR中央線・三鷹~立川間の8駅構内に専用スタンドを設置し、駅のカウンターなどでも無料配布されている。コンセプトは「東京の真ん中で、これからのライフスタイルを考える」。誌面と連動するコミュニティウェブサイトを開設し、この2つのメディアで情報発信を行いながら、沿線の地域住民が参加するイベント/ワークショップを展開している。

フリーペーパー「ののわ」の編集やワークショップの企画・運営などには「東京にしがわ大学」「東京ウェッサイ」など、エリアで展開するさまざまなプロジェクトに関わるメンバーが、チームで関わっている。武蔵野エリア在住のクリエイターやショップ経営者などが講師を務め、講座やワークショップ、親睦ミーティングなど地域の人たちが参加する形で多彩な企画が行われている。このエリアに住むクリエイターたちが地域の人や店をつなぐ触媒となり、大きな役割を演じているのが同プロジェクトの魅力となっている。
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シルクスクリーン作家・やまさき薫さん(小金井市)を講師に迎えたワークショップ「暮らしと仕事の拠点づくり」の模様。写真の「dogdeco HOME」は国分寺崖線周辺で商いをする人たちが毎月第1日曜日に開催する「はけのおいしい朝市」の会場にもなるショップ
武蔵野エリアには野菜や果物の生産農家も多い。料理家としても活動するフルタヨウコさんが江戸東京野菜の調理法と食べ方を紹介する「第1回 ののわテーブル 地を味わう」(国立市)の模様
地元の朝採れ野菜を販売する「にしこくマルシェ しゅんかしゅんか」。食文化の豊かさは地域ブランドを形成するうえで重要なファクターとなる
中央線の立体交差化で、高架に並行して道路の整備も進んでいる。線路の南北の行き来も容易になるため、人の流れも今後大きく変わっていくはずだ
イベントの運営や地域の情報を集めて記事を執筆する“地域ライター”などのネットワークづくりを継続的に行っている。「ののわネットワークサポーター会議」を中央線沿線のコミュニティセンターで毎月開催(写真は立川市)
株式会社JR中央ラインモール代表取締役の鈴木幹雄さん。就任を機に国立に移住してきたという
株式会社JR中央ラインモール代表取締役の鈴木幹雄さんも就任後、国立に引っ越してきた移住組。個人的な関心から「東京にしがわ大学」主催のイベントに興味を持って参加したことをきっかけに、地域とのネットワークを作り出してきた。JR駅の商業開発にパーソナルなネットワークが有機的につながっているということが、ののわプロジェクトの特色を物語っていると言えるだろう。

「中央線沿線は“住みたい街”として上位に挙げられて世代交代も上手く進みつつあるエリアですが、これからも長いスパンで誰もが住みたいと思えるような街づくりをしていきたい。地域で活動しているクリエイターの皆さんに情報発信を手伝ってもらいたいと思い、スキームづくりから時間をかけて新しいものを作りました。若い人がこのエリアで新しいものを試してみたい、と思ってもらえるような仕組みを作っていきたいと思っています。西国分寺駅の施設デザインを“ウエスタン”にしたのも、東京の西側ということに加えてフロンティア・スピリットという意味を込めたんです」(鈴木さん)

ののわエリアは明治時代に別荘地として愛された場所である。高度成長期以降には住宅地として開発が進んだが、ここには現在もなお武蔵野の自然が残されており、果物や野菜の生産農家も健在だ。こうした環境の魅力に惹かれて20~30代の若い世代が移住してきている。

「ののわプロジェクト」にはデザイナーやイラストレーター、ライターなどのクリエイターも多く関わっているが、彼らの中にはそんな新しい住民も多い。都心部のように古いものがスクラップ&ビルドされ尽くされず、賃料の安いリノベーション可能な物件も多い。こうしたリソースがこのエリアにはまだまだ沢山眠っている。若いクリエイターにとっては、いい意味で表現やビジネスの「隙間」が残されている場所なのだ

位置的には“東京の真ん中”であり、都心へのアクセスも簡単でありながら、ゆとりが適度にあって自然や食にも恵まれている「ののわエリア」。「ののわプロジェクト」は、鉄道会社を中心としたインフラの上に、地域住民のネットワークが有機的につながり、そこに地元クリエイターを媒介として独自のコミュニティ文化の生態系を作り出そうという、いわば「文化の地産地消活動」である。駅を中心とした新しいタイプのコミュニティ・ブランディングとして注目しておきたい。



【取材・文: 本橋康治(コントリビューティングエディター/フリーライター)+ACROSS編集部 】

nonowa西国分寺

東京都国分寺市西恋ヶ窪2-1-18
(JR中央線・武蔵野線西国分寺駅構内)
http://www.nonowa.co.jp/


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