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ダイトカイ
レポート
2013.08.20
この記事のカテゴリー |  飲食・フーディング | 

ダイトカイ

バー+出版。コンテンツ重視型のオルタナティブ・スペース

左から店長の原田愛さん、スタッフの青木李奈さん、オーナーの小松原桂さん。
取材時はギャラリースペースで新進気鋭のブランドyyyy/mm/dd(イヤーマンスデー)のお披露目会を開催。
出版部門第一弾となる『MWUAI』(ムーアイ)は美術家のKYOTAROさんによる初の長編漫画。¥1,365(税込)。
以前はクリーニング店だったという物件。明治通りをはさんで反対側には、スニーカーブランドMADFOOT!が運営する頭バーなど新しいカルチャースポットが生まれているエリアでもある。

 

東京・渋谷。明治通りから氷川神社の参道を入ったところに、バー「ダイトカイ」がある。オープンは2012年12月17日。


「これまでの出会いのなかで、『可能性はあるのに発表の場がない』という人たちがたくさんいて。そういう人たちが集まって、やりたいことをやる場を作りたいと思ったんです」と語るのは、オーナーの小松原 桂さん。

小松原さんは、美容師、カフェ勤務などを経て2009年に渡英し、2年間の留学生活を送る。ロンドンにたくさんあるような、若手クリエイターが表現するためのフリースペースを東京で再現したいと思ったことがオープンのきっかけだったという。

一見、単なるバーのように見える同店だが、特筆すべきは出版業務を行っているという点である。出版部門を担当するのは、原田 愛さん。原田さんは2007年に出版社リトルモアに入社し、季刊誌『真夜中』編集部で4年間勤務した。

リトルモア退社後、原田さんに、小松原さんが「一緒に何かをやろう」と声をかけたが、当初、原田さんは小松原さんの誘いに対し、すぐには首を縦に振らなかったという。

「ちょうど仕事が楽しくなってきた頃だったので、会社を辞めても編集の仕事は続けたくて。でも、編集者として単行本を一人で手掛けたことがなかったので、いきなり独立して何かをやるというよりも、まずは会社に入って、先輩たちから本づくりの基礎を学びたかったんです」(原田さん)

そう考えていた原田さんだったが、「いずれ本の作り方を習得するのなら、会社に入っても1人でやっても、同じなんじゃないか」という小松原さんの一言が後押しとなり、今回の独立を決意したという。

業態は明確に定めていなかったが、バースペースだけでなく、ある程度広さがあってフリースペースを設けられる物件であることが条件だったという。以前はクリーニング店で、店内奥のスペースが広く、天井が高い現在の物件に出会い即決した。また、渋谷駅から歩ける立地にもこだわったという。

「奥まった場所にあるマンションの一室のような“わざわざ行く”場所でなく、もっとオープンで誰でも気軽に入れる、路面店であることも譲れませんでした」(原田さん)

 

 
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「知る人ぞ知る“隠れ家”ではなく、オープンで誰でも気軽に入れる場所を作りたかった」という小松原さんの
言葉のとおり、クリエイティブ系に従事する人たちやご近所のお年寄り、ビジネスマンまで幅広い層で賑わう。

KYOTAROさんの原画や作品のほか、小松原さん、原田さんが影響を受けた本が並ぶ。
同店で販売する『町口覚 一〇〇〇』。デザイナーの町口覚氏が選びぬいた戦後の写真集38冊の複写を1024頁に刷り込んだ「写真集の写真集」。3,360円(税込)。
さまざまな人種、あらゆるカルチャーがミックスされ、その場が形成される様子、店名の「ダイトカイ」そのもの!
出版記念イベントの際に作成した巨大版『MWUAI』。
店のオープンと同時に、出版部門の第一弾として美術家KYOTAROさんによる漫画『MWUAI(ムーアイ)』を出版した。編集はもちろん、取次会社(本の卸業者)を通さず書店との直取引で販売しており、営業活動もすべて原田さんが行ったという。現在、取扱書店は代官山T-SITE 蔦屋書店、TSUTAYA TOKYO ROPPONGI、タワーレコード渋谷店 タワーブックス、心斎橋スタンダードブックストアなど、卸先を広げている。

「今後は、本を作り続けていく事が目標ですが、まずは『ムーアイ』の流通を軌道に乗せることが目下の課題。1冊1冊を大事に、しっかり作っていきたいです」(原田さん)
 
当初、明確なターゲットは定めていなかったそうだが、その柔軟性が功を奏し、実際の客層はかなり幅広くユニークだという。というのも、同店のある渋谷区東は、昼夜を問わずビジネスマンが行き交うオフィス街だが、一歩路地に入れば昔ながらの住宅街もある。この地を地元とし、昔から住む住民が実は多いことに、お店をはじめてから気付いたという。

「場所柄、クリエイティブ系の仕事をしている方も多く、そういう方が夜遅く、仕事帰りに立ち寄られるケースが多いです。たとえば、出版部門でお世話になっているブックデザイナーさんがあついトークを交わしている横で、ご近所のおじさんが一人で飲んでいたり、普段、出会わないような人でも、少し話してみると意外に共通の知人がいたりしてつながっていて。普通にしていたら絶対にリンクしなかった人同士が、この同じ空間でつながっていくのが面白いですね」(原田さん)

店内奥のスペースでは、これまでアパレルの展示会やフリーマーケットなどを開催。今後も、明確な用途を決めず、目指す方向性が同じクリエイターと有機的にイベントを開催していく予定だそうだ。
 
「何屋なのか? と聞かれると、一言で形容できないんです。『出版バー』と名付けたお客さんもいました。今、こういう専門性を持たない形態のお店が増えているのは、“競争”の時代が終わったからだと感じています。今後はもっと横のつながりが大事になるし、同じような柔軟な店どうしが共存共栄していく時代になると思います」(小松原さん)

一つの業種に限定せず、出版、バー、フリースペースを同時進行する間口の広さゆえ、「いろいろな人が集まる場」として成立している同店。さまざまな人種、あらゆるカルチャーがミックスされ、その場が形成される様子は、まさに店名の「ダイトカイ」が表すところである。「店を作るのと、本やイベントを作るのは全然違うけれど、似ているなと思いました」という原田さんの言葉どおり、つながるはずのなかった雑多な点と点がつながり線になり、ある限られたスペースのなかで一つの文化を作り出す様は、雑誌の編集にも似ている。スキーム重視のものづくりが溢れている今だからこそ、あらゆるものを“編集”する視点や感覚、「コンテンツ力」が求められる時期に来ているといえそうだ。

取材・文 皆川 夕美(フリーライター)
ダイトカイ
渋谷区東2-20-16山善ビル1F
TEL:03-6427-5109
営業時間:
月〜金 19:00〜3:00
土日 17:00〜3:00


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